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2章 歩み

31話 領主会議

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北の領主バザルトル子爵は、わざわざ統率者のリオル伯爵様を連れて、ロッテン子爵家の屋敷がある街に殴りこんできました。
僕やミイシャル様がいる事に疑問も持たず、敵地に入ってきても気にしないで、応接室での話し合いが始まったよ。


「後ろの護衛、全部伯爵様の騎士じゃない」
「ミイシャル様、相手は被害者と思っているんです、自分の兵は連れてきませんよ」
「そうかもしれないけど、間抜けにも程があるわ」


ミイシャル様と領主様の後ろに立って話を聞いている僕たちは、500人の兵を奪われたと言う向こうの言い分を聞いて、怒りよりも笑いが零れたんだ。
500人の兵士は、確かにこちらの奴隷になったのだけど、それはほんの少しの間だけで、今では家族を領地から呼んで普通に暮らしているんだ。


「彼らは望んでこちらにいますが、おかしいわね」
「そ、そんなはずはない、ワシの兵を返せ」
「そう言われましても、最初に襲撃してきたのはそちらですわよね?」


襲撃して来た者を捕まえたのは、こちらではしっかりと調査をして証拠も残していて、それは伯爵様にも知らせてありました。
そんな中で、その伯爵に泣きついているから、僕たちは笑ってしまったんだ。


「それに、そちらは村を拡張させ、ワシの領地を奪い始めている、それはどう説明するのじゃ」
「あら?ワタクシとあなたの領地の間には他の種族がいるでしょう、村を大きくしても領土は変わらないわよ」
「他の種族がいるからこそ変わるのだ、村を大きくしてそいつらを奪う気だろう」


奪うと言うけれど、そもそも他種族の領地は統治管理をしてないので、それこそ言いがかりとミイシャル様の母上様が反論したら、自分は統治しているとか嘘を言ってきた。
言い返さないのを良い事に、自分が統治しているのだから領土は自分のモノで、統治者として責任から逃げているとか言って来て、村の半分を寄越せと要求してきたんだ。


「こんな奴に大切な収入源のあるダンジョンを任せてはおけません、伯爵様そうですよね」
「ふむ、確かに統治していないのであればそうだが、ロッテン子爵はしっかりと利益を報告しているぞ」
「ワシならその2倍、いや3倍は稼いで見せます」
「ほう、この数値の3倍か?」


情報もないのに、勝った気になっていたバザルトル子爵は、伯爵様に渡したこちらの資料を見て焦りだしたよ。
それもそのはず、既にギルドは稼働し利益は街と言っても良いほどの金額をたたき出していたんだ。


「バザルトル、そなたはこれの3倍と言うが、本当に出来るのかな?」
「そ、それは勿論」
「本当だろうな、嘘だったら問題だぞ」
「そ、それは・・・村の半分ですので、足を引っ張る者がいるのから難しいかと」


こちらが協力しないとか遠回しに言って来て、責任を押し付ける感じになりました。
でも、それこそこちらの思うつぼで、足を引っ張るのはそっちだろうとロッテン様が攻撃を仕掛けたんだ。


「な、なんだと貴様」
「だってそうでしょう、あなたの領地に向かう道もなければ、統治していると言った他種族との街道もない、どう考えても時間が掛かって足を引っ張るのはそっちよ」
「そ、そんな物作れば良いだろう」
「だから、それが足を引っ張ると言ってるのよ」


何年かけるつもりだと攻撃したら、バザルトルは日数を出せなかった。
それもそのはず、彼にそんな計画を立てる技量はなく、下で働く人たちの書類にサインしているだけの存在だったんだ。


「あらあら、計画も立ててない人が統治なんてできるのかしら?」
「な、何を言うか!貴様だって予定など出せないだろう」
「一緒にしないでほしいわね」


それが出来たから、村が既に大きくなり利益を得ていて、領主代行を置いて力を注いだとトドメとばかりに言い切ったよ。
証拠は利益にしっかりと出ていて、これで勝ちは確定です。


