上 下
6 / 97
1章 コスで生活

6話 戦うウエイトレス

しおりを挟む
「エリナ姉、可愛い!」


孤児院に戻って来た僕は、部屋でウエイトレスの服に着替え、台所で食材を沢山出し何を作ろうか吟味してます、サーヤとミーオが悩んでる僕の格好を見て褒めてくれたんだよ。
冒険者が来店するお店と言う事で、普通のウエイトレスさんではありません、僕の次のコスは戦うウエイトレスさんです。


《ステータス》(コスプレ中)
【名前】遠藤竜(エリナ)
【年齢】16歳
【性別】男(女)
【種族】ヒューマン
【職業】コスプレイヤー(戦うウエイトレス)
【レベル】1(500)
【HP】100(500万)【MP】50(20万)
【力】100(500万)【防御】100(10万)
【素早さ】150(20万)【魔法抵抗】50(20万)
【魔法】
(洗浄魔法レベルMax)
【スキル】
収納レベルMax
(掃除レベルMax)
(接客レベルMax)
(調理レベル10)
(配膳レベルMax)
裁縫レベル5
【ユニークスキル】
コスプレ
永遠の16歳
不眠不休
不思議のダンジョンレベル1
《酒ダンジョン》
【称号】
破滅のランナー
世界を越えたコスプレイヤー
お酒ダンジョン制覇者


完全なコスをしたらどうなるのか、それを調べる為にお化粧も完璧にしてみました、リボンで後ろ髪を結ぶだけで完成したのも良かったです・・・まぁ下着はまだだけど、ステータスはこれでもかって数値になりましたよ。
ふたりにありがとうっとお礼を言って、その場でクルクルっと回り決めポーズを取ります、ふたりは拍手までしてくれたよ、コスプレイヤーなら期待には答えないといけません、ふたりの為に他にもポーズをとって見せました。


「さて、サーヤとミーオはジャガイモの皮を剥いて、アルミクとドミノンも見てないで手伝ってね」


十分堪能して貰った後、作業開始です、ボーっと見ていたアルミクとドミノンにボウボウドリの肉を小さく切ってもらったんだよ。
正直、僕はそれほど料理を知りません、カレーとか簡単な物だけです、でも今はウエイトレスコスだからか、料理が沢山浮かぶんだ、接客とかじゃないの?とか思いながら、僕はレンガの窯に火を入れました、そしてパン生地を丸く平べったく伸ばしていったんです。
サーヤとミーオからジャガイモを受け取るとザルに入れます、お湯を沸かしているお鍋の上にそのザルを乗せ蒸して行きました。


「エリナ姉、これじゃザルが燃えちゃうよ?それに茹でるならお湯に入れないと」

「これは蒸すって調理法なんだよサーヤ、今の状態じゃ完全には火は通らないけど窯に入れるから問題ないんだ、大体火が通ったらこっちのパンに乗せていく、アルミクたちの切った肉はフライパンで焼いて塩で味付けをするんだ」


僕の作ろうとしているのはピザです、時間があればフワフワのパンが出来るかもですが、酵母もないしチーズもない、だからなんちゃってピザにしてみるつもりです、トマトをしっかりと潰してパン生地に伸ばし、軽く火を通した具材を乗せます、後は不十分に温まる窯に入れて待つだけ、待ってる間は調理器具を洗って片付けていると、いい匂いがし始めたんです。


「「「「良いにお~い」」」」


4人がウットリです、ほんとのピザはもっと色々入ってるからみんなに食べさせたい、チーズや玉ねぎやほうれん草とか、これでもかって入れたいよ、でも今日はジャガイモとニンジンと鶏肉だけです、卵もなかったから物足りない。
何個も作ったピザは子供たちのおやつにします、お昼には間に合わなかったし、今度から3食にする前座だね。


「さて、これは試しに作っただけだから、みんなで味見してみて」


最初に焼けた分を切り分け、手伝ってくれた4人に配ります、食べていいと分かり嬉しそうに一口食べると、それはもう満面の笑みを貰ったんだ、それを見て僕も嬉しいです。
一切れだけを収納にしまい、僕は孤児院を出ました、4人に後を任せ夕飯も期待してと言っておきましたよ、今日の夜はポトフです、パンは途中で買って収納に入れました、今後の問題は味付けかな、せめてコショウが欲しいと思いながら歩きます。
コショウは売っています、でも塩よりも高いです、塩は一袋(300グラム)大銅貨10枚もするんだ、コショウはその3倍です、ちなみにニンジンやトマトが1個銅貨2枚で買えるんですよ。


「ミルクもないんだよね、まだ見つけてないだけかもしれないけど、昼の市場では見掛けなかった」


他の野菜ももっと欲しいと呟きつつ、僕は酒場の扉を開けたんです、マスターさんが仁王立ちして待っていました。
そんなに怖い顔をしないでよっと、ちょっとドキドキしたけど顔には出ません、これも接客の高いウエイトレスさんだからですね。


