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モテ男、戸惑いの初恋
空気かそれとも絨毯か
しおりを挟むリュシアンは、セーラに対する思いのたけを暴露した。まさか本人に聞かれているとも知らず。
「悪いね、セーラ・・・この通り、荒れ狂ってる」
「ふぇっ!?」
ボロボロ泣いたぐしゃぐしゃな顔で見上げると、そこには開いたままだった執務室の入り口にセーラが立ち尽くしていた。リュシアンは、固まって息が止まったかのように静かに床に倒れた。
ドサッ
(は、恥ずかしすぎる、僕、格好悪い・・・嫌われた・・・始まる前から終わった・・・)
「セーラ、どこから聞いてた?」
「あぁ・・・団長が選んだ店がどうとか・・・」
(ぎゃぁぁぁぁ!最初から全部じゃないか!終わった・・・)
「あぁ・・・ほぼほぼ聞いたみたいだな・・・」
「えぇ・・・かなり驚きました」
「こんな事になるなんて思わなくてな・・・」
床にうつ伏せで倒れているリュシアンは、起き上がれずにプルプル震えている。
「クリスフォード団長、何か御用があったのではないのですか?」
(え・・・俺の事・・・スルーしてる?俺、空気かな?空気なのかな?・・・このまま床に敷かれた絨毯として大人しくしていればいいのかな?・・・)
「いや、特に大事な用件はなかったんだが・・・こうなったらもうダメだな・・・はぁ・・・リュシアン、まず、俺には婚約者がいる。セーラにそういう感情は抱いていない」
「・・・」
「そしてセーラ・・・リュシアンは悪い奴じゃない」
「・・・」
「ちょっと変わった奴だが・・・」
「・・・」
「根はいい奴だ・・・」
「・・・」
「噂はいろいろあるが・・・」
「・・・」
「好きな女性には一途だ・・・多分」
(団長・・・地味にフォローになってないよ・・・多分ってなんだよ・・・多分って・・・)
「セーラ、単刀直入に言う、リュシアンをどう思う?」
(ちょ、ちょっと、団長!?何聞いてるの!?)
「・・・」
「セーラ?」
「・・・」
「おーい、セーラ?」
セーラは無言の間、リュシアンが言っていた言葉のそれぞれが、頭の中で何回も響いていた。
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次回
いや、謝らないでくれ、むしろこっちがすまん
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