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第二王女スピカ
王女と男爵令息エリオット
しおりを挟む狼に襲われ、黒髪の男に助けられたスピカは、第三騎士団の詰所に運ばれた。
「お?エリオット、可愛い子連れてるじゃないか。どうしたんだ?」
「森の入り口に狼が出ました。かなりの大きさですので、警戒を」
「あぁ、わかった。一度見回りしておくか。おい、一回りするぞ!」
男の指示で数人の騎士が駆けて行った。エリオットと呼ばれた黒髪の男は、スピカを救護用の簡易の寝台におろす。
「助けてくれてありがとう」
「怪我はないな?」
「えぇ、大丈夫みたい」
「そうか、しばらく休んでから帰れ」
「ねぇ・・・あなた、エリオットっていうの?」
「あぁ、エリオット・メリノアだ」
「メリノア?メリノア男爵の?」
「そうだ、父上はアンディ・メリノア。男爵家当主で、第三騎士団の騎士団長だ」
「メリノア男爵には会った事あるわ!」
「そうなのか」
話している所に、鍛え上げられた体躯の男が現れた。
「可愛い声がしていると思ったら、レディがいらっしゃ・・・ス、スピカ王女殿下!?」
(父上・・・今、王女殿下って言わなかったか!?)
エリオットは驚いていた。何故こんなところに王女である少女が一人でいるのかというのはもちろん、男爵の子息だという自分に対して高圧的な態度をとることもなく、ましてやありがとうなどとお礼まで言われたのだ。
「メリノア男爵、こんにちは!今、男爵の話をしていたところよ」
「き、今日は、どうされたのです?まさかお怪我でも!?」
アンディは焦っていた。しがない男爵である自分の目の前に王女であるスピカがいる。まさか自分が管轄する場所で王女に怪我などさせていたらと。
「いいえ、怪我はしてないわ。エリオットが狼から助けてくれたの!」
アンディの顔に安堵の色が浮かぶ。
「ご無事で何よりでした。それより、殿下、お付きの者はいかがされました?」
「いないわよ」
「へっ!?お一人ですか?」
「えぇ、いつも一人でお忍びしてるわ。街での名前はスージーよ」
「殿下、危険です。お一人での外出はお控え下さい」
「もう・・・メイドや城の護衛騎士のような事言うのね?」
「しかし、殿下がいないと城が騒ぎになっているやもしれませんよ?ここは第三騎士団に送らせてください」
「いいわよ、一人で帰れるわ」
「ダメですよ・・・道中何かありましたらと、気が気じゃありませんよ」
「そう・・・では、エリオットに送って貰うわ!」
「えっ!?お、俺・・・ですか?」
「王女殿下、エリオットはまだ見習い騎士です。騎士を数名つけますのでお待ちください」
「イヤよ。エリオットだけでいいわ」
「はぁ・・・わかりました。エリオット、くれぐれも頼んだぞ」
「はい・・・」
スピカはご機嫌に城へ帰って行った。馬に乗せられると、後ろから包み込まれるように抱きかかえられ、エリオットの鍛えられた身体に包まれてご満悦だった。
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次回
エリオット、君はどうしたい?
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