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1章 コスで生活

7話 帰らないお客にはお仕置きです

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「たっだいまー」


マスターに外出すると伝え、僕は孤児院に1度帰ってきました、アルミクたちが待ってましたとばかりに走って来てお出迎えをしてくれたんです、こんな風に誰かが待っててくれるなんて、生まれて初めてで嬉しかったです。
時間も限られているので、早速台所に向かい調理開始です、ササピーさんにはさっき帰って来た時、もう食材を手に入れる為に頭を下げる必要がない事は伝えたんだ、僕に感謝の言葉を伝えるのは分かっていたけど、今まで助けてくれた人達にもお礼をしたいってササピーさんは言ったんだ、さすがだと思い僕も賛成し、何倍にもして恩返しします。
パンとお皿をササピーさんに運んでもらい、4人を撫でて皮むきなどを指示します、切ってもらった肉や野菜を炒めて行きます、予定通りのポトフを作り、野菜炒めと2品の料理が出来上がりです、でも今日はもう一品です、ジャガイモを薄く切って玉ねぎと鶏肉を一緒にした炒め物です。


「さぁ完成だよ、みんな気を付けて持ってね」

「こ、こんなしっかりとした食事初めて、ありがとエリナ姉」


サーヤのお礼はみんなも同じみたいです、目を潤ませ僕を見てきました、お礼を言うのは僕の方です、こんなに楽しいのはコスプレをしている時だけでした、今もしてますけど毎日が楽しいんです。
出来ればみんなと楽しく食事をしたい、そこはちょっと残念です、でも僕にはお仕事があります、テーブルに並べるのをササピーさんたちに任せ孤児院を出ます。


「何だかすごく楽しい、僕すごく楽しいよ!」

「おう姉ちゃん!そんなに走ってどこ行くんだ?」


笑顔で走っていたら、道を歩いていた男性が声を掛けてきました、僕は振り返り酒場の宣伝に使えると笑顔になります、頭を下げて変わったお酒を提供してるお店に向かっていると宣伝したんですよ。
男性はちょっと赤くなってましたけど、飲みに行くと言ってくれました、約束ですよって手を振り僕は走り出します、途中声を掛けて来る人全員に笑顔を振りまくと、みんなデレ~っとした顔になります。


「僕を女性だって思ってるんだね・・・これは、明日はビールを多めに収集しないと足りないかも」


走りながらそんな事を呟きます、タルドッグは20匹倒しました、1樽20リットルと鑑定で分かってます、今酒場にあるのは400リットル、今日はお客が少ないので余裕で足りるでしょう、でも明日は分かりません、30分で帰っていったアースロさんたちが基準だけど、もっとゆっくり飲んでいたら沢山飲んだでしょう。


「ビールの注ぎ方も考えないとだね」


量もそうですけど、泡の量も大切です、比率を考え注げるようにしなくちゃダメです、そうすればジョッキに入れる量も減り美味しく飲めて良い事だらけです。
酒場の前に着いて黒い笑顔をします、笑顔のウエイトレスさんも黒いですねぇっと、自画自賛して酒場の扉を開けました、お客さんの視線が僕に集中してきたのでニッコリ笑顔です。


「エリナちゃんビールお代わりだ、おやじさんじゃうまくねぇんだよ」

「オレもだ、早く頼むぜ!」


味は変わらないですよっと催促に返事をして用意しました、その間マスターの顔は見ません、きっと文句を言われて怒ってますからね。
ある程度ビールを配り終わると、困ったお客さんが入ってきました、アースロさんたちとは違い、僕が誘導しても拒んできたんだ、席に着こうとしないで僕を囲んで誘ってきます。


「お客様、席に着いて貰えないのならば何しに来たのですか?」

「決まってるだろ、君を誘いに来たんだ、こんなところで働いてないで俺たちと遊ぼうぜ」


2人の冒険者さんが僕の肩に手を置きます、他の2人は手を引っ張るんです、残った正面の男はニヤニヤとしてます、5人の顔を見て、いやらしいとか普通は思うんでしょうね。
僕はお客じゃないのを確認したので、手を握っていた2人の指を捻じります、痛みに耐えきれず膝を付き悲鳴をあげました。