「さぁ今日から働いてもらうぞ、時間は11時までだ、ほんとに平気か?」

「もちろんですよマスターさん、6時には一度出ますけど、体力には自信があります」

「いや、そっちの心配じゃねぇんだが・・・まぁ無理そうだったら言えよ、俺が相手するからな」


良く分からない返事を貰い、僕は頷いておきました、既にお店は空いていますがお客は来ません、閑古鳥が鳴いていると言うのはほんとでした。
暇なので、マスターさんにさっきのピザの試食をしてもらう事にします、声を掛けると厨房から怖い顔が【にゅっと】出て来ます。
いちいち怖いです、ウエイトレスさんが最強で良かった、そう思いつつピザをお皿に乗せてお話を進めます。


「これが新しい料理か?」

「完成品ではないですけどね、足りない食材が多くて全然なんです、でも味は美味しいと思いますよ、新しいお酒のビールに合いますから、ちょっとだけお酒も飲んで見て下さい」


ビールにはピザですよね、そう思っての無理やりの未完成品だよ、本当なら鶏肉を使った料理でトマト煮や焼き鳥が良いと思うんだ、でも僕はピザが好きなのでこっちにしました。
マスターは一口食べビールを飲みます、その表情はかなりの手ごたえを持ったみたいです、どうすればこれは完成するのか聞いて来ました、不足してる食材を聞くきっかけを手に入れましたよ。
あれはないこれは無いと、マスターと仲良く話す事に成功です、おかげで怖い顔も慣れました、そこにやっとお客さんが来店です、僕は直ぐに対応に走りましたよ。


「いらっしゃいませー」

「おっ!?やっぱりここだった、君可愛いね何て名前?」


いきなりナンパ?とか思いますが、これも営業です、僕は名前を名乗り席に案内しました、そして楽しいお喋りをしながら情報を貰ったんだ、やっぱりってどういうことなのかも聞いて分かりました。
どうやらここに来る間の僕のウエイトレス姿が原因らしいです、ここに来るまでに歩いていたのを見て、何処のお店で働いてるんだろうと探したと笑ってます、そこまでするのかとちょっと笑顔を曇らせたけど、戦うウエイトレスさんはそれをお客様に悟らせません。
コスが完璧だからか、ほんとに自然に対応が出来ます、心が乱れていてもそれは変わらない、やはり衣装以外も揃えるべきですね。


「僕を探してくれたんですね、ありがとうございます、今日は楽しんでください」

「それよりもさ、この後デートしようぜ、俺たち仕事から帰って来たばかりだからさ、結構金持ってんだ」


やっぱりナンパが目的で料理には興味なしです、最初のお客様なので軽く断り料理を注文してもらったんだ、新しいお酒と聞けばすぐでした。
問題はお酒が入ってからだと、僕のウエイトレスさんが語っています、その時が来たら笑顔のウエイトレスさんが鬼の形相で有名な、戦うウエイトレスさんに変わります。
そしてそれは当然やってきました、美味しいとビールをどんどん注文し、ペースが速かったから30分も掛かってません。


「エリスちゃ~ん、この後俺と遊ぼうよ~」

「ダメですよアースロさん、ここはそう言った酒場じゃないですからね、それに僕の名前はエリナですよ飲み過ぎじゃないですか?お水を持ってきますね」

「冷たい事言わないでよぉ~ごほっ!?」


後ろから抱き着いて来たアースロさんに、僕は肘打ちを軽く当てました、それで済めば良いんだけど、それでも諦めてないみたいです、お腹を押さえヨロヨロと僕に近づいてきます、もう片方の手を前に出してきたので、僕は笑顔でその手を取りダメですよと告げます、そして手を捻じって投げ飛ばしました。
これだけだと自信家の冒険者さんは怒るでしょう、なので膝を付いてしゃがみ、アースロさんを見下ろして笑顔でささやきます。


「僕の様な非力なウエイトレスに投げ飛ばされるなんて、余程ビールを気に入ってくれたんですね、ありがとうございますアースロさん、でもペースを考えてお飲みくださいね、じゃないと死んじゃいますよ?」

「は・・・はい」


アースロさんが凄く小さく返事をしました、まだ日も落ち切ってないのに4人の冒険者さんたちは帰っていったんです、やれやれっとテーブルを片付けていると、マスターが厨房から顔を出して僕を見て来てました。


「何かまずかったですか?」

「いや、見かけによらず肝が据わってると思ってな、良い判断だった・・・惚れ直した」


最後の方は厨房に向ていたので聞き取れませんでした、きっと「雇って正解だったな」とか言ってるんでしょう。
ちょっと嬉しくなってテーブルを拭き、その後のお客さんの対応をします、お客様は少しずつ増えて来て嬉しかったです、全員が僕目当てでも集客にはなってますからね。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

いっぱいの豚汁

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:1,491pt お気に入り:0

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,382pt お気に入り:6,434

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,311pt お気に入り:6,133

なんで元婚約者が私に執着してくるの?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:8,413pt お気に入り:1,877

天使志望の麻衣ちゃん

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:1

【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7,910pt お気に入り:830

処理中です...