婚約者の様子が(かなり)おかしい。

西藤島 みや

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閑話2

わたくしの麗しい会長について

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その方はわたくしが扉を開けると、その麗しい顔をあげ、わたくしが声をかければ、口元だけを微笑みに動かした。
「雪が降りそうですわよ」
と言うと、物憂げな視線を外へとなげかけ、そうだね、としばらく外をみていらっしゃいました。


この学園のなかで最も優秀で、もっとも敬愛されるべき生徒会の会長、クローディアス・マルセル公爵令息。今年17になるとは思えない風格は、辺境地であるセレートニア子爵領の領地運営で培ったものでしょう。

美しくきらびやかなそのお姿、髪や瞳は今上であらせられる女王陛下とおなじもの。古くは王家にだけ伝わる色だったと聞きます。

世が世なら皇太子であったはずの方ですが、けして奢ったところも変に世を拗ねたところもない、誠実で実直なひとがらは、多くの人望を集めており、生徒のみならず教職員からも度々様々な相談事を持ち込まれていらっしゃるところを拝見します。

そのクローディアス会長が、エリーゼ・レスター・コーデリア伯爵令嬢と婚約なさったのは昨年の秋のこと。

それまでは女性の影もなく、わたくしの父であるデビアス男爵は近々、マルセル侯爵家へ婚約の承諾をするつもりとわたくしに話しておりました。
もともとマルセル侯爵より賜ったこの申し入れ、学園でのクローディアス会長の人となりをみてわたくしが頷けば、婚約成立、となるはずでした。

しかし、そこへきてのコーデリア宰相の一人娘、エリーゼとの婚約。マルセル侯爵からはお詫びの品と、ことの顛末についての書簡が届きました。

そうはいっても心は痛みます。クローディアス会長はご存知なかったとはいえ、暫くは生徒会へも出入りしづらく、辞めようかと考えたこともございました。それでもやはり、わたくしの書記としての能力が、クローディアス会長には必要だとみなさまからのたっての願いにより、生徒会の執務室へもどってまいりました。

しかし…!


「あ、書記長、ここにいらしたのですね?今度の校内の武術対抗戦での案内文の試し刷りができあがりました」
と、一枚の紙を差し出したのは、件のエリーゼ・レスター・コーデリア。わたくしはその書面を見て、首をかしげるしかなかった。
「ねえ、この、VSという表記はなあに?それにチーム戦ですから1年のユーリは2年生の会長と一騎討ちにはならないのでは?」
わたくしが試し刷りを眺めていると、どういうわけか焦ったようすで、クローディアス会長がその書面をわたくしから取り上げた。

「やり直してきなさい」
珍しく厳しい言い方で、エリーゼにそれを突き返している。
「あら、どうして?ユーリのチームが優勝となったら、クローディアスさまは突然一騎討ちを…」
「申し込まない!一騎討ちなんてしない!だから、きみは!これを!刷り直して来なさい!」


明らかに困っていらっしゃるのに、それでもどこか楽しそうなクローディアス会長を眺めながら、わたくしの初恋はおわったのね、とわたくしは少しだけ痛む胸をおさえて、ため息をついたのですわ。
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