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1章 コスで生活

5話 お仕事確保

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「なんだ客がいたのか、盗む訳じゃなさそうだな、何を探してやがる」


言葉使いも見た目通りだと、僕は率直に思ったよ、おかげで少しは落ち着きました、質問の答えは買取のお願いです、木の食器を収納から出し見せます、おじさんはジッと見て怖いです。


「ふんっ!なかなか良いじゃねぇか」

「じゃあ買って貰えますか?」


僕の質問におじさんは答えず、テーブルに銅貨を1枚ずつ置き始めました、つまりは買い取ると言う事でしょう、その間おじさんはジッと僕を見てきます、ちょっと居心地が悪いです。
食器はナイフとフォーク4組、お皿が5枚にグラスとジョッキを5個ずつです、銅貨は全部で200枚、200メニーと言う事です、嬉しくてニコニコ笑っていると、おじさんが咳ばらいをしました。


「ありがとうございます、とても助かります」

「シスターさんよ、訳ありなのは何となく分かるぜ、だからこれは俺のおせっかいだ、断ってくれても全然かまわねぇ、あんた美人だし度胸もあるだろ、だから俺の得意先の酒場で働かないか?言葉使いもしっかりしてるし、あんたならぴったりだ」


どうして初対面でと思ったんですけど、おじさんは困ってる怖い顔に変わってます、僕は話だけでも聞くことにしました。
そのお話は、ある酒場の顔の怖いマスターさんの諸事情でした、怖い顔のせいで経営が苦しく閑古鳥が鳴いてるそうです、だから僕の様なウエイトレスを雇えば繁盛するかもと、今思いついたそうですよ。


「今思いついたんですね」

「良いじゃねぇか、食器を売るほど金に困ってるんだろ?それならやって見てくれねぇかな」

「僕は孤児院で暮らしてるんですよ、7時の夕食を準備しなくちゃいけません、仕事中に外出が出来ないと困ります、それでも平気だと思います?」


ササピーさんなら働くこと自体は許可してくれるでしょう、だから夕食さえ作れれば夜が遅くても問題ありません、でもおじさんは開店時間を知らなかったんだ、酒場のマスターと交渉してくれとか言ってきました。
全部僕がやるんですかと、嫌な顔をしちゃったよ、おじさんは笑ってるけどさ。


「それじゃ断られるかもしれないじゃないですか、良いんですかそれで」

「それ位で良いんだよ、今思いついたしな・・・それにあんたの笑顔なら、あいつも頷くかもしれない、俺の紹介だって言えば少しは考慮してくれるだろう、俺は奴の兄のジューダスだ」


僕もエリナと名乗りお仕事を受ける事にしました、ジューダスさんは怖い笑顔をして僕の手を取り握手をしてきます、お金を収納にしまっていると、今売ったばかりの食器を袋に入れ僕に持たせてきました、どうして?って思っていると、問題のお店に届ける様に言ってきたんです。


「これって・・・ただ単にジューダスさんがそこに行きたくないだけでは?」

「そ、そんな事はねぇぞ、仕事を紹介した手数料ってやつだ、それにそれを持ってれば説明しやすいだろ?」


最初の戸惑いが気になりましたが、確かに怖い顔の人と話すなら用事は大切です、僕はやれやれって感じで店を出ます、木の食器はまた手に入りますから、そこが繁盛すれば買い取ってもらえます。
酒場の場所は、冒険者さんたちが集まる西区画だそうです、宿屋や食事屋と密集してる場所ですね。
治安もあまり良くないので、女性一人では夜は危険です。


「でも、ジューダスさんは僕の事情を聞かず紹介してくれたんだよね、良い人ではあるのかな」


顔は怖いけどっと付け足し道を歩きます、途中にある市場を通ったので、食材を買い込みここで売ってる商品も確認です、ラノベでも大抵ありませんけど、お米は見当たりません、とてもガッカリです。


「トマトにジャガイモ、葉野菜は~無いね」


ニンジンやカブも買い込み、肉や葉野菜を探しながら買い物を進めます、香辛料は無く塩のみが買えました、お肉はボウボウドリと言う鳥のモンスターのお肉が売っていました、他にはボアやオーク肉が売ってるそうですが、今日は品切れでしたね。
ない物は仕方ないと目的の酒場に向かいます、冒険者ギルドを横切り西に真っすぐ進みます、外に出る門と中央広場が同じ距離になった場所の右手の小道に入り、しばらく進むとそのお店はありました、看板の名前はマーメイド亭です。


「怖い顔のおじさんなのに、お店は随分可愛い名前だね」


素直な意見を呟き店に入りました、中は暗くて汚かったです、テーブルは乱雑に置かれ椅子も倒れてるモノもありバラバラの位置です、きっと昨日の営業から戻してないんです、奥には厨房が見えます、厨房から直接料理を出せるように枠で区切ってありました。


