婚約者の様子が(かなり)おかしい。

西藤島 みや

文字の大きさ
21 / 38
やんごとなき依頼者

雪の結晶と、再びの皇太子

しおりを挟む
ホールを出て少し歩くと、中庭へ出た。雪はないものの冷たい風がふき、私はエリーゼに上着をかけてやる。
「…またサービス過剰。誤解がおきるのもうなづけますわね」
責めるような口調だったが、突き返されなかったことに気を良くして、踊ろう、と手を差し出した。

僅かにホールから聴こえる音楽にあわせて、ステップを踏んでいく。エリーゼの頬へ顔を寄せ、彼女を抱き寄せると、
「寒いのでしょう?」
と聞かれた。動いていればそうでもないのだけれど、うん、とうなづけばくすくす笑われた。でも、そのままの姿勢でゆるゆると踊り続けてくれるのをいいことに、抱きしめ続ける。

はらり、とエリーゼの肩に小さな白い羽根のようなものが舞い落ちる。それは雪の結晶で、小さな六つの花弁を持つ、華のかたちをしている。

足が止まった私を不審に思ってか、そっと顔をあげたエリーゼが私の睫におちた雪をそっと払い、微笑んでくれた。
「雪ですわクローディアス様。そんな薄着では風邪をひきます、なかへ……」
エリーゼに言われてしぶしぶ離れようとしたとき、

「あいかわらず睦まじい。ここがどこだか位は弁えては貰えまいか?」
聞きたくなかった声に、油のきれた機械のようにぎこちなく振り返った。
「皇太子殿下…お久し振りでございます」
私たちはそろって深々とお辞儀をする。

ヴィルヘルム皇太子殿下はにっこりと笑いかけているが、じき年があけるという真冬の夜中に、いちゃつく婚約者同士に割り込んでなんの特があるのだこのヒトは。

「婚約したのだったな、おめでとう。これで公爵家はますます強大な力をもつことになるな」
…あるよなあ、主に、王位継承に関する方面で。どうしよう、王の座なんていらないが、『そんなもん要りません』なんて言うと不敬になる。

「ありがとうございますヴィルヘルム皇太子殿下。殿下もご健勝でいらっしゃるようでなによりですわ」
もたもた考えている間にエリーゼが会話をはじめる。前回ほど外国語ではない、当たり障りのない世間話だ。

「伯爵令嬢、先般の転入試験の件を聞き及んだ。見事な成績だったそうだな?そして今宵の趣向…弱冠14にして手際は鮮やかなものだ。流石宰相の娘といったところか」
皇太子がエリーゼを称賛する。これ程の美男子、しかも本物の王子に誉めちぎられて夢心地にならない女性なんていないのではないだろうか。

エリーゼも頬をそめて、その頬へ白い手のひらをあてながら
「わたくしはなにも…ユーリあってのことですもの」
と謙遜する。エリーゼ、私は?しかし、ヴィルヘルム皇太子にとって重要なのはそこではなかったようだ。

「ユーリ?君は『訪い人』を知っているのか?」
底冷えのするような、その声に、エリーゼを庇おうと私はつい咄嗟に口をひらいた。
「あ、殿下、リア公爵夫人がお呼びのようですよ」
そして、言葉の選択を完全に間違えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...