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4章陰で

66話 アックスハント2

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「ほらそこ、勝手に出るなっての」


アックスだ、俺たちは今、36階で発見された新しい村に向かっている、そして今回も俺たちの目を盗んで外に出る輩が入っている、死にたいのかまったく。


「やれやれだなまったく」


だが今回はまだましだ、今回は南の領地から来た商人だけで人数が少ない、どうしてか東は今回参加していないんだ、まあ国が違うから何かあったんだろう、そしてもう一つ違う事がある。

26階にいた商人の奴隷だったガキたちが入っているんだ、打ち合わせの時に何故かコルル村にいて驚いたぞ。

そいつらが俺たちの補佐をしてくれているんだ、もちろん最初は反対だったぞ、ガキを護衛に参加させるなんてな、だがどこかの偉い奴からの要望らしく断れなかったそうだ。


「ほらそこの人、早く馬車に入ってください」


「こらこらそこのおっちゃん、歩くの遅くなってるぞ疲れたなら馬車に乗れよ、変なところに行くなよな、みんなの迷惑だぞ」


っとこんなふうに、俺たち以上に目を光らせてくれている、なかなか使えるガキどもだった。

その他の護衛は前のPTと新人の2PTで構成されていて、前のPTは少し人数が増えてる所もあった、俺たちもだがな。

新人のPTは2つとも魔族と獣人と獣種で構成されていたな、強さはかなりのものだった。

最近噂になってるアイアンの2チームだ、他にも結構いるらしいが会わないから分からん。


「冒険者の兄ちゃん、交代だってさ、はいお茶」


「おお、サンキュー」


俺の仲間にも伝えに行っている、ほんとによく働くガキたちだな。


「おおアックス来たか、タオツィを何とかして欲しいぞい」


馬車に入るとアトキンスに言われた。


「またか!・・・気持ちは分かるがな」


そう、タオツィがファルファロと付き合い初めてそろそろ一か月が経つ、まあ要は熱がまだ冷めていないんだ、戦闘中は平気なんだが、休憩をするとファルファロの話を永遠としてくるんだ。



「あ!?アックスさん!聞いてくださいアトキンスがひどいんです、別れろとか言うんですよ」


「おぬしがいけないのじゃ、休憩中ずっとはこちらもきついのじゃ」


嬉しいのは分かるんだがなアトキンスの気持ちも分かる、ずっとはこっちもきついぞ、だがそれを直に言っても分からんだろうな、ここは変えて注意するか。


「アトキンスの気持ちもわかってやれタオツィ、それに俺は心配だぞ、戦闘中も考えてるんじゃないかってな」


「う!それは・・・まぁすみません」


分ってくれたようだ、静かになったので俺は違う事を話した。


「そう言えばあのガキども、なかなかいい仕事するな」


「そうガウね、さっきも外に行った商人を教えてくれたガウ」


グリューナクが褒めている、こいつは鼻が利くが耳はそれほど良くないからな、報告してくれるのなら助かるな。

おまけに飲み物や食い物をくれるんだ、一体どんな奴に雇われたんだかな。

西の商人でないことは確かだ、あそこの商人はがめつくて有名だ、報酬を値切らなかった事が無いとかよく聞いたな。


「最初は反対だったが、あれだけきちんとしていれば話は別だ、それに見てたかダブルガンム?」


「ああ、なかなかの逃げ足だったな」


一度遠くに商人が行ってしまった時があって別れて探したんだ、他のPTが見つけ商人を担いできた。

その時、ガキが鳥のモンスターに攻撃をされそうになって、誰かが叫んだらそれを咄嗟に躱したんだ。

事前に知らせたといっても、そうそう出来る事ではない、おそらくその依頼人に訓練をしてもらっているのだろう。

それを踏まえても相当な費用が掛かっていることが分かる、まあこのダンジョンの重要性を上の誰かがそれだけ買っているって事だな、俺たちにも投資してくれんかな。


「将来が楽しみな子たちだね、僕とファルファロの子もきっと優秀だよ」


俺がそんなことを考えていたらタオツィが言ってきた、まあみんなも嫌がっていないし、良いだろう。


「そうガウ?タオツィは後衛ガウ、魔法を教えるといいガウよ」


確かにファルファロがどっちかは知らんがタオツィは確実に魔法士の素質がある、子供なら色濃く出た方を優先するべきだろう、まあ気が早い話だがな。


「その前に告白と家じゃろう、もう決めたと言っておったがこの村なんじゃろ?」


「ええ決めただけですけどね、まだファルファロにも言ってません、でもきっと気に入ってくれますよ」


嬉しそうにタオツィが言ってると考え込んでいるダブルガンムの顔が目に入った、最近こいつは良くしゃべるし、話に入ってくるんだ、グリューナクなんて撫でられながら話をしている時がある、すっげぇ尻尾を振っていたな。

それなのに珍しく黙っている、何か心配事か?


