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55、しばしの別れ
しおりを挟む「アル様、寂しいですわ・・・」
「あぁ、俺もだ・・・すまないが、終わり次第駆けつけるからな」
「えぇ、お待ちしておりますわ・・・」
今、二人は辺境伯邸の玄関の前で、一時の別れを中々終えれずにいる。
「旦那様、寂しいのはわかりますが、あまり遅くなると夜が危険です」
「ハイド、その夜の事で俺は辛い思いを我慢するんだぞ?ちょっとぐらいいいじゃないか・・・」
「いけません、40手前のいい歳した男が、一人で寝るのが寂しいなどと言うものではありませんよ・・・」
「だが、この4カ月程、毎日リシェと一緒に寝ていたんだぞ!急にいないとなると耐えられる気がしない!」
「い、一緒に寝ていた!?」
「そうだぞ、アイスフォード。リシェの笑顔は可愛いんだぞ?寝起きはもっと最高だ。毎朝幸せな気分で1日が始まって、1日の終わりにまたリシェを感じながら眠るんだ。そしてまた幸せな朝が・・・なんだこの幸せループ!って毎日思うぞ」
「・・・何も言えません」
「アル様、それは私も同じです。なので、私がいない間アイスフォード様で我慢してくださいね?」
「小さな子どもならまだしも、大人になったこいつなど気色悪いだけだ」
「叔父上、それは私も同じです・・・」
「アル様、寂しいならこれを」
リシェリアはいつも使っていたストールをアリエルに渡す。
「リシェのにおいがするぅぅ・・・」
「叔父上、気持ち悪いですよ・・・」
「羨ましいくせに」
「うっ・・・」
「アル様のも何か欲しいですね・・・」
「なにっ!」
アリエルは着ていた上着を脱いでリシェリアの肩にかける。
「ストールの代わりだ」
「アル様・・・」
「オッサンの上着なんか・・・叔父上
そんなもので女性は喜びませんよ?」
「あら、私は安心しますわ。アル様に抱き締められて守られてるみたいです」
「ふっふっふっ、アイスフォード、辛いだろう?」
「わかってるなら一々言わないでください」
それからしばらく似たようなやり取りを繰り返し、リシェリアは侯爵邸に移り住むマルクと共に辺境を立った。
一時侯爵邸に留まったリシェリアだったが、三日と待たずにアリエルが迎えに来た。
「リシェ、どこだ?」
「ア、アル様!?」
「リシェ、会いたかったぞ!」
アリエルはリシェリアを見つけると、駆け寄ってしっかりと抱き締めた。
「アル様、お早くありませんか?」
「なんだ・・・寂しかったのは俺だけあ?会いたくてたまらないかったのは俺だけか・・・俺は悲しいぞ・・・」
「もちろん会いたかったですよ!もう、アル様不足です・・・」
リシェリアはアリエルの胸に頬を擦りつける。
「リシェ!あぁ・・・リシェが腕の中にいる・・・リシェ・・・寂しかったぞ・・・」
「ア、アル様、苦しいです・・・」
「す、すまん!」
「でも大丈夫でしたの?引き継ぎを短縮しては残られる方が困るのでは?」
「ハイドがしばらく残るから、辺境伯邸の屋敷の事は頼んできた。領主としての引き継ぎはちゃんとすませている。ハイドも引き継ぎが終わり次第、フローラと共に王都に来る」
「そうでしたのね。それにしても、ハイドさんもフローラさんも、王宮に来て頂けるなんて嬉しいです」
「リシェが慣れた者がいた方がいいだろうと思ってな」
「ありがとうございます、アル様大好きですわ!」
「くぅぅ・・・・・たまらんな・・・」
たった一言で悶絶できる38歳のオッサンだった。
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次回
【アリエルside】
何が同じなんだ?ま、まさか・・・
気持ち悪かったか・・・
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