「学校の食堂みたいだね、でもマスターさんはどこだろう?」


時間は昼の1時です、夜のお仕事をしてるマスターさんは寝てるんだと、僕は片付けをしながら待つことにしたんだ、さすがに起こしたら怒られるだろうし、ここで待つとなると喉をホコリで痛めそうです。
これも雇ってもらう為の布石だとある作戦を思いつきました、やり手シスターさんから、お掃除シスターさんに切り替えです、帽子を収納にしまい布を巻きます、髪をツインテールに結び直して完成です。


《ステータス》(コスプレ中)
【名前】遠藤竜(エリナ)
【年齢】16歳
【性別】男(女)
【種族】ヒューマン
【職業】コスプレイヤー(お掃除シスター)
【レベル】1(10)
【HP】100(300)【MP】50(0)
【力】100(200)【防御】100(300)
【素早さ】150(500)【魔法抵抗】50(0)
【魔法】
なし
【スキル】
収納レベルMax
(掃除洗濯レベル4)
(家事レベル4)
裁縫レベル5
調理レベル2
【ユニークスキル】
コスプレ
永遠の16歳
不眠不休
不思議のダンジョンレベル1
《酒ダンジョン》
【称号】
破滅のランナー
世界を越えたコスプレイヤー
お酒ダンジョン制覇者


ステータスが低くなり掃除の基礎が頭に入ってきました、椅子をテーブルに乗せ、天井のホコリを箒に布を巻いて落として行きました。
ホコリが凄くて僕はビックリです。


「うわっ!?結構ホコリが【ゴホゴホ】」


予想よりも汚れていて咳き込んじゃいました、布を顔にも巻き掃除の再開です、天井を済ませたら壁を拭き、椅子やテーブルに落ちたホコリを床に落として床を掃除します、そして最後にテーブルと椅子を拭き終了です。
お掃除メイドシスターさんのおかげで、掛かった時間は1時間です、僕もやれば出来るモノです、疲れないのも良かったのかもですね、それに力も数値よりも心なしか強い気がします、ステータスの数値は低いけど、使い方が的確なのかもです。
やり手シスターさんに戻しつつ、使うコスの正確差も考えた方が良いかもと結論付けました。


「ななな、なんじゃこりゃー!?」


服の汚れをはたいていると、店の奥から驚いた男性の声がしました、怖い顔があるのを覚悟して振り向くと、ジューダスさんに似たムキムキ男性がいたんです。
さすが兄弟ですねっと、僕は頭を下げて自己紹介を始めます、男性は突然すぎて驚いていますね。


「エリナ?そのシスターが何でここにいるんだ、それに店を勝手に掃除したな」

「はい!待ってる間暇だったので、それに疲れて寝てるマスターを起こすのも悪いでしょ?」


マスターは腕を組んで当然だと言ってきたよ、横を向いてふんぞり返ってます、もし僕が起こしていたらボコボコにしてやったとか、腕の筋肉をピクピクさせてきます、やっぱりと僕は思いつつジューダスさんの件を話しました。


「なるほどな、食器はありがたく使わせてもらう、丁度割れちまってな・・・だが!あんたを雇うのは却下だ」

「どうしてですか?せっかくジューダスさんが考えた商売繁盛の作戦ですよ」


このままじゃ雇ってもらえない、腹黒シスターさんはそう判断しました、掃除までしたのにっと泣きそうな仕草をします、マスターはジューダスさんだからダメなんだと、ちょっとうろたえた感じで答えてきました、僕の泣き顔を見てジューダスさんに借りを作りたくないとか、僕は悪くないとブツブツ言ってます。
それなら良いんですねと顔を手で隠して聞きます、マスターはそうだなっと躊躇って答えました、あと少し押せば行けると僕は案を思いつきます。
僕の扱う商品をここで使い繁盛させる作戦です、ビールはここにはないので売れます、おまけに雇っても貰える、酒場には色々な人が来るので王都の情報が沢山手に入る、一石四鳥くらいの作戦です。


「新しい酒?」

「そうですよマスターさん、僕はビールと言う何処にもない新しいお酒を沢山持ってます、今後も入手できるので在庫の心配もありません、それをこの店だけで売ります、僕の考えた事なのでジューダスさんは知りません、どうですか?」

「それならば・・・いやしかし」


凄く迷っています、お店を繁盛させたい気持ちと、結局僕を雇うからジューダスさんに借りを作ってしまうと嫌がってます、僕は更に食器も僕が作ったと伝え、ダメ出しで料理も新作を作れると胸を張りました。
それが良かったのか、マスターはとうとう僕を雇う事を了承しましたよ。


「じゃあよろしくお願いしますねマスターさん・・・ああちなみに、僕は孤児院の夕食を作らないといけないので6時から1時間外出します、それ位良いですよね?」


ニッコリ笑顔で了承を貰おうと質問したら、マスターさんは赤くなって頷いていました、さすが腹黒メイドさん、男性の心を掴むのが上手いよ。
酒場は4時からなので、ウエイトレスの服を貰った僕は、また違うコスが出来るっと、ウキウキして一度孤児院に戻りました。
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