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婚約者による強制的ななにかについて
婚約者と社交界
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婚約が決まれば、バタバタと色々な事が変わっていった。いままでは出ずとも良かった、あらゆる貴族の茶会やパーティに、エリーゼをエスコートしてゆかなくてはならない。
その度に言われるのは、
「貴方がマルセル子爵?公爵家の?」
「一度お話してみたかったのです。成る程、これほどの美貌なら、噂も信憑性があるわね」
「エリーゼ嬢はあなたと婚約してさらに美しくなられたようだ。マルセル子爵の仕込みがいいのでしょうな」
いやらしく頭の先から爪先までをじろじろと見られるのも、下衆の勘繰りにも耐えられたけれど、
「宰相殿も出世したものだ、一人娘をくれてやる代わりに、これでコーデリア一族はとうとう侯爵位を手に入れるというわけだ…見目良いだけの女子供でも、色香さえつかえれば役にたちますな」
そんなふうに当て擦ってきたのは、爵位がどうこう言うわりに、私のような子供と同じ子爵位の男だ。
言い返したかったけれど、騒ぎになればエリーゼの耳にはいってしまう。代わりに従僕を呼んで、男がむこうを向いている隙に、飲んでいた酒を最も強いものにすり替えてやった。
運よくか悪くか、奴は酒に弱かったらしく30分もしないうちに医師に担ぎ込まれる騒動をおこしたようだった。社交の場で泥酔して騒ぎになるなんて、貴族としてはかなり致命的な失敗になる。
気の毒だね。いやあ、深酒はこわいものだ。
そんなことをつらつらと思い出していると、
「なにかありましたの?」
とエリーゼが尋ねてくるので首をふった。
「いや?何もない」
笑ってしまいそうな表情を引き締めながらエリーゼに答える。
するとエリーゼがきょろきょろと辺りを見回して、此方にいらしてと手を引いた。
「駄目だよエリーゼ、またなにかあると噂になってしまう」
手をひかれながら声をかけるものの、エリーゼが発した言葉に、口を閉ざした。
「ユーリが来ているのです。でも、まだ早すぎるわ」
ユーリというのは例の『訪い人』だ。どうやら何かしらの理由でエリーゼは彼に会いたくないらしい。
そういうことなら、喜んで協力しよう。
「ここから出よう、エリーゼ」
屋敷の従僕にエリーゼが足を痛めたので帰ると言付けて、エリーゼを抱えあげた。小走りに屋敷の車止めまでゆき、馬車へ乗り込む。
適当な時間まで、屋敷へは帰れない。
行くあてもなく馬車を走らせていると、
「勝手に抜け出してきてしまいましたわね、叱られないかしら?」
そう言ってエリーゼは胸元をおさえた。
「そのときは私も、一緒に叱られてあげるよ」
子供のような仕草につい頭を撫でてしまう。
エリーゼはだまって撫でられていたけれど、ふと窓のそとの灯りに目を止めた。
星祭の準備で、王宮殿の前の広場に沢山の明かりがともっている。まだ星祭まで数日あるからか人影はまばらで、ただ冬の広場の石畳だけが灯りに反射してきらきらと輝いている。
私は広場のすみに馬車をとめさせた。
「クローディアスさまはいつもそうおっしゃってくださいますわね。ずっと前から」
馬車のなかは暗く、エリーゼの表情は見えない。
「わたくし、変な子供だったでしょう?父も母も、わたくしが頭がおかしいのだと言って、厳しい家庭教師を大勢連れてきましたの」
自覚があったのか。とは思うものの、口には出さずに相づちをうった。
「鞭や、定規で打たれるのは怖くて。父や母のまえではいつでもだまっておりました。でも、クローディアス様は、わたくしの話を怒らずにきいてくださった」
うん、はじめは驚きすぎてものが言えなかっただけだけど。
「クローディアス様、わたくしは『訪い人』ではありませんが、以前この国のことを詳しく読んだことがあるのです」
エリーゼはそこで私の反応を見るように、こちらをむいた。しかし私の表情はここでは見えないだろう。
