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私の太陽、俺の花
失われた笑顔
しおりを挟む二学年に上がり、もうすぐその年の剣術大会が迫っていた。そんな時、シルフィは見てしまう。薔薇の花束を抱えて王宮へ向かうサイラス。そして、宝飾店で女性もののアクセサリーを選ぶサイラス。
「お父様・・・サイラス様には婚約者がいらっしゃいますの?」
「いや、決まった婚約者はいないはずだ」
「・・・そう・・・ですの」
シルフィは、サイラスが意中の相手に想いを伝えているのだと落ち込んだ。
今年の剣術大会は、ジェームスは準優勝だった。
「はぁ・・・今年も優勝できなかったよ・・・」
「そうですわね・・・」
「あと一人だったのになぁ・・・」
「えぇ・・・」
「もう少しだったのに悔しい」
「えぇ・・・」
「シルフィ?」
「・・・」
最近あきらかにシルフィの様子がおかしい。ジェームスは気掛かりであった。そう、街に出かけたシルフィは見てしまったのだ。ドレス店で、サイラスが赤色のドレスを前に店員と話をしていた姿を。シルフィは、サイラスが意中の相手にドレスを贈るような仲まで親密になっているのだと、その光景に立ち尽くした。どうやって屋敷に戻ったのか覚えていない。食事も喉を通らず、夜も眠れず静かに泣いた。翌日は学園を休んだ。
事件は突然起きた。サイラスがマーガレット王女を襲ったのだ。かろうじて未遂に終わったが、その事は秘匿された。しかし、家同士の親交があり、シルフィの父は宰相である。サイラスの事は自然と知る事となった。
「サイラス様がマーガレット王女殿下にそんな事を・・・」
「あぁ、だから公爵家は次期当主を弟のクライス様にするそうだ」
両親の会話を聞いてしまった。自身の部屋に戻り、シーツにくるまって声を上げて泣いた。あの贈り物の全ては、マーガレット王女殿下にだったのかと悟った。しかし、マーガレット王女殿下はサイラスを拒んだ。自分がサイラスを慰めなくては、サイラスの味方にならなくてはと次第に気持ちが傾いていく。
それからシルフィは、屋敷に軟禁状態のサイラスの元に何度も出向いた。学園での事、新しくできたお店の事、花が咲いたなど。何を話してもサイラスは虚無を見つめたように、何も反応しなかった。
休んでからしばらく経って、前ほどではないものの、シルフィが元気になってきた事にジェームスは安堵していた。しかし、卒業までの間、初めてみた時のような笑顔はついに見せる事はないままだった。ジューエムスは最終学年の歳、とうとう剣術大会で優勝を果たす。シルフィに喜んでほしかった。頑張ったと褒められたかった。しかし、見たかった笑顔はとうとう最後まで見れないままだった。
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次回
体がでかくて丈夫っていうのだけが取り柄の兄ですから
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