75 / 211
第二王子アークトゥルス
第二王子はうさぎを見つける
しおりを挟む王宮の中を歩いていたら、いるはずのないものがいた。少年は足を止めて、それを注意深く観察する。
「・・・うさぎがいる」
王宮では、馬と黒紫星の所有する鷹以外の生き物は飼っていない。ではなぜうさぎがいたのか。彼の目にはうさぎに見えたのだが、正しくは、それは幼い可愛い少女だった。白銀の雪を思わせる、ふわふわと触り心地のよさそうな銀の髪。キョロキョロと周りを見渡し、興味で輝くルビーの様な真っ赤な瞳。中庭の芝生の上で、ふわふわと髪をゆらしていた。
少年は目を奪われた。
「かわいい・・・こんなに可愛い生き物がいるなんて・・・」
少年の名はアークトゥルス。肩より長い輝く金の髪を後ろで一つに結い、瞳はサファイアのような青だった。この国の第二王子で、この時10歳。アークトゥルスは惹きつけられるように少女に歩み寄る。
「?」
うさぎのような少女は、不思議そうな顔でアークトゥルスを見ている。そこへ誰かが駆け寄ってきた。
「ここにいたのか、探したぞ」
「お父様!」
少女はお父様と呼んだ男に駆け寄った。
「殿下、娘がすみません」
「いいえ、僕は何も」
父親は、第一騎士団・副騎士団長のリュシアン・クレマンだった。
「それより、名前を伺っても?」
「この子ですか?ラビリアと言います」
「ラビリア・・・」
この時、アークトゥルスは名前までうさぎみたいだと思っていた。
「ラビリア、ご挨拶は?」
「はい、お父様、ラビリア・クレマン。5歳です」
(うん・・・可愛い・・・天使だね)
「僕はアークトゥルス10歳。第二王子だよ」
アークトゥルスはラビリアに向かって微笑んだ。
「クレマン副騎士団長、こんなに可愛いご息女がいたなんて知りませんでした」
「だま小さいので、中々外には出しておりませんでしたから。可愛いでしょう?セーラにそっくりで、小さいセーラを見ているみたいです。あ、でも、瞳は僕と同じ、真っ赤なルビーみたいなんですよ」
「えぇ、確かに可愛らしい」
アークトゥルスは、このうさぎのような少女が欲しくてたまらなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
これは早く僕のものにしておかないと、悪い虫が寄ってきそうだ
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
137
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる