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確信
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その日の朝は、季節外れの冷え込みで、月島佳子は布団を頭から被りベッドの上で丸まっていた。
と、突然枕元のスマホがけたたましい着信音を鳴らした。
月島は、布団の中から腕だけを伸ばして、手探りでスマホを探し当てて電話に出た。
「もしもし・・・」
月島は半分寝ぼけた声のトーンで応対した。
「月島さん、大変なことが起きた!」
電話の主は河辺だった。その切迫した様子で、月島は何事か悪いことが起きた事を瞬時に感じ、一気に脳が覚醒してベッドから飛び出した。
「もしもし!河辺さん、何があったんですか!?」
「大河原が死体で発見された!」
電話口の河辺の声から、その緊迫した様子が窺い知れた。
「詳しくは署で説明するから、大至急こっちに来てくれないか?」
「わかりました!これからすぐに行きます!」
月島は、手近にあった服に着替えて、化粧もせずに部屋を飛び出していた。
通りに出てタクシーを拾い、月島は署へと急ぐ。
どうして?何が起きたの?これは北島さんの仕業なの?
署に到着した月島を、表玄関で河辺が待ち構えていた。
「月島さん、こっちこっち!」
手招きする河辺へ月島は駆け寄る。
「どういう状況なの?」
2人は人気の無い一角に来ると、月島は河辺に尋ねた。
「まだ詳細はわかっていない。ただ、状況から見て自殺の可能性が高いということだ。」
「事件性は無いの?」
「まだ発見されて間もないこともあって、そこまでは判断しかねるんだ。ただ、北島と大河原のつながりを知っているのは、たぶん僕達だけだ。仮に北島が関わっているのなら、2人を繋ぐ確かな証拠を見つけ出して、事件性を立証しないと。」
河辺の表情にも、動揺の色が隠せない。
「この間、私が撮影した動画ではダメなの?」
「そうか!あの動画があれば2人の繋がりを立証できる!」
「私、あの動画を北島さんに見せて問い詰めてみるわ。」
月島は鼻息を荒くして意気込んだ。
「ダメだよ、それは拙速だと思うよ。そんなことしたら、北島が逃げてしまうかもしれない。ここは、慌てずに様子を見よう。」
河辺が慌てて月島をたしなめる。
「・・・分かったわ。とりあえず、私は引き続き北島さんの様子を見てみるわ。」
「それがいい。きっと北島も僕たちが大河原との繋がりを知っているとは思ってないだろう。今はまだ泳がせておいた方がいい。」
月島は河辺の言葉に頷いた。とうとう、月島の心の奥底から湧き上がっていた北島に対する疑念は、疑いようの無い確信へと変わった。
北島とは、いったい何者なのだろう?本名でないことは間違いないだろう。
何のためにこんなことを始めたのか?
北島の中では、人の命とはなんて軽いものなのだろうか。
そんな男を、信じていた自分が恥ずかしい。
そのとき、廊下の向こう側から北島が歩いてきた。
北島は月島に気づくと、いつもの柔和な紳士的な笑顔を浮かべた。
「おはようございます、月島さん。今朝は何だかとても怖い顔をしてますけど、何かありましたか?」
「・・・えっ?私、そんなに怖い顔をしてましたか?」
月島は北島に指摘されて、両手で顔をマッサージして笑って誤魔化してみた。
「えぇ、まるで連続殺人鬼に辿り着くために必要な証人が自殺してしまって、悔しくて不甲斐なくて堪らない、と言った顔ですよ。」
北島は、面白すぎて声をあげて笑いたいのを、必死に堪えるように笑っていた。
「・・・な・・・なんてこと・・・」
月島は絶句した。この男は、何もかも知っている。そして、全てを見透かしたうえで、相手を嘲笑っているのだ。許せない。人の命を愚弄し、踏みつけるような人を、私は絶対に許せない。月島の拳が怒りに震えた。
「私は・・・あなたを絶対に許さない。必ずあなたの正体を暴いて、罪を償わせてやる。」
「できますか?あなたに。私の正体に少しも近づけていないあなたに、私を追い詰めることなんてできますかね?やれるものならやってみてください。それでは、私はこれで失礼します。さようなら。」
北島は、月島に向かって捨て台詞を吐くと、そのまま立ち去って行った。
と、突然枕元のスマホがけたたましい着信音を鳴らした。
月島は、布団の中から腕だけを伸ばして、手探りでスマホを探し当てて電話に出た。
「もしもし・・・」
月島は半分寝ぼけた声のトーンで応対した。
「月島さん、大変なことが起きた!」
電話の主は河辺だった。その切迫した様子で、月島は何事か悪いことが起きた事を瞬時に感じ、一気に脳が覚醒してベッドから飛び出した。
「もしもし!河辺さん、何があったんですか!?」
「大河原が死体で発見された!」
電話口の河辺の声から、その緊迫した様子が窺い知れた。
「詳しくは署で説明するから、大至急こっちに来てくれないか?」
「わかりました!これからすぐに行きます!」
月島は、手近にあった服に着替えて、化粧もせずに部屋を飛び出していた。
通りに出てタクシーを拾い、月島は署へと急ぐ。
どうして?何が起きたの?これは北島さんの仕業なの?
