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43、高値の花の行く先に
しおりを挟む「リシェリア・ブルスト侯爵令嬢、私と一曲踊っていただけますか?」
「はい、喜んで、アリエル・モーガン辺境伯様」
二人はフロアでダンスを踊る。ガタイのいい厳つい大男が、金の髪に水色の瞳の美少女と踊る光景に皆が注目した。騎士である時は、粗暴な感じもあるアリエルだが、正装をすると、さすがは王族である。不思議と風格があらわれる。ぱっと見、怖い印象を受けるが、整えればそこそこイケる。令嬢達の視線もチラホラ感じる。無論、リシェリアに関しては、会場のほとんどの令息が見入っていた。元は第一王子の婚約者。手の届かない高値の花だった。しかし、今隣にいるのは王子ではなく、辺境伯当主。見目の整った上位貴族の令息達は、チャンスとばかりに狙っている。
辺境は隣国との攻防に重要な役割を持っているが、王都の貴族、特に若い世代は詳しく知らない者も多い。そのため、田舎の辺境の伯爵だと思っている令息も多く、下に見ているのだ。
結局、3曲も続けて踊り、テラスに風にあたりに出た。
「疲れただろう?リシェとのダンスが楽しくて、つい無理させてしまったな」
「少しだけ。でも、アル様がダンスを踊れるなんて知りませんでした」
「これでも一応王族だからな」
「ふふっ」
「なんだ?」
「アル様はアル様です」
「今日もリシェが可愛い・・・」
「やっぱりアル様です」
アリエルはすっと真面目な顔になる。
「危ないぞ、本当にいいのか?」
「えぇ、アル様のお力になりたいと申したでしょう?」
「あぁ・・・必ず守る」
「えぇ、何も心配しておりませんわ」
その会話の後、リシェリアはフロアから出ていくと、通路にとどまる。突然、二人は別行動をとったのだ。
リシェリアが通路を進んで行くと、令嬢が声をかけてくる。
「リシェリア・ブルスト侯爵令嬢、少しお時間よろしいかしら?」
「えぇ、かまいませんが」
振り向くと、そこにはフラムウェルの婚約者だったアイリス、側近リアンの婚約者ナルリア、アシュトスの婚約者のカサンドラがいた。アイリス達に連れられ、人気のない部屋に押し込まれた。
「リシェリア様、あなたのせいでフラムウェル殿下が塔に幽閉になりました。アイスフォード殿下も部屋に監禁状態です。しかも、あなたが誘ったのでしょう?この二人の令嬢の婚約者のリアン様とアシュトス様にまで色目を使って・・・なんて事してくれたんですの!あなた一人の為にどれだけの人が迷惑していると思ってるんです!恥を知りなさい!」
「そうですわ、そんな男好きだから、殿下と婚約破棄したすぐに辺境伯様に取り入ったのですね?」
「どんな風に色目を使って落としましたの?教えて頂きたいわね」
令嬢達は様々な暴言を吐いている。
「そんなに男性が好きなら今夜はプレゼントして差し上げますわ」
アイリスがそう言うと、外から二人の令息が入ってきた。
「あなた達、好きにしていいわよ」
アイリスはニヤリと笑みを浮かべた。
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次回
強がるな・・・もっと俺に甘えろ
俺はもう、お前のものだ。だから他のものにしろ!
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