「それに、他種族を統治していると言いましたけど、ちゃんと話はつけているのかしら?」
「あああ、当り前だろう」
「あらそう?だったらその証拠を見せて貰えるかしら」
「そ、それは!」


あるわけもなく、この後攻め落とす予定だったから、逆にこちらにも無いだろうとか言ってきたんだ。
やってはいけない返しに、ミイシャル様のお母様は僕に視線を向けて来て、あの書類を僕は渡したんだ。


「伯爵様、これを見て貰えますか」
「これは?」
「彼が言っていた他種族と友好関係を持っている証拠でございます」
「なっ!」
「ふむ、確かにエルフや獣人の文字だな」


こちらは、統治ではなく友好関係を築いていたから先ほどの説明になり、今後は道も伸ばしもっと利益を出せると伯爵様に宣言したんだ。
それこそ、バザルトルが無理と言った3倍も可能で、その為の準備をしていたことは素晴らしいと、伯爵様に褒められたんだよ。


「ありがとうございます」
「ふむ、これなら統治はロッテン家に任せるのが良いな」
「おおお、お待ちください伯爵様」
「バザルトル、お前は出来るだけ支援をするのだ、そうすれば私に嘘を言ったことは不問にしてやる」


何もかも分かっていたんだぞっと、遠回しに言ってきた伯爵様に対し、バザルトルは何も言えなくなりました。
でも、それで終わればよかったのに、あの村を掛けて決闘とか言ってしまったんだ。


「バザルトル、お前正気か?」
「勿論です伯爵様、これは貴族として正式に宣言します」
「そうか、では挑戦を受ける側に決闘方法を選ぶ権利を与える」


勝者は、なんでも1つ要求できる権利が貰え、それを敗者は拒むことが出来ないと伯爵様は説明しました。
そして、ミイシャル様の母上様は、代表者1名ずつによる決闘が決まったんだ。


「こちらからは、元冒険者のアレストさんを指名しますわ」
「ほう、そなたか・・・ふっふっふ、ではこちらは元勇者を出そうではないか」


バザルトルは、なんとドスモスが代表とか言って来て、僕たちは驚いた顔を演技で見せました。
そもそも、こちらの情報が流れたのは、ドスモスがエレミナと別れたのが原因で、情報を流して取り入ったんだ。


「双方それで構わないな」
「勿論ですとも、そうだよなロッテン」
「ええ、こちらもそれで良いですわよ」
「なっ!本気か?」


当然でしょうと、お母上様どや顔を見せた後、勝利者になった時の要求を伯爵様が聞いて来ました。
バザルトルは村の取得だったけど、こちらの要求はバザルトル領地の取得で、さすがにすべてを奪われると思って止めてきたよ。


「あらあら、先に決闘を突きつけたのに、取り下げるのですかしら?」
「そ、そうではない、1度の決闘で領地全てを奪われるのは割に合わないと言っているんだ」
「これから利益が沢山得られる場所ですわよ、あなたの領地全てでも足りません」
「な、なんだと!」


ふざけるなっとバザルトルがテーブルを叩いて叫び、どうせだから爵位も貰うと更なる要求をしたんだ。
そこまで言われて断れなくなったのか、バザルトルは決闘の要求を呑んで絶対に引けなくなり、書面に伯爵様の目の前でサインをしました。


「よし、では決闘は明日行う事にする、代表はここにいるなバザルトル」
「勿論です」


こうして戦いの日取りが決まり、街の闘技場で僕とドスモスが戦う事になりました。
ミイシャル様は僕が勝てるのか心配してきたけど、正直余裕なので早く帰りたいと思っていた。


「ドスモスは、エレミナと一緒に田舎に戻ればよかったのに、バザルトルに処刑されるのが確定したね」


国の処刑ではなくなったけど、これで本当に元勇者PTは終わってしまった。
事後処理と基盤が出来上がる最後の大仕事が明日終了すると僕の頭の中で完結し、新たに始まる領地経営と勇者育成にちょっとワクワクしていたんだ。
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