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狙われた第2王子
早朝の王宮殿
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王宮、とりわけ国王陛下と皇后さまの宮殿は、豪華というよりは荘厳といった作りで、足を踏み入れるたびにまるで神殿に入り込んだような、独特の緊張感を感じていた。
呼ばれた時でさえそうなのだから、いわば飛び込みといったような今の私ではなおのことだ。
「よろしくて?」
執務室の前に若い衛兵が二人たっていた。私に気づくと、あわてて敬礼してみせる。近衛兵の制服を着ていた。
「わたくしは、グレアム公爵の娘、イライザと申します。リディア・ハミルトンのことで至急大伯父さまにお会いしたいんですの。謁見をお願いできないか、宰相さまへたずねてくださるかしら」
無論近衛兵がこの扉にいるということは、大叔父さまは仕事中ということなんだろう。勝手に入ることもできなくはないけれど、話の内容を鑑みるに、やはり控えるべきだわ、とあえて尋ねた。
近衛兵が、へ、え、というような奇妙な声を出したのはきっと、以前なら構わず開けていた扉を前に、手順を踏む様子の私に驚いたのだろう。
「では、こちらで…」
宰相へ繋ごうとしたのだろう、近衛兵のひとりが私に近くにある部屋を案内しようとした。しかし、それを言い終わるよりさきに、執務室の扉が勢いよく開かれて、出てきたのはジークフリードだった。
「イライザ!きみ、こんな朝早く、どうやってここまで…」
ジークフリードに言われて急に、何の見舞いも用意せず、それどころかいつも王宮へ上がる際は欠かさずしていた身支度も、今日は半端なままの自分に気づいた。
俯いてしまった私の手を、ジークフリードがそっと握った。
「申し訳ない、驚いたからつい大きな声を出してしまった。私の心配をしてくれたのなら嬉しいけれど…父上に用事かい?」
確かに大伯父さまに会いにこの宮殿にきたけれど。
「大伯父さまに、ジークフリード殿下の怪我のことをうかがいに参りましたの」
途端にジークフリードが破顔した。
「私は大丈夫。もとより頑丈だし、怪我もこれだけだ」
そういって右手のひらをみせてくれた。そこには包帯がまかれている。
私はそっとその包帯へ指を添わせた。
「応戦したが、宮殿内のことだ、短刀しか持ち合わせていなかった。クロフォードがいなければ、危険だったろうな」
そう言われて、私は目を見開いた。
「クロフォード?ディーゼル・クロフォードさまでしょうか」
ジークフリードがうなづき、首をかしげる。
「知り合いなのか?」
気のせいかその口調に剣呑なものを感じて、プロップテニスの仲間であるユリアの話をした。ジークフリードは、ふむ、と口もとへ手をやって考えている。
しばらくそのままだまっていたが、
「イライザ、君も兄上がリディアを差し向けた犯人だと思うか?」
そのいい方は、いかにも第二王子らしい、どちらともとれる言い方だった。
呼ばれた時でさえそうなのだから、いわば飛び込みといったような今の私ではなおのことだ。
「よろしくて?」
執務室の前に若い衛兵が二人たっていた。私に気づくと、あわてて敬礼してみせる。近衛兵の制服を着ていた。
「わたくしは、グレアム公爵の娘、イライザと申します。リディア・ハミルトンのことで至急大伯父さまにお会いしたいんですの。謁見をお願いできないか、宰相さまへたずねてくださるかしら」
無論近衛兵がこの扉にいるということは、大叔父さまは仕事中ということなんだろう。勝手に入ることもできなくはないけれど、話の内容を鑑みるに、やはり控えるべきだわ、とあえて尋ねた。
近衛兵が、へ、え、というような奇妙な声を出したのはきっと、以前なら構わず開けていた扉を前に、手順を踏む様子の私に驚いたのだろう。
「では、こちらで…」
宰相へ繋ごうとしたのだろう、近衛兵のひとりが私に近くにある部屋を案内しようとした。しかし、それを言い終わるよりさきに、執務室の扉が勢いよく開かれて、出てきたのはジークフリードだった。
「イライザ!きみ、こんな朝早く、どうやってここまで…」
ジークフリードに言われて急に、何の見舞いも用意せず、それどころかいつも王宮へ上がる際は欠かさずしていた身支度も、今日は半端なままの自分に気づいた。
俯いてしまった私の手を、ジークフリードがそっと握った。
「申し訳ない、驚いたからつい大きな声を出してしまった。私の心配をしてくれたのなら嬉しいけれど…父上に用事かい?」
確かに大伯父さまに会いにこの宮殿にきたけれど。
「大伯父さまに、ジークフリード殿下の怪我のことをうかがいに参りましたの」
途端にジークフリードが破顔した。
「私は大丈夫。もとより頑丈だし、怪我もこれだけだ」
そういって右手のひらをみせてくれた。そこには包帯がまかれている。
私はそっとその包帯へ指を添わせた。
「応戦したが、宮殿内のことだ、短刀しか持ち合わせていなかった。クロフォードがいなければ、危険だったろうな」
そう言われて、私は目を見開いた。
「クロフォード?ディーゼル・クロフォードさまでしょうか」
ジークフリードがうなづき、首をかしげる。
「知り合いなのか?」
気のせいかその口調に剣呑なものを感じて、プロップテニスの仲間であるユリアの話をした。ジークフリードは、ふむ、と口もとへ手をやって考えている。
しばらくそのままだまっていたが、
「イライザ、君も兄上がリディアを差し向けた犯人だと思うか?」
そのいい方は、いかにも第二王子らしい、どちらともとれる言い方だった。
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