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29、何故こんなところに
しおりを挟む辺境領に、家紋の付いていない馬車が一台着いた。乗っていたのは、この国の第一王子アイスフォード。
「リシェリア・・・どこにいるんだ・・・」
リシェリアが姿を消してから、元々第二王子の婚約者であった、アイリス・ナッティルド公爵令嬢が、アイスフォードの婚約者におさまった。何かとすり寄ってくるアイリスが気持ち悪く、嫌悪感を感じていた。こちらに対する気遣いなど感じられず、嫌気がさし限界を感じていた。
アイスフォードは、心のどこかでリシェリアに会えばきっと、順調だった時の関係に戻れると考えていた。リシェリアさえ自身の元に戻れば・・・その一心で、あの日からずっと行方を探していた。国中を探し回り、王都から一番遠い辺境で最後。
望みも薄かったが、街を探し回っていると、見覚えのある金の髪が目に入った。辺境の地では、金の髪は珍しい。すぐリシェリアだと気付いたが、使用人の連れがいたため、一旦は様子を見る事にした。
(リシェリアはどこかの貴族の家に滞在しているのか?それとも・・・ブルスト侯爵が知らぬ存ぜぬで、どこかに匿っているのだろうか?)
アイスフォードは、見つからないようにローブのフードを目深にかぶり、二人の後をつけていった。着いた先は辺境伯邸だった。
「まさか・・・こんなところに匿われているとは・・・厄介だな。しかし、居場所はわかった。機を見て動くとするか・・・」
リシェリアが一人になるであろう時を狙っていた。翌日、少し離れたところから屋敷の様子を見ていると、庭にリシェリアが出てきた。メイドらしき人物と一緒だったが、メイドが屋敷に戻り、リシェリアが一人になった。アイスフォードはこの機を見逃さなかった。庭に一人になったリシェリアの元に走ると腕を掴んだ。
「きゃぁっ!!離してください!!」
アイスフォードは何も言わずそのまま腕を引いたまま走った。止めてあった馬車にリシェリアを押し込んで屋敷を出た。
「だ、誰なんです・・・なぜこんなことを・・・」
「リシェリア・・・」
「その声・・・アイスフォード殿下・・・」
「覚えててくれたんだね。乱暴な真似をしてすまない・・・探したよ。君と話がしたい」
アイスフォードはかぶっていたフードを脱ぐと、リシェリアの瞳をじっと見つめた。
「今更・・・何の話でしょうか・・・」
「そんな突き放さないでくれ・・・私は君を愛している。またやり直そう。婚約を結び直したいんだ」
「殿下の口から愛しているなどと聞きたくありません」
「なぜそんな事を言うんだ・・・前は想いあっていたじゃないか!」
「確かにそのような時もありました。しかし、あの時私を拒絶したのは殿下です。あの時の事は一生忘れる事は・・・できません」
「あの時は私も混乱していたんだ・・・」
「混乱していたからと言って、愛は変わるでしょうか?本当に愛していたなら・・・あの時置き去りになんてされなかったと思いますわ。あの時に支えになってくだされば!!」
リシェリアはアイスフォードとの口論の最中に、隙を見て大事なイヤリングの片方を窓から落とした。
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次回
【リシェリアside】
アル様、早く来て!見つけて!
全てを話して、受け入れてくださるなら
応援ありがとうございます!
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