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公爵令嬢ナディアに恋した伯爵令息
誰もいない茶会
しおりを挟む翌日、確かにリナリアの花は届かなかった。
屋敷の前に一台の馬車が止まる。
(あら?何かしら?・・・あれは・・・エレノス伯爵家の家紋?)
馬車からは中年の男性と、若いメイドが降りてきた。
「ナディア・ワルシャワ様でございますか?私、エレノス伯爵家で執事をしております、マシューと申します。こちらはメイドのレミィでございます。伯爵家より、お迎えにあがりました」
「えっ・・・わざわざお迎えに?申し訳ありません」
「いえいえ、私達は主人より申し使っているだけでございます。さぁ、お乗りください」
「で、では、お願いします」
ナディアは伯爵家の馬車に乗り、屋敷を出た。
「ナディア様の御髪は綺麗ですね!」
「えっ・・・そんな事ないわ・・・暗い色だし」
「いえいえ、濃い色の髪は、アクセサリーや髪飾りが映えます。楽しみですね」
「楽しみ?」
「あっ、いえ、なんでもありません!」
「・・・そ、そう?」
馬車で移動中、若いメイドのレミィが危うく口を滑らせそうになりつつも、気さくに話しかけてくれた事で、伯爵邸まで緊張もせずにいつのまにか到着していた。
馬車の扉が執事のマシューによって開かれると、外にはマルクスが待っていた。
「ナディア様」
「マルクス様、本日はお招き頂いてありがとうございます」
「どうぞ、こちらへ」
マルクスにスコートされ行き着いた中庭。茶会と聞いていたが、誰の姿も見えない。
「あの・・・マルクス様?今日はお茶会だと聞いていたのですけれども・・・」
「えぇ、お茶会です。ただし、私達二人だけです」
「二人だけ?」
「二人きりのお茶会です。誰にも気を使わずいいと思いませんか?」
ナディアは驚いていた。しかし、心は落ち着かない。これからお茶会だといっても、楽しく当たり障りのない会話をするわけではないのだと思っている。これまでの半年、マルクスから贈られてきた花に癒され、カードに元気付けられた。今日のお茶会でこの関係も終わりを告げるのだと、覚悟をしなければいけないと少しずつ楽しい気持ちも沈んでいった。
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次回
私の願望です・・・
私はあなただけを見つめる
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