92 / 131
52、幸せ気分も急降下
しおりを挟む「陛下」
「その呼び方はやめろ」
辺境伯のタウンハウスに帰る馬車の中、さっきからリシェリアは、わざとアリエルを陛下と呼びからかっている。
「なんか距離が遠くなったみたいで嫌だ・・・」
「陛下、そんなに拗ねないでください」
定位置となってしまった膝の上に座るリシェリアは、アリエルの首に腕を回し抱きつく。
「うっ・・・そんな事しても無駄だぞ」
ちゅっ。
リシェリアはアリエルの頬にキスをする。
「それも・・・無駄・・・だ・・・」
必死に耐えて駄々を捏ねるアリエルだったが、リシェリアは猛獣使いなのだ。耳元に近づくと、そっと囁いた。
「アル様、素敵です・・・ん・・・」
アリエルは焦らされたせいで、我慢できずにリシェリアの唇を奪った。
「俺の嫁は誘惑する術まで身につけているとは・・・末恐ろしいな」
「アル様には効果絶大ですわ」
「他の男に効果があってたまるか!他の男にするんじゃないぞ?俺だけにだぞ?」
リシェリアの可愛さに、他の男が寄ってくると不安になったアリエルは、リシェリアの顔を懇願するように覗き込む。
「アル様にしかしませんわ」
「そうしてくれ」
その日の夜は、ちゅっちゅの刑と称した二人の罰とご褒美が繰り返された。アリエルの下半身はしっかり反応を見せているが、必死に隠しバレてないと思っていた。しかし、リシェリアはしっかりと気付いていた。
(アル様・・・きっと我慢してくださって・・・いるんだわ。こんなに・・・)
翌朝。
「・・・ア、ル様?」
「あぁ、起きたか」
「おはようございます」
「おはよう・・・はぁ・・・朝から幸せだ」
シーツにくるまったリシェリアがアリエルの服を引っ張る。
「ん?なんだ?・・・朝からおねだりとは・・・可愛いがすぎるな・・・」
「んっ・・・」
「はぁ・・・嫁が最高に可愛い・・・」
「旦那様が最高に素敵です」
「・・・」
「アル様?」
「・・・このままがいいな」
「?」
「今日はこのまま過ごすか?」
「ダメですよ?侯爵邸に行くのでしょう?」
「うぅぅ・・・しかし、そうだな。お前を俺のものにしないといけないしな」
辺境領に戻る前に、リシェリアの家である侯爵家に立ち寄る事にしていた。婚約の書面を交わすためだ。
「これで、二人は婚約者ですな」
「あぁ、どうせならそのまま婚姻届でもよかったんだがな」
「アリエル殿・・・さすがにね」
侯爵当主エリックが笑う。
「お父様、お話がございますの」
「なんだ?」
「お父様に会っていただきたい方がいますのよ!」
リシェリアの発言に、アリエルは一気に青ざめ、リシェリアを横から抱きしめる。
「リ、リシェ!?お前、何を言うんだ!お父上に会う男は俺だけでいい!他の男を会わせる必要はないだろう?リシェ・・・嘘だと言ってくれ、お願いだ!俺を・・・捨てないでくれ・・・」
アリエルは必死の形相で懇願するも、耐えきれず涙目になると、リシェリアの肩に顔を埋めた。
「アル様?何を言ってるんですの?」
「えっ・・・?」
アリエルは涙目で、恐る恐る顔をあげ、リシェリアの瞳を覗き込む。
「お父様、お母様、それに妹のミルフィに、辺境領に一度来ていただきたいのです。私を助けて下さった皆様に会っていただきたいですし、それに、次期侯爵候補によさげな方がいますのよ。ミルフィが気にいる気がして、お父様達にも直接会っていただきたいのです」
「・・・な、なんだ・・・妹殿のためか・・・びっくりさせないでくれ・・・」
「ふふっ、アリエル殿は余程娘にご執心のようだ」
「あぁ、侯爵、見ての通りだ・・・俺はリシェが絡むと途端にポンコツになる」
不安にかられたアリエルに、しばらく解放してもらえなかったリシェリアだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
えっと、私は何に選ばれたんでしょうか・・・
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる