婚約者の様子が(かなり)おかしい。

西藤島 みや

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閑話1

マルセル生徒会長についての一考察

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1月某日           美化委員長  T

生徒会へ入るのは、単に役員選出で選ばれたものだけではなく、僕のように各委員の2年のうち、くじ引きで選ばれた委員長もふくまれる。生徒会役員に当たると、必ず出るのは
「今年は当たりだな」
だの、
「今年は大変だぞ」
といった選出役員に対する評価の話題だ。

選出委員が何処かの貴族のボンボンで、愚にもつかないやつとか、あるいは騎士階級や平民出身でやたらとやる気に満ちていたりすると各委員長は仕事が多く、しんどい一年間になる。
逆に有能で統率力のある人物だと、仕事は楽で、楽しいものになる。

そして、今年役員のくじを引き当てた僕らに相談役の先輩方が言ったのは、
「頑張ってくれよ?あの方に見限られたら、俺たちも君らも…こう、だろうから」
首を落とされる仕草にゾッとした。

あの方。学年下の後輩でありながら、そう呼ばれるのはこの学校にはひとりしか居ない。今年生徒会長に選出された、クローディアス・マルセル子爵。
マルセル侯爵家の嫡男であり、セレートニア領を治める領主様でもある。王位継承権は第六位だが、実質は二位…あるいは今の皇太子に並ぶほどだと噂するものもいる。

マルセル侯爵家といえば、我が国で数百年続いたマルセル王朝の正統。学者肌で殆ど表に出てこないマルセル侯爵とは違い、子爵領へも度々脚をはこび、生徒会長へも立候補するなど、そうとうな野心家であるという噂だ。

16歳とまだ若いながら、ヴィルヘルム皇太子とも交流があり、一部ではその美貌をもって皇太子を籠絡し、自らの支配下へ置こうとしているとも聞く。
いったいどれほどの、と僕らはドキドキしながら生徒会室を訪れた。そこにいたのは、とても同じ学年とは思えないほど大人っぽい男子生徒だった。

繊細な絹糸のようななめらかな金の髪に、憂いを帯びた深い青の瞳。重厚な生徒会室の会長のデスクの脇に立ち、
「君たちは各委員会の長だね。これからよろしくお願いします」
と艶然とほほえむ。

柔和な表情に、くだけた口調でありながら、その姿は王者の風格というか、そこにいるだけで威圧されそうな雰囲気をはなっている。どうしよう、このひとになにか命令されたら、破滅するとわかっていてもやってしまいそうだ。
「自己紹介をしておこうかな?私はクローディアス・マルセル。マルセルでもクローディアスでも呼びやすい言い方でいいよんでくれてかまわないよ」

どんな猛者なら、このひとを呼び捨てにできるというのだろう?皇太子?あの規格外な人物なら、もしかしたら…等と考えてしまった罰があたったのだろうか?





「わたしは別れない!絶対にだ!」

新年を迎える夜会の夜。誰かが叫ぶ声に、何事かと教員のかたと駆けつけてみれば、中庭に居たのはヴィルヘルム皇太子と、才媛と名高い宰相の娘。そしてマルセル生徒会長の三人だ。かなり背の高いヴィルヘルム皇太子に、会長は喉元を締め上げられて、何事か囁かれている。

宰相令嬢はヴィルヘルム皇太子とこっそり情を通じてたのかな?それとも、噂のとおり情を通じていたのはマルセル生徒会長?首をかしげていると、ぱっと皇太子が手をはなし、生徒会長はぬかるみのなかに崩れ落ちた。

あっ、と僕のうしろにいた女生徒が駆け寄ろうとするのを、だれかが抑えた。いま出ていけばヴィルヘルム皇太子の怒りをかうかもしれない。
宰相令嬢が側へ駆け寄り、ヴィルヘルム皇太子は笑ってなにか言いながら立ち去った。

そのうしろ姿を、たちあがった生徒会長が見送る。
「きみ、やっぱり」
と、副校長のハゲが空気を読まずに発言し、生徒会長がこちらを向いた。その目は、屈辱と怒りにか、鋭い光を湛えていた。そう、この男は、王者の血族なのだと皆ぞっとした。
不用意な発言をした副校長を睨み、まさに威風堂々といったふうに宰相令嬢をつれて立ち去る。

「ダメですよ副校長、王侯に不用意に発言すれば、皆命にかかわります!」
事務局員のオバチャンが副校長の背中をたたいて注意した。

この学校に通うのは、ほんとに命がけだよな……
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