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42、注目の二人
しおりを挟む「旦那様、お待たせしました、リシェリア様のご準備が整いましたよ」
辺境領から同行していたフローラが声をかける。
「アル様。どうでしょうか?」
「・・・」
「アル様?」
「あ、あぁ、いやぁ・・・」
「旦那様、はっきり言って差し上げてくださいな。見惚れてしまったんでしょう?」
「あぁ、綺麗だ・・・しかし、マズイな・・・」
「えっ!?どこか変ですか?」
「リシェリア様、全然変じゃありません。変なのは旦那様です」
「ふふっ」
「リシェ・・・綺麗すぎて獣達が群がってくるんじゃないかと心配だ・・・ただでさえ可愛いのに、綺麗が足されると無敵だな・・・」
「それは褒められてるんでしょうか?」
「当たり前だ。俺のリシェが、嫁が可愛すぎる!」
「いつものアル様でした!」
リシェリアのドレスは、黒と紫のグラデーションのマーメイドライン。黒い髪に紫の瞳の、まさしくアリエルの色だ。アリエル自身が、俺色に染まれと言って準備したものだった。
二人は王宮の夜会会場であるフロアに足を踏み入れた。フロアに集まる貴族の中で、大きな身体のアリエルは特別に目立つ。そして、アリエルがエスコートする令嬢に次第に注目が集まっていく。アリエルの隣にいたのが、第一王子の婚約者であったリシェリアだったからだ。
「なんだか皆さんから見られてます・・・アイスフォード殿下との婚約破棄が知れ渡っているからでしょうね・・・」
「それもあるかもしれないが、ほとんどは違うな・・・」
「どうしてです?」
「リシェが可愛い上に綺麗だから、みんな見惚れているんだ・・・これはいかん・・・」
「アル様・・・私はアル様から可愛いと思って貰えればいいです」
「可愛いことを言いおってっ!!」
ただでさえ注目が集まる中、アリエルはリシェリアを横抱きにして唇にキスを落とす。
「ア、アル様、皆さんが見てます!」
「見せつけてるんだ。どうだ、俺のリシェは可愛いだろう?羨ましいだろう?だが誰にもやらんぞって」
「では、私もアル様素敵でしょう?って自慢してる事になりますね」
「お、おう・・・そうだな・・・俺が相手で、自慢になるのか?」
「はい、素敵な旦那様ですもの」
「くぅぅぅぅ・・・よめぇぇぇぇ!」
アリエルはリシェリアを横抱きにしたままくるくる回ると、リシェリアを静かに下ろす。
「さぁ、兄上のところに行くか・・・」
アリエルとリシェリアは揃って国王に挨拶に向かう。
「兄上」
「おぉ、アリエル。久しいな・・・リシェリア嬢・・・無事で何よりだった。アイスフォードまで迷惑をかけたようで、本当にすまない・・・」
国王が頭を下げた事で会場がざわつく。
「陛下、頭をお上げください、もう、いいのです。アル様が忘れさせてくださっていますので、お気になされないでください」
「それでもだ・・・何か詫びをせんといかんと思っている。考えておいてくれるか?」
リシェリアはアリエルを見上げる。
「では、兄上、失礼します」
アリエルはリシェリアを連れ、颯爽と去っていった。
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次回
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