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26、熊さんからのプレゼント
しおりを挟む翌朝目が覚めたら、またリシェリアを抱きしめていた。朝から心臓に悪いと思いながらも、アリエルは幸せいっぱいだった。
朝食を済ませると、出掛ける準備をするとフローラがリシェリアを連れて行った。アリエルは玄関で待つ。
「団長様、お待たせしました!」
階段から降りて来たリシェリアは、膝下丈の紫色の生地に、白いレースの襟がついたワンピースを着ていた。アリエルはその姿を見て固まっていた。
「あの・・・団長様?変でしょうか?」
「あ、いや、変じゃない!似合ってる!」
褒めた方も、褒められた方も赤面し沈黙してしまった。
「旦那様、ここで一日中過ごすつもりですか?早く出ないと時間が勿体無いですよ?」
「あ、あぁ・・・リシェリア嬢行こう」
「はい」
二人は馬車に乗り込み屋敷を出た。狭い空間に二人きりという環境に、最初こそぎこちなかったが、次第に行きたいところの話などに盛り上がった。街に着き、まずは散策をしながらいろんな店を見て回る。
「団長様、もしかして恋人できたのかい?可愛いお嬢さんじゃないか!」
「あ、いや、違う。彼女はお預かりしているお嬢さんだ」
パン屋の店主が話しかけてきた。
「おっ騎士団長!とうとう結婚かい?ずいぶんと若い嫁さん貰うんだねぇ」
「いや、違うんだ。期待に応えられなくてすまんな・・・」
次は野菜や果物を扱うお店の店主が話しかけてくる。
「団長さん!これ持っていきな!おや?もしかして婚約者でもできたのかい?」
「すまない・・・いや、違うんだ・・・お預かりしてるお嬢さんで街案内をしている」
少し進むと、恰幅のいいおばさんがアリエルに果物を渡してきた。街で働く領民から至る所でアリエルは声をかけられる。
「団長様、大人気ですね」
「いや、人気かどうかはわからんが、この街のみんなは活気があるな。この生活を守らなくてはいけないといつも思うのだ」
領民を大事にしているアリエルを素敵だと思った。
「いつも団長様に守られ、民の事を思っている事が伝わっているんですよ。それはきっと、団長様だからできた事です。皆さんは団長様を頼りにされているのですね」
リシェリアはにっこりと笑った。アリエルは、当たり前だと思っていた事を褒めて貰えるとは思ってもみなかった。自分だからできた事と言われ、心が温かくなった。そんな時、アクセサリーや雑貨を扱うかわいらしいお店の前で、リシェリアの視線が一瞬止まった事にアリエルは気付く。
「何か、気になるものがあったか?」
「あ、いえ、大丈夫です」
「男一人ではこんな店に入らんからな。せっかくだ寄って行こう」
アリエルは、そっとリシェリアの手をとって店内に入った。先程リシェリアが、チラッと見たアクセサリーにアリエルは気がついていた。
「店主、あれをくれるか?」
「団長様!あら、彼女さんにプレゼントですか?お可愛らしいお嬢さんに似合いますよ!つけていかれますか?」
「あぁ、頼む」
「えっ、団長様?
「俺からのプレゼントだ、受けとってくれ」
「いいんですか?ありがとうございます!」
アリエルはリシェリアの耳に、小さな白い貝殻のイヤリングをそっとつけた。
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次回
【アリエルside】
お前は俺が欲しいと思う言葉を、こんなにも簡単にくれるのだな・・・
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