「降りようエリーゼ、歩けるかい?」
エリーゼの手をとり、馬車を降りた。星祭の灯りの灯る広場は、しんと静まり返っていた。
その度に言われるのは、
「貴方がマルセル子爵?公爵家の?」
「一度お話してみたかったのです。成る程、これほどの美貌なら、噂も信憑性があるわね」
「エリーゼ嬢はあなたと婚約してさらに美しくなられたようだ。マルセル子爵の仕込みがいいのでしょうな」
いやらしく頭の先から爪先までをじろじろと見られるのも、下衆の勘繰りにも耐えられたけれど、
「宰相殿も出世したものだ、一人娘をくれてやる代わりに、これでコーデリア一族はとうとう侯爵位を手に入れるというわけだ…見目良いだけの女子供でも、色香さえつかえれば役にたちますな」
そんなふうに当て擦ってきたのは、爵位がどうこう言うわりに、私のような子供と同じ子爵位の男だ。
言い返したかったけれど、騒ぎになればエリーゼの耳にはいってしまう。代わりに従僕を呼んで、男がむこうを向いている隙に、飲んでいた酒を最も強いものにすり替えてやった。
運よくか悪くか、奴は酒に弱かったらしく30分もしないうちに医師に担ぎ込まれる騒動をおこしたようだった。社交の場で泥酔して騒ぎになるなんて、貴族としてはかなり致命的な失敗になる。
気の毒だね。いやあ、深酒はこわいものだ。
そんなことをつらつらと思い出していると、
「なにかありましたの?」
とエリーゼが尋ねてくるので首をふった。
「いや?何もない」
笑ってしまいそうな表情を引き締めながらエリーゼに答える。
するとエリーゼがきょろきょろと辺りを見回して、此方にいらしてと手を引いた。
「駄目だよエリーゼ、またなにかあると噂になってしまう」
手をひかれながら声をかけるものの、エリーゼが発した言葉に、口を閉ざした。
「ユーリが来ているのです。でも、まだ早すぎるわ」
ユーリというのは例の『訪い人』だ。どうやら何かしらの理由でエリーゼは彼に会いたくないらしい。
そういうことなら、喜んで協力しよう。
「ここから出よう、エリーゼ」
屋敷の従僕にエリーゼが足を痛めたので帰ると言付けて、エリーゼを抱えあげた。小走りに屋敷の車止めまでゆき、馬車へ乗り込む。
適当な時間まで、屋敷へは帰れない。
行くあてもなく馬車を走らせていると、
「勝手に抜け出してきてしまいましたわね、叱られないかしら?」
そう言ってエリーゼは胸元をおさえた。
「そのときは私も、一緒に叱られてあげるよ」
子供のような仕草につい頭を撫でてしまう。
エリーゼはだまって撫でられていたけれど、ふと窓のそとの灯りに目を止めた。
星祭の準備で、王宮殿の前の広場に沢山の明かりがともっている。まだ星祭まで数日あるからか人影はまばらで、ただ冬の広場の石畳だけが灯りに反射してきらきらと輝いている。
私は広場のすみに馬車をとめさせた。
「クローディアスさまはいつもそうおっしゃってくださいますわね。ずっと前から」
馬車のなかは暗く、エリーゼの表情は見えない。
「わたくし、変な子供だったでしょう?父も母も、わたくしが頭がおかしいのだと言って、厳しい家庭教師を大勢連れてきましたの」
自覚があったのか。とは思うものの、口には出さずに相づちをうった。
「鞭や、定規で打たれるのは怖くて。父や母のまえではいつでもだまっておりました。でも、クローディアス様は、わたくしの話を怒らずにきいてくださった」
うん、はじめは驚きすぎてものが言えなかっただけだけど。
「クローディアス様、わたくしは『訪い人』ではありませんが、以前この国のことを詳しく読んだことがあるのです」
エリーゼはそこで私の反応を見るように、こちらをむいた。しかし私の表情はここでは見えないだろう。
「降りようエリーゼ、歩けるかい?」
エリーゼの手をとり、馬車を降りた。星祭の灯りの灯る広場は、しんと静まり返っていた。
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