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三人の男達
しおりを挟む私情の事で苦笑いしていたウィルフレッドを不思議そうに見ていたアイオロスだったが、報告内容があったのだと思い出す。
「団長、先程コルテオ様から通信がありまして」
「ん?内容は?」
「はい、レイバン様がイズヴァンドの地へと移られたそうです」
「・・・そうか・・・あの地を見て、レイバンはどう思うのだろうな」
ウィルフレッドは荒れた土地に、たった数人の民。イズヴァンドの地の現状を思い出していた。
「レイバンはどの様な様子だったか言っていたか?」
「はい、少し緊張しているようだと」
「そうか・・・ふっ、大丈夫だ。彼の地には、レイバンのたった一人残っている本物の家族がいる。レイバンの事をずっと気にかけ、帰りを待ち望んでいるんだ。何の心配もいらないさ」
ウィルフレッドは柔らかな笑みを浮かべると、アイオロスに向き直る。
「コルテオは研究の拠点地を北の辺境領に移したにすぎないが、何か不便がないかは言っていなかったか?」
「それに関しては何もおっしゃっておりませんでした」
「そうか。マクシミリオンは?」
「それは・・・」
アイオロスが、マクシミリオンの名が出た途端、言いづらそうに言葉を詰まらせる。
「どうした?」
「コルテオ様の見立てでは、エルサ嬢に一目惚れした様だと」
「はぁ?」
「随分と熱っぽい目で見ているようですよ?でも、あちらの副騎士団長が牽制しているように見えるのだとか」
「くくっ、あいつか・・・」
ウィルフレッドはいつしかの男の姿を思い出していた。北の辺境伯領で副騎士団長を務めるソルディオ。辺境伯の令嬢であるエルサに恋をしているが、中々進展はないようで、苦戦している。それもそのはず、エルサ自身がソルディオをそういう相手として見ていないのだ。
「どっちにしても、エルサ嬢に手を出せば、今度は命の保障はないぞ?陛下があれだけ執着するんだ。無理もない。唯一血の繋がった娘のような存在だからな」
「そうですね。その為にコルテオ様を監視役としてつけられたようですし」
「あぁ、ああ見えて、コルテオも一応は騎士だ。それに、皆は知らないが、コルテオは、本当は俺より剣の腕が立つ。まぁ、今となってはあまり剣を振ることはできないが」
「どういう事ですか?」
「コルテオは運動音痴や剣の腕がないのではない。剣が・・・振れなくなってしまっただけなんだよ」
そう語るウィルフレッドの顔はどこか寂しそうな表情をしていた。コルテオに一体何があったのか。今となってはほとんどの者が知らない事実。ウィルフレッドの口から続きが語られることはなかった。
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次回からは北の辺境へと旅立った三人の視点、北の辺境領での話が進みます。レイバンの心境、コルテオの覚悟とマクシミリオンの一目惚れ。そして新たな恋が動き出す。三人の今後をお楽しみに。
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