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王太子アルフレッドの新たな婚約者

手折られた薔薇

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三日後、アルフレッドは花を持ってサファイア宮を訪れていた。


「アルフレッド様・・・花を強請ったのは確かに私です。どのようにとお伝えしなかったのも悪かったと思いますわ・・・」

「これではダメだったのか!?す、すぐに別のものを用意する!」

「いりません!」

「・・・私はエリアナの望む花も贈れぬ男なのだな・・・」

「はぁ・・・お気持ちは嬉しいのです。しかし・・・庭園を見るのが少々怖いですわ」

「う・・・す、すぐに整えさせる!」

「また薔薇をお植えになるおつもりですの?」

「違う花がいいか?」

「そういう事ではございません」

「・・・私は・・・どうすればよいのだ・・・エリアナ・・・」

「アルフレッド様、この薔薇を集める時に何を思いましたか?」

「・・・エリアナに喜んでもらいたい」

「では、なぜこんなにたくさん?」

「私の気持ちだ。数少ない薔薇では足りぬ」

「手折られた薔薇には罪はありません。しかし、手折られたら枯れてしまいますわよね?」

「・・・」

「アルフレッド様に摘まれなければ、この薔薇達は後少し、ほんの少しかもしれませんが、お日様の下で綺麗に咲き誇っていたのですよ?」

「・・・」

「陛下がされた事をアルフレッド様もされたのです。この意味わかりますか?」

「・・・父上と同じ事?」

「私は自らの土壌から手折られてここへ来たのです。アルフレッド様に差し出されるために」

「・・・私に・・・」

「そうです。手折られて枯れるのを待つばかり」

「・・・」

「摘まれた赤薔薇は、もう・・・同じ場所には咲けないのです」

「・・・」

「赤薔薇は戻りたい場所には・・・戻れないのです」

「戻りたい場所・・・」

「えぇ・・・今はもう別の花が咲いております」

「それは?」

「派手な赤薔薇ではない・・・可憐なマリーゴールドが・・・」

「・・・そう・・・なのか」

「アルフレッド様、庭園の薔薇は別の場所に移しましょう?」

「なぜだ」

「見るに耐えない状況だからです」

「うっ・・・」

「このままでは王宮の庭園としてはあまりにお粗末です」

「・・・す、すまない・・・」

「ですので、別のものが欲しゅうございます」

「なんだ、申してみよ!」


項垂れていたアルフレッドがエリアナに希望の眼差しを向ける。エリアナが欲しいと言ったのは、花でも宝石でもドレスでもなかった。




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次回


あら、私、アルフレッド様の執務室は立ち入り禁止ですの?


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