「な、何しやがる!?」

「何って、お客様じゃないから出て行って貰うんです、さぁこのままお引き取り下さい」


ねじ上げを強めると男たちは腕を抑え始めました、それを見て肩を掴んでた男たちが止めさせようと肩を後ろに引っ張ってきます、僕は手を放し肩に乗ってる手を握って捻じります、そのまま後ろに回り腕を固定しました、腕をねじ上げ固定され2人は痛そうです。


「さぁ帰ってください、それともまだやります?」

「こ、このアマ!優しくしてればいい気になりやがって」


正面にいた無傷の男が腰の片手剣を抜きました、さすがにやり過ぎだろうと、他のお客様が声をあげます、僕は締め上げていた手を放し180度向きを変え、他のお客様たちに向いて笑顔を見せます、スカートを少しつまんで平気な事を一礼して知らせたんです。


「皆さまありがとうございます、でも平気ですよ、直ぐに済ませますので、どうぞそのまま御覧ください」


お客様たちはそれを聞き席に着きます、僕は再度男たちに向きます、片腕を痛めてはいるけど4人の男たちは復活していました、やれやれっとポケットに手を入れ撃退の準備です、ポケットの中に収納空間を出し木のナイフとフォークを取り出したんです、指の間に挟んでポーズをとります、これが戦うウエイトレスさん戦闘モードです、漫画の中では鬼の背景が見えますけど、彼らには見えてるのかな?


「やや、やる気かこの」


また文句を言いそうだったので、フォークの1本を男の顔に投げました、もちろん威嚇なので当てていません、顔すれすれを通り後ろの柱に刺さっています。
木で出来たフォークなのに柱に刺さり僕はビックリです、さすがは戦うウエイトレスさんっと、ジリジリと男たちに近づきます。


「さぁ掛かって来てください、それとも逃げますか?」

「や、やっちまえ!」


結局逃げずに武器を抜いてきました、さすがに武器はまずいと、フォークとナイフを男たちの手に投げたんです、刺さった拍子に男たちは武器を落とし、手を抑えて叫びだします。
痛がって両手を頭上にあげた男たちの後ろに回り、酒場の入り口に投げつけます、扉は壊れ男たちは外に倒れました、その間掛かった時間は4秒くらいです、少し叫ばれてうるさかったですね。


「皆さんすみませんでした、邪魔者は排除しましたので、どうぞ楽しいお酒と夕食をお楽しみください」


お客様に振り返り、頭を下げて告げました、静かだった酒場から歓声が上がり、ちょっとテレてしまったよ、マスターがお詫びも兼ねてビールを1杯ずつサービスする様に言ってきたのを笑顔で対応です。
それからは何事もなくお仕事が出来ました、お客様たちは少し怖がっていた気もしましたけど、笑顔をするとニッコリしてくれます、初日にしては大変でしたね。


「7対3?」

「そうですよマスターさん、ビールは泡と一緒に飲むのが美味しいんです、だからジョッキの上側、大体取っ手の位置で注ぐのを止めて泡を並々と加えるんです」


閉店して厨房で少し練習です、スプーンで泡を加え実演しました、ジョッキに注ぎながら出来る僕とは違い、マスターはまだまだ出来ません、それが美味しくないって言われた理由だって教えたんです、マスターは気にしてないって言ってますけど、表情はそうは言ってないんですよ。
やせ我慢ですねと笑うと、マスターも笑っていました、少しは仲良くなれたと嬉しくなりました。


「そう言えばマスターの名前って何ですか?」


そう言えば言ってなかったと、マスターは名乗ってくれました、マスターの名前はジュロスと言うそうです、握手をして改めてよろしくと挨拶を交わしたんです。
今更とか言って笑い合い、明日からの商品も検討しましたよ。
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