「どうしたダブルガンム、急に黙って何かあったか?」


「いや・・・タオツィ、家の事はまだファルファロに言わない方がいいぞ、今は時期が悪い、別れたくなければ言うな」


「え!?ど、どうしてそう思うの」


俺も驚いて聞きそうになったぞ、どうしてそんなことが分かるんだこいつは。


「そろそろ付き合い初めて一か月だろ、まずはそこでプレゼントをあげておけ、付き合い始めて一か月の記念日としてな」


「う、うん」


ダブルガンムが言うには相手の熱が冷める時期らしい、まぁタオツィがそうでなくとも向こうはわからんからな。


「家の話をしたら結婚って事になるだろ?その場合重く感じて躊躇うぞ、まだ一か月なんだ、まずは一緒に暮らせるところを借りたらどうだ?」


「なるほどーそれもいいかも、話してみるよプレゼントを渡してさ」


確かに、向こうの熱が冷めてて冷静になった所に、住む家を決めたと言えばちょっとためらうかもしれんな。

まだ一か月だ、深く知らない者同士ならなおさらだな、タオツィが急ぎ過ぎたって事だな。


「そうするといい、だが暮らすのを向こうが拒んでも必要以上に説得しようとするなよ、嫌がられる」


「え!?そ、そうかな~僕は一緒に住みたいけど」


まぁタオツィはそうだろう、今でもあれだけファルファロの事を言ってくるからな。


「まあ状況にもよるさ、まだ一か月だ、隠していたいこともあるかもしれんだろう、少しずつでいいのさ」


「う、うん」


「だがな付き合っているからって告白はしろよ!まだなんだろ?」


俺たちはタオツィの顔を見たが赤くして下を向いていた、タオツィの話では食事に誘ったら了承を貰い、送った時にプレゼントを渡した流れでって感じらしい、だから告白はしてないと言っていた、まあ言葉にするのは恥ずかしいんもんだよな。


「言葉にするのは大切だぞタオツィ」


俺がそう思っているとダブルガンムがそう言ってきた、う!?そうか言葉にしないと伝わらんか。


「それとな一番の注意だ!プレゼントは同じ物を送るな」


「え!そうなの?前の香水を気に入ってたから、また送ろうと思ってたんだけど」


タオツィがそう返している、気に入っているんだ同じ物でも良いと俺も思う。


「タオツィ、特別なプレゼントなんだぞ、同じ物を送ってどうする」


「た、確かに」


タオツィが頷き何故か俺も頷いていた、そして横で聞いていたアトキンスとグリューナクもだ。

特別な物を送る時は同じ物ではダメなんだな、ダブルガンムが詳しく教えてくれた、日常的に送るならばよく使う物を送ると良いそうだ。

そしてそれは非常に難しいとも言ってきたな。


「記念日を一緒に済ませるのもしない方が良い、タオツィの場合は一緒に住むのと一か月付き合ったのだな」


その後、交代までダブルガンムの講座のような話を俺たちは聞いた、あまり高級な物にするなとか、相手と話した時に話題に出た物を送るとか、デートに行った際、相手がチラッと見た物を覚えておくとかだそうだ。


「はぁ~とても勉強になったよ、ありがとうダブルガンム」


「ああ、頑張れよタオツィ」


最近こいつはホントに人族なのかと思う時がある、精霊種で歳をごまかしてるんじゃないのか?

どうしてそんな女みたいな少年の顔なのに、俺よりも経験豊富そうなことを言えるんだ。



「フム、26階と作りが一緒じゃな」


それから何度かの交代と野営をして、やっと村に着いた。


「そうガウね」


「これでやっとファルファロに会えます」


「ドロップ品もかなり出たな、報酬もたんまりだ」


商人が家の選別を始めた、これで俺たちの遠征は無事終わった、ダンジョンを出てコルル村に数日滞在し、ヴェルンのギルマスに報告した、前もそうだったが報酬がかなり良かったな。



ちなみにコルル村滞在中、タオツィがファルファロと暮らすことになったと言ってきた、すげぇ嬉しそうだったな。

そしてなんと!?アトキンスにも彼女が出来た、ヴェルンに戻った時に告白したらしい、レレという小人族で冒険者ギルドで働いているそうだ・・・まさか講座のおかげか?
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