春とともに君は去りゆく

あらんすみし

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Holiday

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彼と出会ってすぐ、世間はゴールデンウィークに突入した。
自分は、当然彼と一緒にのんびりとすごせると思っていたのに、彼は友達と飛騨高山へ旅行に行くことになった。
自分と出会う前から計画していたものだから仕方がない、とりあえず前半は諦めることにした。
彼が飛騨高山に行く理由。
それは、当時放送されていた朝ドラの舞台が飛騨高山で、そのロケ地巡りが目的だった。
自分は、彼の旅行を邪魔したくなくて、彼の旅行中はメールを送らないことにしようと決めた。
今にして思えば、何の意味があったのかわからない。
ただ、聞き分けのいい彼氏でいたかったのかもしれない。
彼の負担になりたくなかったのだと思う。
それにしても、ゴールデンウィークは何の予定も無くて暇だった。
彼からもメールは無いし、あまりにも暇なので、彼を連れて行ったゲイバーに行くことにした。
まだこの頃は、店のママともそれほど親しくも無く、お互いに距離を探りあっている状態だった。
このあと、定期的に通うようになって、相談をしたり、くだらない話につきあってもらえるようになるのは、もう少し先のことだった。
店は、ゴールデンウィーク真っ只中ということもあってか、客も少なく閑散としていた。
場所柄、ビジネス街という理由もあるが、新しい友だちでもできないかなぁ、と期待していたので少し残念だった。
しかし、そこで自分は酔客に口説かれたりした。
その人とは、話していて楽しかったので、ゴールデンウィーク中は、よく連れ立って遊んでもらっていた。
発展銭湯に連れて行ってもらったり、二丁目に繰り出したり、惚気を聞いてもらったり。
彼に会えない自分は、その人にとても助けてもらった。

ゴールデンウィーク後半、自分は後半くらいは彼と一緒にすごせるかと思っていたのだが、どんな理由があったのかは忘れてしまったが、結局ゴールデンウィーク中は彼に会うことは無かった。
その代わりと言っては何だが、後日、自分は彼から旅行のお土産を貰う。
それは、飛騨高山のファミマ限定、さるぼぼのストラップだった。
緑色の頭巾を被り、ファミマカラーのちゃんちゃんこを着て、金太郎がするような前掛けをした、顔の無いマスコット。
彼曰く、顔が無いのは見る人の想像に委ねるからだという理由だった。
人によって笑顔にも見えるし、泣き顔にも見えるし、怒った顔にも見える。
自分は早速それを携帯につけた。
これで会えない時も、彼の存在を近くに感じられると思うと、彼が自分のためにどんな気持ちでお土産を選んでくれたのかを想像して、それだけで満足することができた。
このさるぼぼのストラップと、一緒に撮ったツーショットの写真は、ずっと肌身離さず持ち歩く宝物だった。
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