学生恋愛♡短編集

五菜みやみ

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掛川くんは、今日もいる。

やって来た日 ②

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どうやら今の態勢は、非常にまずかったらしく。


私の足の間にあった彼の膝が、じりじりとスカートを捲り上げるかのように上に来る。



ほぇ……?


え、待って──


なんか、怖い…。



「フッ。大丈夫だから、強張らせるな」


「………。」



フルフルと首を横に振ったけど、こんなことで彼が止めるワケもなく──



膝が足の間を擦りあげた。



ビクッ_と身体が跳ねる。



そんな私の反応に彼はクスッと笑った。





それから口を塞いでいた手が離れ、両手を握られた。
 
その手が片方ずつ頭の上に持っていく。

その時になって、やっと私は抵抗しなきゃと思い始めた。



けれど、口から酸素は入って来るのに言葉が出てこなかった。

叫べなかった。


それに、

普通の女の子が男の子相手に力で勝てるはずもなくて…


あっと云う間に、私の両手は頭上でまとめられていた。



「なに、怖いの…?」



そう聞かれて素直に頷く私。


どうやら息が上がっていたらしく、胸も早鐘を打っていた。


流石にこんな状況で強がってなんていられない。





「けど、止めてあげない」



だと思った…



だって彼はまだ、笑みを浮かべたままだから。



きっとこの状況を楽しんでいるんだと思う…



だけど、私はもうムリ。


こんな目に合うのは怖すぎる。



それに、バレたくないことがあった。



誰にも─

ましてやこう云う行為が好きそうな相手には、

尚更知られるワケにはいかないことが私にはある。




今度は何をされるんだろう。


制服、脱がされたりとかしないよね…?



そんな不安が頭の中をいっぱいにしていると、
彼は声一つ上げない私の顔を見ながらお腹に手を当てて来た。


その手が撫でるように上って来る。


そのまま胸まで触られると思った私は、ぎゅっと目を瞑ると、彼の手もピタリと止まった。



「プッ──!」



え……?




「アハハッ!!」



あれ…?


恐る恐る瞼を上げると、彼は丸まった態勢で肩を震わせていた。



「ハハハッ! あーもう無理! 限界…!!」



え、なんで笑ってるの?


どう言うこと?


意味分かんない。



困惑した私をチラリと見ると、パッと手を離して起き上がった彼。


そのまま、一歩後ろに下がってからドサリと座った。



「もう、起きて良いよ」


「………??」



まだ笑みが含まれている彼の声を聞いて、その言葉通り私は起き上がった。




まだ、良く分かってない。


何が起きて、何がもう良かったのか。


さっぱり分かんない。



「おーい、生きてるかー?

揶揄《からか》っただけなんだけど、そんなにポカンとするほどか?」


「揶揄う…」


「そうだよ。

あんた普通に顔可愛いし、怖がってんのに全然声上げねぇんだもん。」


「そう、だったんですか……」


「はい、そうです。

あ、それともアレ? 声が出ないほど怖かった?」


「……はい。」


「あぁ、そうだったんだ…?

ゴメンネ。顔から表情が読み取れたの、手を拘束してからだったから」


「い、いえ。…大丈夫です」





淡々と答える内にやっと理解してきた。


どうやら本当に揶揄い目的だったらしい。

それにしては手の動きが卑猥《ひわい》だったが─



ほっとすると、手を見つめた。

まだ掴まれていた時の感触が肌に残っている。


手首を触っていると彼が首を傾げた。



「そんなに強く掴んでねぇはずだけど?」


「……うん…」



別に痛いから触っているわけじゃない。



「………。」



黙って見つめてくる彼がため息をついた。


「しょうがねぇーな」と呟いた後、直ぐに私の方へ近寄って来る。






触っていた手首を掴まれると、強引に引き寄せられた。


その勢いで彼の胸の中へと倒れ込む。



そんな私を軽々しく持ち上げ、ちゃんと抱き寄せると、彼はゆっくりと背中を撫でてきた。




「責任、取ってやるよ。」


「……ありがとう。」



猫被りと言っていたのに、どうやらちゃんと優しい面があるみたいだ。


大きな手の平が、さっきとは違って安心させてくれる。





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