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57、離宮の日常と辺境
しおりを挟む二人が離宮に居を構えてすぐ、アリエルは王として采配を振るう事になった。少しでもリシェリアの近くにいたいアリエルは、離宮を改装した際に、国王と王妃の執務室を同室にして作ってしまった。二人仲良く横に机が並んでいる。
「リシェ、俺の膝に来ないか?」
「いいえ、執務がまだ残っておりますから、遠慮しますわ」
「リシェ、お茶にしよう」
「さっき、休憩したばかりですよ?」
「リシェ、ちょっとこっち向いてくれないか?」
「後でいくらでも見ていいですから、まずはお仕事しましょう?」
構って欲しいアリエルと、執務をさせたいリシェリアの攻防が日常の光景になった。リシェリアに構って欲しくていろいろな策に出るアリエル。執務がいつまで経っても終わらないと危惧するリシェリアだったが、それは稀有な話である。元々デキる男なのだが、リシェリアが絡むと優秀さが加速する。リシェリアの方ばかりを向いているようで、執務はすべて終わらせている。アリエルは力自慢の武人のように思われるが、実はなんでもこなせる男だ。しかし、リシェリアに対しては途端にポンコツになる。
「執務が終わらないなら、今夜は一緒に寝れませんわね?」
「い、いや、もう終わってる!」
「あら、いつの間に」
「褒めてもいいぞ?」
アリエルはにこやかに笑顔を向けるが、リシェリアはすっと立ち上がると歩き出した。
「リ、リシェ!どこに行くんだ!?俺も一緒に・・・リシェ?」
リシェリアが行き着いたさきは、執務室の中にある応接セットのソファ。
ポンポン。
「休憩しましょう?」
リシェリアは休憩に膝枕してあげますよと表現している。
「リシェー!」
アリエルはリシェリアの膝にダイブして、足にゴロゴロする。まるで大きな猫のようだ。さすが猛獣使いリシェリアといった様子がよく見られるようになった。
あれから辺境の地では、アイスフォードが辺境伯当主となり、騎士団長にはルクストが就いた。副騎士団長には、一緒に連れて行った側近護衛騎士のアルベルトが起用された。実力は辺境でもしっかり通用するほどの腕だった。団長起用でもよかったのだが、アルベルト自身が断った。
領主の交代により、混乱するかと思われたが安定していた。アイスフォードの手腕はそれなりではあったが、確実に税収を上げ、領民の暮らしを守った。アイスフォードは仕事に打ち込み、結婚は望まなかった。リシェリア以上の女性には巡り合えず、またそれを望んではいなかった。
ルクストはアリエルが国王になって一年、騎士団長を務めた。王都の近衛騎士の副団長が家の爵位継承の為、退団することが決まり、後任にルクストが任命された。その後の辺境騎士団は、アルベルトが団長に就き、副団長にカイルが起用されることになる。
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次回
【アリエルside】
リシェがかまってくれない・・・
なんたるご褒美だ!
応援ありがとうございます!
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