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レスタが見る主と令嬢
しおりを挟むスティファニアのあまりの落ち着きに、レスタはますます焦る。きっとよくない想像をしているかもしれない。自分が横やりを入れた形になり、存在しない相手との仲を引き裂いたと思っているに違いないと青ざめていた。そんな事実もなければ、男爵本人は本当に恋人も、ましてや噂になるような相手ですらもいなかったのだから。モテないわけではないと、身内贔屓目にも思う。男爵本人はそうは思っていないようだが、実のところ顔は悪くないのだ。ただし整えた場合に限る。というのも、レスタの主である男爵は見た目にこだわりもなく、戦地に赴くこともあれば、普段は騎士達に稽古をつけているため、身なりにほとんど気を使わない。髭も延びっぱなし、髪も整えず雑に結んでいるだけ。その上、言葉遣いもなってない。そんな男がこんな若くて綺麗なご令嬢に惚れられるわけがないのだ。スティファニアを迎えに辺境を出る前に、これでもかというほど身なりを整えろと言って聞かせたのだが、俺が身なりを整えたところで何が変わるって言うんだと聞き入れもしなかった。せめてその髭と髪だけは整えてご令嬢を迎え入れて欲しいと屋敷に残る使用人達に何度も念入りに頼んできた。この数日でどうにかできていればいいがと別の心配も出てきた。
「レスタ様、どうされましたか?顔色が悪いです。体調が・・・」
「あっ、いえっ、大丈夫です!」
「そうですか?」
思いっきり顔に出てしまっていたらしい。本来ならば、知らない土地に嫁いでくる年若いご令嬢を気遣うのが自分の役割だというのに、逆に気遣いを受けている。申し訳なさと同時に、レスタの中でスティファニアの株がどんどん上がっていった。
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