春とともに君は去りゆく

あらんすみし

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birthday cake

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家に帰った自分は、彼の連絡先と着信とメールを全て消去した。
ずっと肌身離さず持っていた、彼との写真も、旅行のお土産で貰ったさるぼぼのストラップも捨てた。
とにかく、彼の痕跡は全て処分した。
そうしたら、さっさと忘れることができる思ったから。
友だちに聞いたら、半年もすれば忘れられるよ、と言われた。
不安定だった精神状態も、彼と別れてから落ち着いてきた。
新しい恋には踏み出せないでいたけど、それなりに声はかけられた。
そのうち、ねるとんイベントにも行って、新しい出会いを探すことも再開した。
彼と出会った発展場に行くのも再開した。彼とのことを思い出して、悲しくなることもあったけど、知らない男達に抱かれることで、その場は忘れられることができた。
ゲイバー通いで、新しい友だちもできたし、ママとも親しくなれた。
少しずつ、忘れようとしていた。
しかし、8月2日。彼の誕生日を迎える。
順調に心を整理していたのに、また彼との思い出が頭をもたげる。
そういえば、彼との関係がギクシャクし始めた頃、なんとかして誕生日まで頑張ろうとか思っていたな。
あの頃は、いろいろと頭の中で妄想していた。
何をプレゼントしようか。何をしたら喜んでくれるかな。彼の友だちと一緒に、何かサプライズできないかな。それとも、どこか旅行でもしようか。
いろいろ考えていたな。
結局、何一つ叶えることができなかった。
カラオケも行けなかったし、ボーリングもできなかったし、友だちにも紹介してもらえなかった。
そして、彼の誕生日も、クリスマスも、年末年始も、バレンタインも、何もイベントごとを一緒に過ごすことができなかったな。
あ、そうだ。
肝心の、いちばん楽しみにしていたことを忘れていた。
彼の案内で、袋田の滝を見に行くのを楽しみにしていたのに、結局見に行けなかったな。
たった2ヶ月のつきあいで、できなかったこともいっぱいだけど、でも、短かったけど総じて観ると幸せだったな。
彼のことを思い出すと、不思議と楽しかったことばかり思い出す。
辛いことも多かったのにね。
彼は、どんな誕生日を迎えたのだろうか?友達にお祝いしてもらったのかな?それとも、もう新しい彼氏がいたりして。願わくば、次の彼氏は、自分と違って物分かりが良くて、自分なんかよりかわいい彼氏だといいな。
そんなことを考えながら、自分はコンビニで買ってきたケーキにフォークをいれた。
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