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深い眠りの後

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どのくらいこの男の寝顔を見ていただろうか。そんな事を考えていたミリア。ウィルフレッドは少し前に起きて、今度はレティシアを膝の上に乗せている。次はあれをしたいなんて言い出す前にやめてくれないかなどと思っていた。


「・・・ん・・・」


膝の上に頭を乗せて眠っていたアイオロスが目を覚ましたようだ。


「起きられましたか?」

「ん?・・・天使がいる・・・」


アイオロスが寝ぼけ眼でぼーっとしながら見上げてくる。


「何をおっしゃってるんです。団長様はもう起きられてますよ」

「えっ!?はっ、本気で眠ってしまっていました!重かったでしょう、すみません!」


アイオロスは慌てて身体を起こす。


「よく眠れたみたいだな」


声がした方を振り返ると、向かいのソファでレティシアを膝に乗せてご満悦なウィルフレッドがいた。


「はい・・・、自分でも信じられないぐらいにぐっすりと・・・」

「俺も最初は驚いたさ。普段は近衛として常に気を張り巡らせている。火急の呼び出しだってあったりするものだからいつもは眠りが浅いんだ。だが、シアの膝で眠るとなぁ・・・何故だかぐっすり眠ってしまう。あたたかさと柔らかな感触に安堵しているんだろうな」

「よくわかります」

「それにいい匂いもする」

「確かによくわかります」


アイオロスのその言葉にミリアがビクッと反応する。


「ミリィ?」

「に、匂いって・・・私匂ってます?」

「悪い意味ではないですよ?いい匂いがします。女性とはこんなにもいい匂いがするのかと、つい・・・邪な気持ちを抱えてしまいます」

「・・・」


ミリアの心境は複雑だった。自分に自信がない為に、いつアイオロスが気が変わってしまうかと内心ヒヤヒヤしているのである。自分より綺麗な女性はたくさんといると言えば可愛らしい人が好きという。可愛い女性だって自分よりたくさんいると言えば、可愛いと思うのは貴女だけと答える。それでもミリアは不安なのだ。ドキドキしたり、愛おしく思ったり、その感情がいつ自分に向けられなくなってしまうか不安でたまらない。そんなミリアの表情を読み取ったのか、アイオロスが言葉を続ける。


「でも、誰だっていいってわけではありませんよ?ミリィにだけです。ミリィでないとダメですから」


そう言ってくれたアイオロスの言葉に、ミリアの心はほんわりとあたたかくなる。ふわふわとした気持ちで宙に浮いているような錯覚を覚えた。だが、錯覚ではなかった。実際宙に浮いている。そして着地した。





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