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ウィルフレッドのため息
しおりを挟む「はぁ・・・」
今日も今日とてウィルフレッドは盛大なため息をついている。
「団長、どうなされましたか?」
最近は教育と引き継ぎのためだと言って、午後はアイオロスは常にウィルフレッドと行動を共にしている。騎士団の団長執務室で、椅子にもたれかかりウィルフレッドは天井を仰いだままため息をばかりついている。
「・・・なぁ・・・」
「はい、なんでしょう」
「俺はどうすればいいんだ」
「何かお悩みなんですか?」
「あぁ・・・」
「昨日の国王陛下とに話で何かありましたか?」
「いや、それは事実と決定のすり合わせだ。特に新たな事は何もなかった」
「ではどうしたんです?」
「なぁ、目の前に愛しい妻がいて、触れる事だってできる。だが、できないんだ」
アイオロスは困惑する。昨日もあれだけ目の前でベタベタとしていたところを見たと言うのに、あれのどこが触れる事ができないと言っているのか。不思議の何ものでもない。
「団長、何をおっしゃいますか。毎日隙あらば触れておられるでしょう。毎晩抱きしめて眠っていると自慢しているではありませんか?」
「寝てはいる。抱きしめもする。キスもする。だが・・・その先ができない」
「・・・先?・・・団長、まさか」
アイオロスは一瞬言葉を詰まらせる。だが意を決して言葉を続けた。
「不能なのですか?」
「はぁっ?」
「閨ができないとおっしゃってるんでしょう?」
「俺は不能なんかじゃない。シアを抱きしめるたび、触れるたび、そこにシアがいると言うだけで反応したりするぐらいだ。これのどこが不能なんだ」
「では何故に触れられないなどとおっしゃってるのです?俺とミリィはまだ婚約者ですから節度は考えないといけませんが、お二人は夫婦になっているではありませんか・・・まさか、奥様が美しすぎて触れるのを躊躇っている・・・自分で穢してはいけないなどとお考えで?」
「・・・穢す・・・か」
「まさかそんな理由ですか?」
「一理あるがそうではないんだ。俺とシアは・・・」
その後ウィルフレッドは、結婚式が事件で取りやめになった事、やり直しをしたくともできなかった事、大それた事が起き混乱の中結婚式なんてできなかった事を思いのまま話していった。さまざまな事がわだかまりとして残り、未だにこの結婚を完全に祝福されていないような気さえしているのだと。アイオロスはウィルフレッドを気の毒に思いながら、心中お察ししますと言いながらも、何を考え込んでいるんだろう、目の前に愛してやまない相手がいるのに何故我慢などしていられるのだろうか、騎士団長とは並の精神では務まらないのかと間違った感想も抱いていた。
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