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婚約者による強制的ななにかについて
二人の新入生
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休み明け、年の終わりには考査があり、それが終われば新年の祝賀パーティがある。
考査までの5日間、皆目に見えてピリピリしているし、特に生徒会役員は考査ための勉強と、祝賀パーティーの準備とでもうくたくただろう。
「会長、祝賀会までに新しい書記を入れて貰わないと、俺らはもたないぞ」
学校から推薦されたのが例のユーリと知ってから、私はあえて誰にもその話をしていない。というか、ほうっておいたら無くならないかな、と少し思い始めていたのだけれど。
「…分かった、定期考査の結果を見て判断するよ。上位5位までのものに声をかけることにする」
別に、ふるいにかけるわけではないけれど生徒会はとても忙しい。課題をこなすだけでやっとの生徒では、仕事のせいで留年なんてことになりかねない。
まあ、これでユーリがふるい落とされるといいと少し期待した部分もあるのだけれど。
定期考査ではかられる学力はおもに、幾何・数学、国学、自然科学、社会経済学、そして外国語だ。
魔法については一般授業の実技の結果が重んじられているので、いかに魔力量の大きな者がいたとしても、学力考査では結果を左右しない。
「緊張しますわ」
考査の前に私たちは図書館で一緒に勉強をしていた。
「普通の入学より転入には難しい考査があると聞くよ、エリーゼなら大丈夫だと私は、おもうけど」
私がそう言うと、ロビンがひゅう、と口笛をふいた。私が顔をしかめると、エリーゼが背中を優しく撫でてくれた。
その手のひらのぬくもりに癒された気持ちになり、再び真面目に教科書にむきあおうとしたそのときだ。
「あの、生徒会長…さん、でしょうか?」
涼やかだけれど、どこか緊張したような声がふってきた。
「ユーリ!」
ガタッと椅子を倒して立ち上がったエリーゼに驚きながら、ユーリは、はい、とうなづいた。
「何か用かな、ユーリ・ヤスハラくん」
エリーゼの椅子を戻しながらユーリを見ると、ビクッと肩を震わせて
「あ、はい。先日は声をかけていただいて、ありがとうございました」
ロビンがなんだそれ、と言いながらこちらを睨んだ。まるで私が生徒会に勧誘したような言い方だな、とおもったが、すぐにそういえばあのとき菓子を渡すのに、そんな理由をつけたような…頭が痛くなりそうだ。
「君が有能だと言う話を聞いたからね。そういえば、ここにいる私の婚約者も同じ転入生なんだ。
どちらにしても、次の定期考査を楽しみにしているよ、どちらかが生徒会に入ってくれれば、私たちは助かるからね」
両手を祈るように組んでぽうっ、とユーリをみているエリーゼを危惧しながら、私はなるたけ感情を乗せないよう注意深く話した。こんなことなら、ラウンジの菓子くらい残せばよかったんだと後悔頻りだ。
しかし私の後悔など知らず、ユーリは犬の仔のような笑顔でハイ、と微笑んだ。
「勉強するのは得意なんです!実技はあんまり得意ではないですけど…」
と、苦笑いをうかべ、それからエリーゼに向き合った。
「お互い頑張りましょう!」
と、手を差し出す。まさか、こんな婚約者の目の前で?と私が眉をしかめて見ていると、エリーゼは首をふり、
「ヤスハラさま、貴族の令嬢に触れることができる異性は家族か婚約者だけですの。握手はできませんので、お気持ちだけ」
とにこやかに断った。
ユーリはきょとんとして自分の手を見ていたが、あっ、といいながらその手を背中へ隠し、
「すみませんここの文化がよくわからなくて」
と頭をかく。
「婚約者のそばにいる女性に、婚約者の許可なく話しかけるのも良くないぜ?」
ロビンが脇から忠告し、ユーリは今度は私を見て、すみません、と頭をさげた。
生意気という印象だとエリーゼは言っていたけれど、ユーリ自身はどちらかと言えば温厚な雰囲気で、腰もひくい。小柄で細身、優しげな外見と相まって、確かに女性に好かれそうな人物だった。
対して私は上背もそこそこあり、なるたけ柔らかい表現をするようにしていても侯爵の嫡子、王位継承権といったものがつきまとい、いわば面倒事の種そのもの、といった人間なので、出会うひと出会うひとに遠巻きにされがちだ。
いけない、なんだか鬱々としてきた。
「私となら握手をしても問題ないよ?」
言ってから、嫌味っぽかったかなと迷ったけれど
「ありがとうございます!」
とユーリは私の手を握った。
「頑張りますね!」
強く手を握られて、その近さにぎょっとした。ちらりとエリーゼをみると、意外にもエリーゼは複雑そうに眉をしかめていた。
「そんなはずは…」
とか
「でもまだ…」
とか呟いているのが聞こえているので、なにかトラブルなのだろう。私は立ち去るユーリを見送ったあと、まだその背中をみているエリーゼに心がざわつく。
「エリーゼ、こちらをみて?」
囁きかけてそっとエリーゼの手をとり、その手の甲へ口づけを落とした。
「!!クローディアスさま!」
エリーゼだけではなく、なぜか近くにいたロビンや他の生徒がざわざわと騒ぎ、私は首をかしげた。
とくに他意はなくて、別のことに気をとられているようだったから、こちらに意識をむけて欲しかったのだけれど…無礼だった?かな?
