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友とのセカンドステップ

38歩目 人種の襲撃

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「錬金、錬金、窯窯っと」


宿屋の部屋で僕は、錬金の効果音を思い出して鼻歌交じりに作業してます、今回はブドウの種を品種改良しているんですよ。


「やっぱりできた、大型ブドウの木・・・サツマイモがあれだけ大きくなったから出来ると思ってたよ」


錬金窯にはそう言った植物レシピもあります、これはゲームの時に村を救うイベントで使った事のあるアイテムです、それがここでも役に立ちました。


「後はここと同じ地盤の硬い高台を作って敷地を増やして行く、そっちではブドウと森にいるフンムブタを育てれば肥料を作れて土問題も解決だね・・・後の問題は」


今回は詳細が分かっているので簡単です、準備を進めていると、アマンダが僕の部屋に飛び込んできました、ついにきましたよ。


「アユム!外が煙で覆われている、それに村人がそれを吸って寝てしまっているんぞ」

「あらら、そんな手を使ってきたんだね、じゃあ予定変更だよアマンダ、村には入れないで対処しよう」


僕は最初、村人たちと一緒に戦う事を考えていました、武器は既に渡しています、この村の人たちならば、空を飛び遠くから戦えると計画を経てていたんです、でも相手は村人だけに効く睡眠薬を使った様です。


「アタシたちには効かないのはどうしてだ?」

「きっとフクオたちフクロウ種にだけ効く薬なんだ、あのキリングって奴の持っていた薬はそれだったんだよ」


マップにもありましたがキリングは斥候です、村の戦力を調べて攻めて来る予定だったんですよ、僕たちが村の入り口に行くとキリングが門の外に立っていました。


「おやおやお元気そうで、おかしいですね?これを嗅いでも痺れないとは」


キリングが草を持って不思議そうです、僕はその草を森で見た事があります、あれは痺れ草です。


「あいにくと薬を持ってるのはお前だけじゃないよキリング、どうしてこの村を襲おうとしてるんだ!」


僕の質問を聞いてキリングが笑っています、そして良くいうセリフが待っていました。


「俺たちは盗賊だ、物を取るのが仕事なんだよ、それにここは獣人の村だ、襲っても問題にはされないんだよ!」


そんな答えが返ってきて、かなり怒りがこみ上げてきました、それはアマンダも同じで剣を抜いてキリングに向けています。


「それなら、盗賊のお前は討伐されても文句は言わないな、ここで切り捨ててやる!」

「まぁ待て待て、お前たちも知ってるだろ?この近くにはあの憎たらしいワームどもがいる、あいつらのせいでここいら一帯は荒野で作物は育たないんだ、ここは唯一の安全地帯だ、それを獣人の手から取り戻すんだよ」


キリングが当然といった感じで話しています、僕はそれを聞いて呆れてしまいました、キリングはここで作物を育て暮らしたいとか言っています。


「お前はここを調べたんじゃないのか?何も分かってないじゃねぇか、アユム言ってやれ!」

「そうだねアマンダ、ここでは作物は育てられないよキリング」


僕の答えに一瞬動揺しました、僕は更に言います。


「ここで作物を育てたら安全地帯じゃなくなるんだよ、そんな事も知らないんですか」

「な、なんだと!?」

「作物を育てるとね、そこの栄養が無くなります、そうするとこの下に埋まっている物が元気を無くしてしまう、下手をしたら死んじゃうんだ、あなたはそんな事をしようとしているんです」


僕の話を嘘だよ言って聞きません、他人の意見を聞かない大人に良くいるタイプです、自分たちが絶対で他人から奪う事を当然と思っている、ろくでもないですよ。


「どうして仲良くしようって発想をしないんですか?」

「獣人と仲良くだと?お前たちは何を言っている・・・まぁいい、仲間も来たからな」


キリングがため息を付いて後ろを見ています、荒野に見えるのは武器を持った盗賊たちおよそ100人です。


「俺たち荒野の龍がここをいただく、逃げるなら今だぞ」


キリングが名乗りながら盗賊たちの方に歩いて行き、背中にしょっていたリュックから鉈の様な剣を出しました、僕はやれやれって感じでモンスターたちを出して武器を構えます。


「それはこっちのセルフだよキリング、ここは通さない、命が惜しければ逃げなよ、そして二度と来るな」


僕の出したモンスターを見てキリングたちが怯えています、僕の出したモンスターは3つ星のメンバーで、オーガ(鬼ちゃん)とトレント(スギちゃん)と一角タイガー(タイガー)です、戦ったら命はないと言われている者たちです、怯えて当然だと思って待ちました。


「かか、頭!」

「ひるんでるんじゃねぇ!こっちは100人だぞ向こうは3匹じゃねぇか、野郎ども行くぞ!」


キリングが先頭でそんな事を言って走り出そうとしています、僕は切り札のあの子を出しました、出現したとたんにその子が雄叫びを
げてくれます、盗賊たちはしりもちをつきましたよ。


