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84話 踊りましょう
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「お友達か……」
舞踏会の会場でゆるやかに踊るデイジーとバジル様を見つめながら。
ウィロウは難しい顔をしました。
「それは、バジル様はデイジーに結婚相手としては意識されていないってこと?」
「好感を持たれるようにはなったということよ」
私は飲み物のグラスを傾けながら説明しました。
「バジル様は、デイジーにとってお友達として信用できる人という位置までは上って来たの。だからあれでも関係は進展しているのよ?」
「友人としか見られていないなら、仲が進展しているとは言えない気がするんだけど……」
ウィロウは可哀想なものを見るような微妙な表情を浮かべました。
「お友達でいましょうって、お付き合いをお断りするときの決まり文句だろう?」
「普通はそうかもしれないけれど。デイジーの場合は進歩なのよ。デイジーはバジル様のことも最初は爛れた貴族の一人としか見ていなかったもの。……ウィロウのことだって、デイジーは最初は爛れた貴族として警戒していたのよ?」
「ええっ?! 私も?!」
「デイジーはお父様のことがトラウマだから、貴族の男性というだけで浮気者に見えてしまうのよ」
「酷い……。私は何もしていないのに……」
悲しそうな顔をしてウィロウは呻きました。
「ウィロウが悪いわけじゃないから、気にする必要はないわ。悪いのはお父様だから」
会場をぐるりと見回すと。
ゆるやかに踊っている人々の向こうに、ご婦人方に囲まれて上機嫌になっている父の姿があります。
カトレア夫人に愛想をつかされたショックでしばらく寝込んでいた父ですが。
愛人たちや親交のあるご婦人方に励まされて復活しております。
女性にモテることが自慢の父は、女性にチヤホヤされることで活力を得て元気になるようです。
「……お父様があんなだから。デイジーは、貴族男性をまず疑ってかかって、信用していないところからスタートするのよ。バジル様が友人として信用されるようになったということは関係が進展したということよ」
「じゃあバジル様は、このまま仲が進展すればデイジーに選ばれる可能性があるの?」
「それは解らないわ……」
私は苦笑しました。
「デイジーの理想の男性は、お金持ちの平民なの。バジル様は王族だから、デイジーが結婚したい相手の条件からは外れているのよね……」
「デイジーが平民と結婚? それはもう無理じゃないかなぁ」
ウィロウは考えるような顔をしました。
「デイジーは社交界でこれだけ目立ってしまったんだから、平民はデイジーに気後れしてしまうだろう。それに、王子殿下や貴族令息たちがデイジーに求婚したんだ。デイジーの夫になった男は、彼らに逆恨みされる可能性もある。王族や貴族を敵に回してデイジーを妻にするのは、いくら財産家でも平民には荷が重いんじゃないかな」
「そうね……。厄介なお方に目を付けられた気もするし……」
「またどこかの大物がデイジーに求婚したの? もうこの国にはデイジーに求婚していない大物なんていない気がするけど」
「求婚はまだだけれど。デイジーは厄介な人に目を付けられた感じがするのよ」
「リナリアがそう言うってことは、よほど厄介な人物か。王太子殿下より大物っていないと思うから大丈夫な気がするけれど……」
厄介な王太子をすでに遠ざけたことをウィロウはあげつらいました。
私はそれに曖昧に微笑むと、声を顰めて言いました。
「ウィロウ、耳を貸して」
デイジーと帝国の舞踏曲を踊っていた、ロキと名乗った黒髪紅目の美貌の令息について、私はウィロウに教えました。
「え! 彼が?!」
「まだ秘密よ」
「ああ、解ってる。……それは厄介だね!」
私とウィロウは、デイジーとバジル様のダンスを眺めながら、デイジーの身に降りかかるかもしれない苦難について語り合いました。
そして飲み物のグラスを空けました。
