最弱の俺が、ハッタリと他力本願で異世界を生き抜きます!

水咲 蓮

文字の大きさ
4 / 6

降臨!

しおりを挟む
相変わらず、薄暗く蒸した様な空気が充満する石造りの部屋。
無駄に広く、奥には後光が射した神々しい老人の像が、杖を掲げた巨大な姿で佇む。
中央には大きな魔法陣が敷かれ、像の置かれた壇上と、壇上に昇降するための階段が部屋の奥側を陣の円に沿う。
窓も天井にしか無く、その天窓も、空が曇っていては光が入らない。
壁に開いた、床から膝くらいまでの細長いスリットが、辛うじて僅かな通気役を担っていた。
だがそれも、疎らに幾つかあるだけで、部屋全体を換気する事もできない。
お陰で、足元だけは冷えるくせに、熱は上に溜まるから暑さは除けず、膝から下と腰から上の、上下の気温差を感じ取れる。
温感神経にストレスかけまくりな部屋だった。
町では祭りの真っ最中。
民衆の楽しそうな声が騒がしい秋真っ只中の夜。
寒暑い部屋で、念願の降臨の儀式が執り行われていた。
「さあ!我が主よ!彼の者をこの地へ遣わせたまえ!」
教祖スールヤが両手を空に向けて広げると、魔法陣を囲う御言役達も続けていた呪文を唱える声に一層の熱が入る。
その時だった。
天窓の彼方上空にある雲に、光の亀裂が走ったのだ。
町では祭りのピークを迎え、人々は空を眺めて騒ぎ立てる。
「おお!空が光ったぞ!!」
「マジか!?すげーッ!!」
「うおお!とうとう使徒様が降臨されるのか!?」
聖都の大通りを埋め尽くす人々が、思い思いの期待を込めて発する声は、大きな唸りとなって夜の空へ響いた。
いつしかそれらは一つに纏まり、『使徒様』コールで町の隅々から発せられた。
そして。
皇宮聖殿の真上。
光に掻き分けられる様に、雲が少しずつ隙間を開け、そこから青白い一筋の光が降りてくる。
最初は細い線状の光だった。
それが空から地上へ突き刺さるように伸びると、聖堂の天窓を透けて通り抜けた。
信託の間の中央にある魔方陣に光が達した時、空と魔法陣が1本の光で繋がる。
「お、おお!まばゆい光よ!」
「なんと神々しい!!」
「正に神の光!」
青白い光は次第に太く広がり、魔法陣一杯まで及ぶと、次第にキラキラと輝く光の粒がチラホラと、やがて無数の雪の様に降り注ぐ。
それらは魔方陣のすぐ上で、青白い光柱の中心に集まり、足の爪先から人の形を形成していった。
「こ、これが神の御業か!」
信託の間に居る御言役達も、驚きで口が開きっぱなしだった。
「皆、阿呆面並べてやがる…」
御言役達を見渡す者が、そう溢しながら、誰にも気付かれずにクスクスと笑う。
何人か集まると、1人ぐらいこういうヤツが居るものだ。
町でも人々は光の降り注ぐ光景に見惚れていた。
そして、光柱は青白い光から赤い光に変わっていく。
「おお!?光が!?」
「青から赤に変わっていく…!」
「燃えるような赤だ!」
天の方からやがて魔法陣まで赤く切り替わると、今度は光柱の中心を大きめな光の玉が降りてきた。
玉は地上に近づくにつれて、降下と共に円周運動を始め、螺旋を描きながら降りてくる。
その光が先程の人形ひとがたまで辿り着くと、ゆっくりとその心臓部に吸収されていく。
そして、光が全て人形に収まると、最後に心臓部から強い光を発した。
一呼吸程の束の間、人形が1度大きく揺れる。
同時にドクンという音が部屋中に響き、人形の心臓が鼓動を開始した事を告げたのだった。
「おお!使徒様!」
「使徒様!使徒様が!」
「ご降臨召された!」
「使徒様!万歳!!」
「チッ、男かよ…」
御言役達が万歳を連唱していると、光の柱は魔法陣側から空へと引き始めた。
それを見たスールヤは、壇上ですぐに神の像へ振り返り、教団特有の作法で感謝の意を表す。
まず、自らの胸の前で『人』の字の『ノ』から先に書いてそのまま真ん中より上に持ち上げ、繋げて横棒を書き、さらに繋げて下に下げ、最後に『人』の右側を下から反りあげる様に繋げて、頂点を結ぶ。
最終的に『大』の字に似た字となる。
『大』の字の左右の、横棒と下の払いが共に曲線で繋がった字だ。
この世界では、これが人を表す文字で、一筆書きで書く。
そして、胸の前で親指を上にした逆さ中に先程の『大』の字を入れて胸に丸を作ったままの手を付け、頭を下げる。
ここまでが略式の礼作法で、信徒達が挨拶代わりに行うのもここまでだが、今回は深く感謝の意を示す為、ここからさらに片膝をつき、腰も折って丸を胸と片膝で挟むまでお辞儀する。
スールヤがこれを始めると、他の御言役達も続いた。
「我が主。確かに、使徒様をお預かり致しました。此れで、予てよりの望みは叶えられましょう。されば使徒様の御力をお借りし、永らくのさばらせてきた魔をようやく滅ぼす時が出来ました…」
「おお、我が主よ…」
「感謝致します…」
「どうせなら、可愛い女の子の裸が見たかったな…」
光が退いた後も、名残りを惜しむように人形はぼんやりと発光を続け、床から5センチ程度中空に浮いていた。
それも、着るものも無く、誰かが呟いた通りに裸の姿だった。
そして、人形の瞼がゆっくりと開く。
「…ん…?」
「お、お目覚めになられた!!」
「なにッ!?」
「し、使徒様!?」
信託の間に集まる全ての神官達がワッとどよめく。
「こ、ここ…は…?」
使徒として、彼が開口1番に口にしたのは、そんな気の抜けた言葉だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。表現が拙い部分もあるかもしれませんが、温かく見守っていただけると嬉しいです。】

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

処理中です...