「ああ、アースドラゴン!?ここ、これはダメだ!逃げろぉぉー」

「あっ!?こらお前たち!」


キリングの後ろにいた盗賊たちが一目散に逃げだしました、でもその方向は北です、僕はそれを見て念仏を唱えたくなりましたよ。


「さてキリング、まだやろうってのか?」

「くっ・・・くそー!」


キリングが無駄な抵抗とばかりに、鉈を振り上げ突撃してきました、でも次の瞬間、大きな口が下から出て来てキリングが食べられてしまったんです、僕もアマンダも驚いて見ています。


「あれがドラムワームなのかな?」

「そうじゃないか?フクオが言ってただろ、あいつらは夜行性だって、きっとキリングたちはそれも狙ってたんだ、ここを襲った後は死体の処理に使おうとしてたんじゃないか?」


アマンダが怖い事を言っています、そして遠くでは悲鳴が聞こえました、マップを見てもモンスターが青点に変わった盗賊たちを次々に襲っているようです、僕はそれを見てちょっと辛くなりました。


「アユム、行ってやれ」

「アマンダ・・・ありがとう」


僕は一方的な殺戮は嫌です、いくらあんな人達でもです、僕はアマンダにお礼を言って飛び出しました。


「まずは地盤を作って安全な場所を『ロックブレイク』」


僕は地面を高質化してちょっと高い台を作りました、そして盗賊を襲っているドラムワームたちを蹴り飛ばしたんです。


「お、お前は!?」

「あなた達、急いであそこに登って!」


生き残っている盗賊が僕の声に従い、急いで台の上に乗りました、僕は襲われてる盗賊を抱えて台に乗ります、盗賊たちはどうして助けたのかと不思議そうですね。


「な、何でオイラ達を」

「これは僕の気持ちの問題です、一方的に襲われてる人を見たくない、ただそれだけです」


僕はそれだけ言ってドラムワームたちを見下ろしオーク肉を落とします、ドラムワームたちは肉を食べ満足して土の中に戻っていきました。


「甘ちゃんだな嬢ちゃん、分かってんのか?この後オイラたちはあの村を襲うかもしれないぞ?」

「その時は・・・僕が間違っていたって事です」


盗賊の1人の言葉に、僕はそれしか答えられませんでした。
そう言った人はいるでしょう、僕が助けた事でそんな事が起きるかもしれません、でもそう言った人は目で分かります、この人たちの目はそう言っていませんよ。


「それじゃ僕は行きます、食料を置いていきます、夜明けになったらここを離れてください」


食料の入った袋を置いて僕は急いで村に戻りました、後ろで盗賊が何かを言っていましたが、聞こえませんでしたよ。


「ここ、これはいったい!?」


翌朝、村長さんが門番さんに呼ばれ、外に出て来て驚いています、他の村人たちも同じ感じです、僕はあの後いつものように夜に作業をしていたんですよ。


「皆さん!あそこに見えるのは新しい安全地帯です、ブドウという植物とフンムブタを育てる場所になっています、どうか有効に使ってください」


取れたてのブドウの入ったカゴとフンムブタの横で僕は話しています、みんなどうしてこんな事をしてくれるのかと不思議そうです、僕はある獣人さんの話しをして感謝していることを伝えました、その恩返しに作ったと話すと余計分からないって顔です。


「アユム殿、ワシたちはその者とは面識がないのじゃよ?」

「村長さん、これは僕の気持ちの問題なんです、もしその人たちだったらこうするって思うから僕は実行しました、だから受け取ってください」


僕の強引とも言える理由に、村長さんは少し考え頷いてくれました、そして収穫の仕方や豚の絞め方を教え村を出たんです。


「アユムは商人には向かないな」

「そんな事は無いよアマンダ、これだって先の為の布石だし、貰ったリンゴだって改良するんだ、利益ばかりでウハウハだよ」


お礼に貰ったリンゴは、かなりすっぱかったです、でもアップルパイなどには使えるのでそれも教えました、でも僕は甘いリンゴも欲しいので錬金窯で改良するつもりですよ、そしてブドウとブタはロンゾ村と同じで噂になるでしょう。


「ふぅ~ん・・・まぁそう言う事にしといてやるよ」

「ありがとアマンダ、さぁ寄り道しちゃったけど本線に戻るよ」


こうして僕たちは、最初の目標だったデンタルサーノに向かいました。


「すまなかった」


僕たちが去った後、盗賊の生き残りが村を訪れて村長たちと門の前で話し合っています、村長たちは警戒して僕の渡した武器を構えています、盗賊たちは手を上げて頭を下げています。


「どういう事じゃな?」

「俺たちは間違っていた、あのお方に助けられ心を入れ替えたんだ、ムシの良い話だってのは分かっている、だがオイラ達にはこれくらいしか示せない、これでもダメならどんなことでもする、だから村で働かせてくれ」


盗賊たちが地面に頭を付け謝りだしました、それを見て村長は続けます。


「そうじゃのう~全部を信じるには時間が掛かるじゃろう、じゃから向こうの領地でしばらく暮らし様子を見たいのう、まずはそこから協力するというのはどうかの?」

「ほ、ほんとか!?」

「ホウホウ~じゃが大変じゃぞ、何せこれから色々とせにゃならん、手伝ってくれるのじゃろ?」

「も、もちろんだ!ありがとう」


こうして盗賊たちは隣の村に住むことになりました、そしてそこから交流が深まって行ったんです。
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