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35、優しい手のぬくもり
しおりを挟む恋をしたのも、愛したのもアリエルたった一人というリシェリアは、アイスフォードに対して生まれた感情は、長年一緒にいたことによる情だけだと言った。リシェリアの言葉に最後の望みも絶たれたアイスフォードは、力なくソファに沈んだ。
「アル様のこの大きな手はとても優しいのです」
リシェリアはアリエルの手をとって触れている。
「私の初恋の騎士様がアル様だとは思いもしませんでしたが、何年会っていなくても、触れた優しさは、抱きしめられたぬくもりは忘れないのですね。だからアル様は触れられても怖くなかったという事なのでしょう。馬車から救い出して抱きしめられた手がとてもあたたかかった。殿下が拒絶をしたあの日、私は心が凍ってしまいましたわ。男性が怖くなってしまい、もう誰の手を取ることも、触れられる事さえ怖いのです。もう、殿下の手を取ることはありません。このあたたかさを、ぬくもりを知ってしまった以上、元には戻れません」
「アイスフォード・・・リシェはな、いつも俺が欲しい言葉をくれる」
アリエルはリシェリアの瞳を見ると、優しく頭を撫でる。
「リシェほど俺を理解してくれた女は今までいなかった。俺は女の扱いがわからん。リシェが何を求めているか、どうすれば喜んでくれるかなんて全くわからんのだ。この三ヶ月間、俺はきっと間違いもたくさん犯している。リシェの求めるもの、望むものを全ては叶えてやれておらんだろう。でもな、そんなダメな俺でもリシェはずっと側にいてくれたぞ?全てを見てきたわけじゃないが、お前は選択を間違った。そして、その間違いを正してこなかったんじゃないのか?俺がぐずぐずしてたから三ヶ月もかかっちまったが、本当のところは会ってすぐこいつに絆されちまった。最初から手放せない女になってたさ。リシェの話を聞く限りでは、アイスフォード・・・お前はリシェを拒絶した。自ら手を離したのだ。リシェの一番近くに何年もいたのに、何故わからんだったのだ。こんなにも相手の事を思って気遣いのできる女を、何故大切にしてやれんだったのか俺には到底理解できん。お前はもう、一生リシェを手にすることはできん。なぜなら・・・俺が手に入れるからだ。俺は諦めが悪い。戦いに限ったことだと思っていたが、案外、好きな女ができるとダメらしい・・・リシェ、俺もお前が初恋なんだ・・・悪いが、もう手放すことはできない」
アイスフォードは、ルクストに詰所に連行され、翌日、王都に辺境の騎士の監視付きで強制送還となった。
アリエルは兄である国王に、アイスフォードを城から出すなという事と、リシェリアは自身が保護しているという内容の書簡を送った。
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次回
【アリエルside】
昔の若かった俺、褒めてやる!
会ってすぐ、夢中になってた
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