考査までの5日間、皆目に見えてピリピリしているし、特に生徒会役員は考査ための勉強と、祝賀パーティーの準備とでもうくたくただろう。
「会長、祝賀会までに新しい書記を入れて貰わないと、俺らはもたないぞ」
学校から推薦されたのが例のユーリと知ってから、私はあえて誰にもその話をしていない。というか、ほうっておいたら無くならないかな、と少し思い始めていたのだけれど。
「…分かった、定期考査の結果を見て判断するよ。上位5位までのものに声をかけることにする」
別に、ふるいにかけるわけではないけれど生徒会はとても忙しい。課題をこなすだけでやっとの生徒では、仕事のせいで留年なんてことになりかねない。
まあ、これでユーリがふるい落とされるといいと少し期待した部分もあるのだけれど。
定期考査ではかられる学力はおもに、幾何・数学、国学、自然科学、社会経済学、そして外国語だ。
魔法については一般授業の実技の結果が重んじられているので、いかに魔力量の大きな者がいたとしても、学力考査では結果を左右しない。
「緊張しますわ」
考査の前に私たちは図書館で一緒に勉強をしていた。
「普通の入学より転入には難しい考査があると聞くよ、エリーゼなら大丈夫だと私は、おもうけど」
私がそう言うと、ロビンがひゅう、と口笛をふいた。私が顔をしかめると、エリーゼが背中を優しく撫でてくれた。
その手のひらのぬくもりに癒された気持ちになり、再び真面目に教科書にむきあおうとしたそのときだ。
「あの、生徒会長…さん、でしょうか?」
涼やかだけれど、どこか緊張したような声がふってきた。
「ユーリ!」
ガタッと椅子を倒して立ち上がったエリーゼに驚きながら、ユーリは、はい、とうなづいた。
「何か用かな、ユーリ・ヤスハラくん」
エリーゼの椅子を戻しながらユーリを見ると、ビクッと肩を震わせて
「あ、はい。先日は声をかけていただいて、ありがとうございました」
ロビンがなんだそれ、と言いながらこちらを睨んだ。まるで私が生徒会に勧誘したような言い方だな、とおもったが、すぐにそういえばあのとき菓子を渡すのに、そんな理由をつけたような…頭が痛くなりそうだ。
「君が有能だと言う話を聞いたからね。そういえば、ここにいる私の婚約者も同じ転入生なんだ。
どちらにしても、次の定期考査を楽しみにしているよ、どちらかが生徒会に入ってくれれば、私たちは助かるからね」
両手を祈るように組んでぽうっ、とユーリをみているエリーゼを危惧しながら、私はなるたけ感情を乗せないよう注意深く話した。こんなことなら、ラウンジの菓子くらい残せばよかったんだと後悔頻りだ。
しかし私の後悔など知らず、ユーリは犬の仔のような笑顔でハイ、と微笑んだ。
「勉強するのは得意なんです!実技はあんまり得意ではないですけど…」
と、苦笑いをうかべ、それからエリーゼに向き合った。
「お互い頑張りましょう!」
と、手を差し出す。まさか、こんな婚約者の目の前で?と私が眉をしかめて見ていると、エリーゼは首をふり、
「ヤスハラさま、貴族の令嬢に触れることができる異性は家族か婚約者だけですの。握手はできませんので、お気持ちだけ」
とにこやかに断った。
ユーリはきょとんとして自分の手を見ていたが、あっ、といいながらその手を背中へ隠し、
「すみませんここの文化がよくわからなくて」
と頭をかく。
「婚約者のそばにいる女性に、婚約者の許可なく話しかけるのも良くないぜ?」
ロビンが脇から忠告し、ユーリは今度は私を見て、すみません、と頭をさげた。
生意気という印象だとエリーゼは言っていたけれど、ユーリ自身はどちらかと言えば温厚な雰囲気で、腰もひくい。小柄で細身、優しげな外見と相まって、確かに女性に好かれそうな人物だった。
対して私は上背もそこそこあり、なるたけ柔らかい表現をするようにしていても侯爵の嫡子、王位継承権といったものがつきまとい、いわば面倒事の種そのもの、といった人間なので、出会うひと出会うひとに遠巻きにされがちだ。
いけない、なんだか鬱々としてきた。
「私となら握手をしても問題ないよ?」
言ってから、嫌味っぽかったかなと迷ったけれど
「ありがとうございます!」
とユーリは私の手を握った。
「頑張りますね!」
強く手を握られて、その近さにぎょっとした。ちらりとエリーゼをみると、意外にもエリーゼは複雑そうに眉をしかめていた。
「そんなはずは…」
とか
「でもまだ…」
とか呟いているのが聞こえているので、なにかトラブルなのだろう。私は立ち去るユーリを見送ったあと、まだその背中をみているエリーゼに心がざわつく。
「エリーゼ、こちらをみて?」
囁きかけてそっとエリーゼの手をとり、その手の甲へ口づけを落とした。
「!!クローディアスさま!」
エリーゼだけではなく、なぜか近くにいたロビンや他の生徒がざわざわと騒ぎ、私は首をかしげた。
とくに他意はなくて、別のことに気をとられているようだったから、こちらに意識をむけて欲しかったのだけれど…無礼だった?かな?
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