署に到着した月島を、表玄関で河辺が待ち構えていた。
「月島さん、こっちこっち!」
手招きする河辺へ月島は駆け寄る。
「どういう状況なの?」
2人は人気の無い一角に来ると、月島は河辺に尋ねた。
「まだ詳細はわかっていない。ただ、状況から見て自殺の可能性が高いということだ。」
「事件性は無いの?」
「まだ発見されて間もないこともあって、そこまでは判断しかねるんだ。ただ、北島と大河原のつながりを知っているのは、たぶん僕達だけだ。仮に北島が関わっているのなら、2人を繋ぐ確かな証拠を見つけ出して、事件性を立証しないと。」
河辺の表情にも、動揺の色が隠せない。
「この間、私が撮影した動画ではダメなの?」
「そうか!あの動画があれば2人の繋がりを立証できる!」
「私、あの動画を北島さんに見せて問い詰めてみるわ。」
月島は鼻息を荒くして意気込んだ。
「ダメだよ、それは拙速だと思うよ。そんなことしたら、北島が逃げてしまうかもしれない。ここは、慌てずに様子を見よう。」
河辺が慌てて月島をたしなめる。
「・・・分かったわ。とりあえず、私は引き続き北島さんの様子を見てみるわ。」
「それがいい。きっと北島も僕たちが大河原との繋がりを知っているとは思ってないだろう。今はまだ泳がせておいた方がいい。」
月島は河辺の言葉に頷いた。とうとう、月島の心の奥底から湧き上がっていた北島に対する疑念は、疑いようの無い確信へと変わった。
北島とは、いったい何者なのだろう?本名でないことは間違いないだろう。
何のためにこんなことを始めたのか?
北島の中では、人の命とはなんて軽いものなのだろうか。
そんな男を、信じていた自分が恥ずかしい。
そのとき、廊下の向こう側から北島が歩いてきた。
北島は月島に気づくと、いつもの柔和な紳士的な笑顔を浮かべた。
「おはようございます、月島さん。今朝は何だかとても怖い顔をしてますけど、何かありましたか?」
「・・・えっ?私、そんなに怖い顔をしてましたか?」
月島は北島に指摘されて、両手で顔をマッサージして笑って誤魔化してみた。
「えぇ、まるで連続殺人鬼に辿り着くために必要な証人が自殺してしまって、悔しくて不甲斐なくて堪らない、と言った顔ですよ。」
北島は、面白すぎて声をあげて笑いたいのを、必死に堪えるように笑っていた。
「・・・な・・・なんてこと・・・」
月島は絶句した。この男は、何もかも知っている。そして、全てを見透かしたうえで、相手を嘲笑っているのだ。許せない。人の命を愚弄し、踏みつけるような人を、私は絶対に許せない。月島の拳が怒りに震えた。
「私は・・・あなたを絶対に許さない。必ずあなたの正体を暴いて、罪を償わせてやる。」
「できますか?あなたに。私の正体に少しも近づけていないあなたに、私を追い詰めることなんてできますかね?やれるものならやってみてください。それでは、私はこれで失礼します。さようなら。」
北島は、月島に向かって捨て台詞を吐くと、そのまま立ち去って行った。
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