120 / 131
67、王宮から見えない場所
しおりを挟むクリストファーは、リシェリアが王女であり、国王であるアリエルの娘だと思い込んでいる為、王宮のどこかで会えるだろうと思っていた。しかし、いろんなところに出向いてみるも会うことは叶わなかった。
「おかしいな・・・」
クリストファーはまだ奥まった敷地があることに気付くと、足を踏み入れた。しばらく進むと、木々に囲まれた建物が二棟見える。ひとつは離宮、もうひとつはハイドとフローラの為の使用人棟。
「こんなところに建物が・・・離宮というわけか」
クリストファーはニヤリと笑みを浮かべると、離宮へと近付いていく。
「リシェリア様?こんなところでお会いできるとは」
「あら、クリストファー殿下ではありませんか。こんなところまでいかがされました?」
「いえ、こちらに何かあるのかと散策していたら、こんなところまで来てしまいましてね」
「そうでしたの」
「こちらに住まわれておいでなのですか?」
「えぇ、そうですわ」
「どうりで王宮で見かけないと思いました」
クリストファーはリシェリアの髪に葉っぱがついている事に気付く。
「リシェリア様、失礼しますね。髪に葉がついておりますので、とって差し上げ」
「いやぁぁっ!!」
リシェリアは咄嗟に地面に座り込んでいた。震えるリシェリアを見て、クリストファーは何が起きたんだと目を見開いた。
「え?」
すぐさま一人の男が必死の形相で駆けつけた。
「リシェ!!どうした!」
アリエルが勢いよく離宮から出てくると、地面に座り込んで震えていたリシェリアを見つけてしっかりと抱きしめた。
「アル様・・・」
リシェリアはアリエルにしか聞こえない小さな声で名前を呼ぶ。
「震えてるな・・・大丈夫か?」
「・・・はい」
「クリストファー殿下、リシェに触れようとしたのか?」
「え、えぇ・・・髪に葉がついておりましたからとって差し上げようと・・・」
「そうであったか、リシェは男が苦手でな。俺以外に触れられる事に怯えるのだ。すまないな」
「いいえ、事情を知らずにすみません。よければリシェリア様をお茶にでも誘おうと思ったのですが・・・」
「悪いが今日は控えてくれるか?」
「では、また今度の機会に。失礼します」
クリストファーは、アリエルがリシェリアを抱きかかえて離宮に入っていくのを少し離れたところから見ていた。
「娘に過保護な国王か・・・面倒だな」
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【アリエルside】
やっぱり俺だけだ
手を出そうとしているな
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる