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【アリエルside】一人になる覚悟
しおりを挟む俺は今、喜びと絶望の間を行ったり来たりしている。目の前にいるリシェと、一時的に離れなければならないからだ。なぜ、リシェと離れることになったかと言うと、理由は二つある。
一つは着の身着のまま辺境へと逃げるようにやってきたリシェは、侯爵邸の自室がそのままの状態だ。まずは嫁入り・・・ふふっ、なんていい響きなんだ・・・まぁ、それはいいとして、俺と一緒に王宮に住む為の引っ越し準備というわけだ。
それからあと一つは横にいるこいつだ。アイスフォードが側近と共に辺境へと移ってきた。今日から辺境伯としての引き継ぎを始める。別にそれがなんだと思うところだが、無理だ、無理なのだ。こいつがリシェと同じ屋敷にいるというだけで、どうしようもなく許せない。そうだ、俺の単なる嫉妬だ。
ただ一つ気がかりはある。リシェが先立つにつれて、リシェの妹ミルフィの婚約者になった、騎士のマルクが侯爵邸へ居を移すことになり、侯爵家当主としての教育に入る為、王都に行く。王都に戻るリシェに護衛としてつけるのだが・・・心配だ・・・心配でならん!なんなら俺が護衛したい!しかし、辺境を放り出しはできんからな・・・1日でも早くすませてリシェの元に行くんだ!
「アル様、寂しいですわ・・・」
目の前の嫁が可愛すぎる・・・離れたくない・・・俺も一緒に行くぅぅ・・・俺の心は泣いている。
「旦那様、寂しいのはわかりますが、あまり遅くなると夜が危険です」
それはわかっている、わかってはいるが・・・寂しいんだ!毎日一緒に寝ていたのに・・・リシェがいないなんて・・・
「ハイド、その夜の事で俺は辛い思いを我慢するんだぞ?ちょっとぐらいいいじゃないか・・・」
「いけません、40手前のいい歳した男が、一人で寝るのが寂しいなどと言うものではありませんよ・・・」
「だが、この4カ月程、毎日リシェと一緒に寝ていたんだぞ!急にいないとなると耐えられる気がしない!」
俺は今夜から一人で寝なくてはならないんだぞ!俺の辛さが理解できないのか?今だけはリシェを堪能させろ・・・うぅぅ・・・
「い、一緒に寝ていた!?」
アイスフォード、驚いているな。最初は確かに俺も焦ったし、一度は断ったさ・・・でも、どうしてもと言う事を聞かなかった。可愛いに他ならないわがままだった。俺にしかそんな事しないんだ、聞かないわけがないだろう?それに、リシェの寝顔は可愛いんだぞ?寝起きはもっと最高だ。毎朝幸せな気分で1日が始まって、1日の終わりにまたリシェを感じながら眠るんだ。夢にリシェが出てくると、ずっとリシェを感じていられて幸せな気分だ。夢から覚めると残念に思う気持ちもあるが、起きたら目の間にリシェがいて、その上俺の腕の中にいる。そしてまた幸せな朝が・・・なんだこの幸せループ!って毎日思うんだ・・・
「アル様、それは私も同じです」
何が同じなんだ?ま、まさか・・アイスフォードと同じく引いているという事なのか!?気持ち悪かったか・・・
「なので、私がいない間アイスフォード様で我慢してくださいね?」
えっ・・・それは・・・代替案にはならんな・・・ただただ気色悪いだけだ・・・何で好き好んで男と寝らんといかんのだ・・・
「アル様、寂しいならこれを」
な、なんだと!?これは毎日リシェが使っているストールじゃないか!?貸してくれるのか?リ、リシェのにおいがするぅぅ・・・常に肌身離さず持っておく!夜は抱いて眠るぞ!
「叔父上、気持ち悪いですよ・・・」
お前はわからんのか?リシェの持ち物だぞ?リシェが俺の為に貸してくれると言うんだぞ?羨ましいくせに
「うっ・・・」
ほらな。
「アル様のも何か欲しいですね・・・」
な、なにっ!リシェ・・・お前はなんて可愛いのだ・・・もしかして同じとは、寂しいという事なのだろうか?だったら嬉しすぎる。同じ気持ちでいてくれるなんて嬉しい・・・しかし、ストール貸してもらうとリシェが冷えるといけないな。オッサン臭がするかもしれんが・・・俺を思い出して欲しい・・・これは俺の願望だ・・・上着を貸すぞ。嫌がったり・・・しないよな?
「アル様・・・」
やっぱり嫌か?うぅぅ・・・
「オッサンの上着なんか・・・叔父上
そんなもので女性は喜びませんよ?」
くそっ!それは俺が一番わかっている!
「あら、私は安心しますわ。アル様に抱き締められて守られてるみたいです」
あっ・・・ああぁぁぁ・・・射抜かれた・・・心臓が痛い!俺の嫁は魅了魔法に続いて、攻撃魔法が使えるようになったのか!?うううぅぅ・・・痛いのに幸せなんて・・・
「ふっふっふっ、アイスフォード、辛いだろう?」
「わかってるなら一々言わないでください」
一々言うなだと?わかってるから言ってるに決まってるだろうが。俺みたいな男が初めて人に自慢できるんだからな!!
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次回
【アリエルside 】
今から出る!
俺を誰だと思ってる?国一番の最強の騎士だ
応援ありがとうございます!
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