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2章 歩み

28話 襲撃者を返り討ち

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「来たわね、アレストまだ待つのかしら?」


キョウコに待つように伝え、襲撃者が宿泊施設のカギを壊し入って来るのを待ちました。
相手はこちらが待っている事も分かってないし、まさか背後を取られ挟み撃ちに合うとも思ってないんだ。


「建物に入ったわよアレスト」
「良し、行くよキョウコ」
「ええ、全員倒してあげるわ」


僕とキョウコが襲撃者の後を追うと、中で15名の覆面の連中が倒れていて、騎士たち5人が余裕の笑顔を見せていた。
声もしなかったから、まだ戦う前と思ったんだけど、どうやら余裕過ぎて圧勝したようでした。


「ご苦労様です」
「アレスト殿、このものたち、本当にあの領地の者ですか?」
「弱すぎましたか?」
「はい、こちらに気づいて襲ってきましたが、3人相手でも余裕に対処できましたよ」


ジェルフィナさんはちょっと物足りない感じで、これなら失敗した事を知って遠くで待機している別動隊も倒していると安心したよ。
その部隊も5人だけど、10人の襲撃者を縛って連れて来てくれた。


「ご苦労だったなエリーズ」
「隊長、全然余裕っすよ、歯ごたえが無くてガッカリしたっす」
「そちらもか、こっちもだから不思議でならないよ」


それだけレベルが上がっているからで、スキルまで上達しているから負ける訳が無かった。
そんな中で、僕の未来予知で先手を取れて待ち構えて力を溜めていたら、相手に勝てる見込みがないのも仕方ない。


「でも、こんなに余裕だとは思わなかったわアレスト」
「キョウコの出番はなかったね」
「本当よ、せっかく夜に起きていたのに、つまらないわ」
「まぁ本番は明日だからね、今日が楽なのは良い事だよ」


そう、襲撃は2回に分かれていて、相手はそれだけ準備していたんだ。
今日は、情報を集めるだけに留め、失敗したと思わせる事こそが相手の狙いで、3人相手でも倒せたのはそのせいです。


「それなら、みんなに教えた方が良いんじゃないの?」
「自信を付けて貰えたし、今はこのままで良いよキョウコ」
「でも、本番で怪我をするかもしれないわよ」
「みんな自信を無くしていたからね」


自信を付けるだけならその可能性はありましたが、それだけではなくとても動きを良くする効果が出てくれて、明日の正面衝突では相手が恐怖する程の勢いを持つんだ。
その時には、キョウコは馬車を守る役目だけど、氷漬けになる敵兵士が出ないわけじゃない。


「みんな、明日は500人が相手だからね、今日は良く休んでおくんだよ」
「分かっているよアレスト殿」
「楽しみっすねぇ~」


騎士たちは、昨日説明した時とは真逆でやる気になってくれて、これなら勝てると未来予知をした結果に安心しました。
ゆっくり休み、朝食の時間にミイシャル様に説明して、返り討ちにした事を報告したんだ。


「良かったわ、みんな無事なのね」
「はい、相手が弱くて少しがっかりしています」
「でも、本番は今日のお昼なのよね?」


ミイシャル様は、僕に視線を向けて来たので、頷いて作戦通りに動くように伝えます。
危険が無いわけではないけど、馬車の窓から見ているように伝え、相手の動きよりもジェルフィナさんたちの活躍を見る様に伝えたんだ。


「ジェルフィナたちを見るの?」
「はい、それは隣の領地がまだあきらめないからで、村に襲撃してくる時に指示を出せる様になってもらいたいからです」
「そ、そうなのね」


そんな先まで考えているのかと、ミイシャル様は驚いてきますが、それだけではなく戦争時の指示出しも入っていました。
朝食から重い話ばかりだったけど、これから500人との戦いなので仕方ないと、無言のままで終わらせ出発したんです。


「あそこの丘よねアレスト」
「そうだよキョウコ、そろそろ姿を見せるかな」


僕の言葉通り、その集団が横の丘から現れたので、馬車の周りに集まり相手の出方を待ちました。
馬に乗った騎士風の男が名乗りを上げ、あの村の半分は自分たちの領地だと主張してきたんだ。


「山の頂上付近をすべてだったから分からないでもないけど、確か向こうってもう一つ先の山にも村は無いわよね」
「そうだねキョウコ、村同士の中間という決まりを破って来てるね」


国同士の決まりで、領地の線引きはそうなっていて、ミイシャル様もそう言って撤退する様に伝えたよ。
でも、向こうは数で押し切る気でいるので、交渉の決裂を早々と宣言して剣を抜いたよ。


「さぁキョウコ、始まるよ」
「ええ、やってやるわよ」
「任せたよキョウコ」


ミイシャル様が生き残る為にはキョウコの守りが要で、僕たち11人は500人に向かって突撃しました。
圧倒的な数の差ですが、少ないから分散して撃破することが出来、相手は僕たちを見失っている兵士だらけです。


「これじゃ、ただの的だね」


どんどん倒していき、一人50くらいの割り当てなのに、30分も掛からずに倒してしまった。
その間、馬車の方にも数名が馬で走って行ったけど、氷漬けになって倒されていたよ。


「ひ、ひぃ~」
「おいおい、大将が怯えてるっすよ」
「お前それでも騎士か?」
「いいい、命だけは」


僕が敵本陣に到着すると、怯える敵大将が馬から落ちて腰を抜かしていて、ジェルフィナさんたちに囲まれていた。
勘違いしているけど、僕たちは命を取るまでには至ってなくて、すべて気絶させていた。


「安心しろよ、命は取らない」
「ほ、本当か!」
「ああ、その代わり奴隷として働いてもらうんだよ」
「そ、そんな」


僕たちには労働力がどうしても必要で、500人はとても魅力的でした。
僕が遅れて到着したのも、兵士に奴隷紋を貼り付けていたからで、敵の隊長で最後です。


「さぁさぁ隊長さん、あなたも村の為に頑張ってくださいねぇ」
「わ、我に手を出して良いと思っているのか!領主様が」
「ああはいはい、北の領主バザルトル子爵様ね、その人ならあなたが死のうが生きようが、こちらに言いがかりを言って来るから安心して」
「な、何を言っている貴様」


ペタリと奴隷紋を隊長さんの首に貼り付け、僕は次の為の準備なんてとうに終わっていると言ってやりました。
相手は何手も準備をしていて、だからこそ力づくで来たんだけど、今回の失敗を切っ掛けに言いがかりを良いに来ます。


「でもね、それはこちらの罠なんだ、全部奪おうというなら、僕が引導を渡してあげる」


その準備は、敵兵士をすべて奴隷にしたことで完了し、僕たちは街に向かいました。
そして、報告をしてミイシャル様のお母様に手紙を送り、隣の領主との会談を持ち掛ける様に知らせたんだ。


「ほ、本当にこれでよかったの?」
「はい、これで人材不足はすべて解決です」


ギルドからも新人の職員を派遣してもらえる話も付き、僕たちは大手を振って村に戻りました。
そして、それから2カ月後に領主同士の会談が行われ、僕たちはそれに参加したんだよ。
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