「リナリア、気晴らしに私たちも踊らないか?」
「そうね。踊りましょう」
舞踏会の会場でゆるやかに踊るデイジーとバジル様を見つめながら。
ウィロウは難しい顔をしました。
「それは、バジル様はデイジーに結婚相手としては意識されていないってこと?」
「好感を持たれるようにはなったということよ」
私は飲み物のグラスを傾けながら説明しました。
「バジル様は、デイジーにとってお友達として信用できる人という位置までは上って来たの。だからあれでも関係は進展しているのよ?」
「友人としか見られていないなら、仲が進展しているとは言えない気がするんだけど……」
ウィロウは可哀想なものを見るような微妙な表情を浮かべました。
「お友達でいましょうって、お付き合いをお断りするときの決まり文句だろう?」
「普通はそうかもしれないけれど。デイジーの場合は進歩なのよ。デイジーはバジル様のことも最初は爛れた貴族の一人としか見ていなかったもの。……ウィロウのことだって、デイジーは最初は爛れた貴族として警戒していたのよ?」
「ええっ?! 私も?!」
「デイジーはお父様のことがトラウマだから、貴族の男性というだけで浮気者に見えてしまうのよ」
「酷い……。私は何もしていないのに……」
悲しそうな顔をしてウィロウは呻きました。
「ウィロウが悪いわけじゃないから、気にする必要はないわ。悪いのはお父様だから」
会場をぐるりと見回すと。
ゆるやかに踊っている人々の向こうに、ご婦人方に囲まれて上機嫌になっている父の姿があります。
カトレア夫人に愛想をつかされたショックでしばらく寝込んでいた父ですが。
愛人たちや親交のあるご婦人方に励まされて復活しております。
女性にモテることが自慢の父は、女性にチヤホヤされることで活力を得て元気になるようです。
「……お父様があんなだから。デイジーは、貴族男性をまず疑ってかかって、信用していないところからスタートするのよ。バジル様が友人として信用されるようになったということは関係が進展したということよ」
「じゃあバジル様は、このまま仲が進展すればデイジーに選ばれる可能性があるの?」
「それは解らないわ……」
私は苦笑しました。
「デイジーの理想の男性は、お金持ちの平民なの。バジル様は王族だから、デイジーが結婚したい相手の条件からは外れているのよね……」
「デイジーが平民と結婚? それはもう無理じゃないかなぁ」
ウィロウは考えるような顔をしました。
「デイジーは社交界でこれだけ目立ってしまったんだから、平民はデイジーに気後れしてしまうだろう。それに、王子殿下や貴族令息たちがデイジーに求婚したんだ。デイジーの夫になった男は、彼らに逆恨みされる可能性もある。王族や貴族を敵に回してデイジーを妻にするのは、いくら財産家でも平民には荷が重いんじゃないかな」
「そうね……。厄介なお方に目を付けられた気もするし……」
「またどこかの大物がデイジーに求婚したの? もうこの国にはデイジーに求婚していない大物なんていない気がするけど」
「求婚はまだだけれど。デイジーは厄介な人に目を付けられた感じがするのよ」
「リナリアがそう言うってことは、よほど厄介な人物か。王太子殿下より大物っていないと思うから大丈夫な気がするけれど……」
厄介な王太子をすでに遠ざけたことをウィロウはあげつらいました。
私はそれに曖昧に微笑むと、声を顰めて言いました。
「ウィロウ、耳を貸して」
デイジーと帝国の舞踏曲を踊っていた、ロキと名乗った黒髪紅目の美貌の令息について、私はウィロウに教えました。
「え! 彼が?!」
「まだ秘密よ」
「ああ、解ってる。……それは厄介だね!」
私とウィロウは、デイジーとバジル様のダンスを眺めながら、デイジーの身に降りかかるかもしれない苦難について語り合いました。
そして飲み物のグラスを空けました。
「リナリア、気晴らしに私たちも踊らないか?」
「そうね。踊りましょう」
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