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40、結婚式 〜次の幸せはあなたに〜
しおりを挟む厳かな雰囲気の中、祭壇の神父が語る。
「今日この日に、一組の夫婦が誓いを立てます。夜の空を眺めれば、たくさんの煌めく星が輝いています。夜空に瞬く数多の星達は、まるで私達一人一人をあらわしているかのよう。その数多の中から出会うのは奇跡なのです。奇跡の出会いを大切に、慈しみ、互いを想いあって生きていく。参列の皆様におかれましては、若い二人の新たな門出を祝し、証人となって頂きましょう」
神父の言葉にそれぞれが思いを巡らせる。
王命によって、出会いの奇跡を引き裂かれ、叶えられなかった王妃エリアナ。
王命によって出会いの奇跡から引き裂かれても、エリアナを心で想い続けたハリー。
ナディアとの出会いの奇跡を蔑ろにし、罪を犯した国王アルフレッド。
国王に蔑ろにされるも、マルクスとの奇跡の出会いで、笑顔を取り戻した宰相の妻となったナディア。
幼い頃に奇跡の出会いをするも、悲恋を胸に秘め想い続けた結果、傷付いたナディアの笑顔を取り戻した宰相マルクス。
「新郎、バージル・ユリシール。そなたはこれからも、この出会いの奇跡に感謝をし、新婦、ミーティア・レクノールを妻とし、生涯愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦、ミーティア・レクノール。そなたはこれからも、この出会いの奇跡に感謝をし、新郎、バージル・ユリシールを夫とし、生涯愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「よってここに、一組の夫婦が相成ったことを宣言する。誓いのキスを」
バージルがミーティアのベールを静かにあげると、二人は向き合ってお互いを見つめる。
「ティア、幸せにするよ・・・」
「ジル・・・もうすでに幸せだけど、もっともっと幸せになりましょう!」
二人が軽く触れるだけのキスをすると、大聖堂は祝福の拍手喝采であった。
大聖堂から出てきた二人を、たくさんの知人、友人、同僚達が迎える。
「みなさん、ありがとう!」
ミーティアが大きな声を上げると、二人はクスクスっと笑うと、ふっと視線を一人の人物に向けた。
「本当の幸せを掴んで!」
大きな声を上げ、ミーティアは手にしていたブーケを投げた。大きな弧を描いて放たれたブーケは、一人の女性の手に落ちた。
「ミーティア・・・」
「お母様、お母様は本当の幸せを掴むべきよ!もっと幸せになれる!遅くはない、諦めるべきではないわ!わたくしはお母様の幸せを願っています!」
王妃エリアナは、娘の成長と優しい心の持ち主に育ってくれたことに歓喜し涙した。
ミーティアが結婚式をこの日に選んだのには理由があった。この日は、ミーティアが星の妖精姫になった、バージルとの奇跡の出会いの日。そして奇しくも、当時辺境伯令嬢であったエリアナと子爵令息であったハリーが、かつて王命によって引き裂かれ、小さな約束をして、別れの涙を流した日でもあったのだ。
教会から王宮へは、一本の大きな道が繋がっている。沿道には未来の女王夫妻を一目見ようと、たくさんの民が駆けつけ賑わいを見せている。
「ジル、こんなにもたくさんの人が祝ってくれるなんて嬉しいわ」
「あぁ、俺も嬉しいよ」
二人は馬車に揺られ、幸せな未来へと向かって行く。
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