115 / 211
王太子アルフレッドの新たな婚約者
手折られた薔薇
しおりを挟む三日後、アルフレッドは花を持ってサファイア宮を訪れていた。
「アルフレッド様・・・花を強請ったのは確かに私です。どのようにとお伝えしなかったのも悪かったと思いますわ・・・」
「これではダメだったのか!?す、すぐに別のものを用意する!」
「いりません!」
「・・・私はエリアナの望む花も贈れぬ男なのだな・・・」
「はぁ・・・お気持ちは嬉しいのです。しかし・・・庭園を見るのが少々怖いですわ」
「う・・・す、すぐに整えさせる!」
「また薔薇をお植えになるおつもりですの?」
「違う花がいいか?」
「そういう事ではございません」
「・・・私は・・・どうすればよいのだ・・・エリアナ・・・」
「アルフレッド様、この薔薇を集める時に何を思いましたか?」
「・・・エリアナに喜んでもらいたい」
「では、なぜこんなにたくさん?」
「私の気持ちだ。数少ない薔薇では足りぬ」
「手折られた薔薇には罪はありません。しかし、手折られたら枯れてしまいますわよね?」
「・・・」
「アルフレッド様に摘まれなければ、この薔薇達は後少し、ほんの少しかもしれませんが、お日様の下で綺麗に咲き誇っていたのですよ?」
「・・・」
「陛下がされた事をアルフレッド様もされたのです。この意味わかりますか?」
「・・・父上と同じ事?」
「私は自らの土壌から手折られてここへ来たのです。アルフレッド様に差し出されるために」
「・・・私に・・・」
「そうです。手折られて枯れるのを待つばかり」
「・・・」
「摘まれた赤薔薇は、もう・・・同じ場所には咲けないのです」
「・・・」
「赤薔薇は戻りたい場所には・・・戻れないのです」
「戻りたい場所・・・」
「えぇ・・・今はもう別の花が咲いております」
「それは?」
「派手な赤薔薇ではない・・・可憐なマリーゴールドが・・・」
「・・・そう・・・なのか」
「アルフレッド様、庭園の薔薇は別の場所に移しましょう?」
「なぜだ」
「見るに耐えない状況だからです」
「うっ・・・」
「このままでは王宮の庭園としてはあまりにお粗末です」
「・・・す、すまない・・・」
「ですので、別のものが欲しゅうございます」
「なんだ、申してみよ!」
項垂れていたアルフレッドがエリアナに希望の眼差しを向ける。エリアナが欲しいと言ったのは、花でも宝石でもドレスでもなかった。
ーーーーーーーーーーーーー
次回
あら、私、アルフレッド様の執務室は立ち入り禁止ですの?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
137
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる