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王太子アルフレッドの新たな婚約者
マルクスの惚気と経緯
しおりを挟む数ヶ月経ったが、アルフレッドとエリアナの関係は変わらないまま。そんな時、側近のマルクスの婚約がアルフレッドの知るところとなった。
「マルクス!ナディアと婚約したとは本当か!?」
「えぇ、そうですよ」
「いつからだ、いつからナディアと親しい仲だったのだ・・・」
「あぁ、勘違いしないでくださいね。殿下と違って、ディアは不貞などではないですから」
「・・・ディア?」
「あぁ、すみません。ナディアの事をディアと愛称で呼んでいましてね。私だけが許可された呼び名なのです」
「・・・」
「そうそう・・・私がアプローチを始めたのは、殿下がディアに婚約破棄を告げた後の事です。弱みにつけ込むような事はしたくはありませんでしたが、庭園で泣いてましたのでね・・・声を掛けたのが始まりです」
「・・・ナディアが泣いていた?」
「えぇ、淑女の鏡のようなディアが、あんなにも感情を露わにするのは初めて見ました」
「・・・ナディアは、私の事を愛していたのか?」
「それはわかりません。私は7年の片想いに、チャンスが巡ってきたのでそれを掴んだだけですから」
「7年の片想い・・・」
「殿下がディアを見初めた茶会で私も一目惚れしたのですよ。秘密の恋をしていたのです」
「・・・」
「半年かけて心をゆっくりほぐして、先日やっといい返事をもらえました」
「半年・・・」
「殿下との婚約が破棄された後は、ご実家の公爵家での扱いも酷かったようで心配しましてね」
「扱いが酷かったとは・・・何があったのだ?」
「傷心の彼女には、次の縁談の話など酷だったと思います。気が進まず渋る態度に公爵は叱責を繰り返し、ディアも憔悴していました。ディアは、無理矢理嫁がされる日が来るかもしれないと、未来を諦めていましたよ」
「そう・・・なのか」
「可哀想でした・・・ディアは何も悪くない。いつ壊れてしまうか気が気じゃなかった。でも、すぐに彼女を手に入れようと動くことで、公爵と同じことをしてしまうのだけは避けたかった。なので半年かけたのです。私は、ディアだけを一途に想ってきましたから」
「・・・一途にか・・・」
「憔悴しきって、笑う事さえできなくなっていたんです。いつまでも公爵家に置いておく事は私が許せませんでした。なので、婚約者になってすぐに私の屋敷に移り住んでもらいました」
「一緒に住んでいるのか!?」
「えぇ、毎日ディアに会えるので幸せです。母も、初めての娘が可愛いと大喜びで毎日ディアと楽しく過ごしていますよ。王妃様もディアを気に入っておいででしたが・・・こればかりは、もう、お返しする事はできませんからね。ディアはもう、私の婚約者であり、私だけのものなので・・・殿下には・・・感謝してるんですよ?」
マルクスはにこっと笑顔を向ける。
「殿下はエリアナ様に何をしましたか?」
「エリアナに・・・」
「心を閉ざしている者は、聞いてくれと言うばかりでは引くばかりです」
「・・・」
「エリアナ様が何を望んでおられるのか・・・殿下がエリアナ様に何をして差し上げたいのか、考えてみてください」
「何をしてあげたいか・・・お前は・・・ナディアに何をして振り向いて貰えたのだ?」
「私はあの日から、半年の間毎日花を贈りました」
「毎日か」
「はい、毎日私を思い出して欲しくて。最初はただ花を贈っていただけでしたが、途中からディアとしたい事、行きたい所・・・私の願望と言いましょうか、少しずつ言葉を贈りました。屋敷からほとんど出歩かなくなったディアが、出かけて、美味しいものを食べて、きれいな景色を見て・・・想像だけでもいいから、少しでも元気を取り戻してほしかった。屋敷に招いて、気持ちを伝えました。花を一緒に贈った言葉を叶えようと約束しました」
「マルクス・・・意外とロマンチックな事をするのだな」
「・・・決して誉められるものではありませんでしたよ?どうかすると、気持ち悪い、しつこいだけの男です。気持ちを伝えて、ディアからの返事をもらって・・・しかし、あれは格好悪すぎましたね・・・」
マルクスは苦笑いをしている。
「縋りついてしまいましたから・・・」
「縋りついた!?」
「はい、いい返事がもらえて、嬉しくてディアの胸に飛び込むように抱きついてしまったんです・・・後から聞いたら、大型犬がじゃれてきたようだったって」
「・・・」
「まぁ、私の話はこれぐらいで。とにかく殿下、まずはエリアナ様のお気持ちを知る事からですね」
自身が傷付けた元婚約者であったナディアが、側近のマルクスによって愛されていた。しかも心を閉ざした相手という同じ状況もあるのに、自身は何も進展がない。そんな状況に、アルフレッドはますます焦っていた。
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次回
そうしたのはあなたでしょう!
あなたは何も分かってないわ
応援ありがとうございます!
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