夢から覚めるなら殺して〜虐待を受けてきた白狼、天才科学者はなんとか助け出すが、歪んだ性知識と無知な性知識、いつになったら幸せになれるの？

31.番う軌跡

939.お試し (sideバスター)

「あの…すいません、俺は黙ってて、騙そうとかそんな意図は全く無かったんです。ただ…話しにくいし、俺から話す内容でもないし…でもバスターさんが知らないのを良いことに黙ってたのは本当で…」


シバが家に着くなりもにょもにょっと謝罪と言い訳を始めている。まぁ…確かに驚きはしたが、シバから言い出しにくいのもわかる。
私でもきっと内緒にしてたし、できれば知られたくなかったことだろう！でも…


「なんだ？シバは私が他の雄をお試し・・・しにいってもいいのか？人狼の雌は番う前は二股三股当たり前で、より多くの雄をお試し・・・するのが良しとお姉様方から習ったが、本当なのか？…シバも私にそうして欲しいのか？」

「あの…お試し・・・は雌の権利みたいな物で、番が成立したら雌は雄から離れられません、雄はずっと雌を求めるし独占したがります。雌は雄が離れると酷く不安定になります。だからより相性の良い雄を探すためにできるだけ多くの雄と付き合うんです。
でも、わかってはいるけど、ゔゔぅぅ…心の狭い雄だって思いますか？俺はもうバスターさんが他の雄に触られるのも耐えられない！」


普段から浮気は許せません！っと豪語しているシバがお試し・・・なんて許すとは思っていなかった。
それに今更、浮気を許されたりしたら、反対に愛されていないと不安になってしまいそうだ。
なのに私の可愛いワンコは怒られると思っているのか、耳も尻尾も垂れ下がって不安そうな目で見つめてくる。そんな可愛らしいシバを怒る気はなんてなれるはずもない
ただ、講習会でもう一つ習ったことで試してみたいことがある。


「ふふっ…そんなことは思わないよ、私だってお試し・・・なんてしたいとは思わないし、シバだけいてくれたら幸せだがら…
あぁ、そんなことより今日はちょっと気疲れしてしまったから、甘いものが食べたい気分だ、何かあったかな？」

「えっ！そんなことなの？嘘っ、その程度のことなの？……あっ、甘いものがですか？ちょっと待ってくださいね、そうですよね疲れてますよね！うわ、こんなところで話てた！あの、着替えてソファに座って待っててくださいね！」


バタバタと玄関から台所へダッシュするように向かうシバを見送りながら自室に向かった。
部屋着に着替えてソファに座れば、すぐに私のお気に入りのハーブティーが出てきて、でもシバは台所に引っ込んでしまって何やらガチャガチャと作ってくれているようだ
普段はシバは辛党で甘い物は得意ではないし、私もそう好きではないので、たぶん家には甘い物はストックされていなかったのだろう

講習会では、雄の加護欲と承認欲求を満たすためにちょっとした我儘を言いましょう！っと習ったのだ
『甘えて欲しい』、『頼って欲しい』
とシバに言われたことはあったが、それは人狼の雄としての本能に近いらしい、雌を守ら慈しむことが雄の本能だとシバも言っていたのに、私はしっかりと理解していなかったのだ
そんなことも知らずに普段の私ではシバは雄としては物足りなかったのかもしれない


「はい、どうぞ！家にあるもので作ったんだけど、蒸しケーキです。おいしくできてるといいけど…」


ほんの数十分でできたとは思えないほど蒸しケーキにはイチゴやブルーベリーのコンポートまで添えられていて、私好みの可愛らしい見た目で大変に美味しそうだ


「ありがとう、すごく綺麗だな…コンポートなんていつ作ったんだ？すごいな…」

「レンジで時短で作れます。蒸しケーキも紙コップでレンジで作りました！今度から講習会の後は何か用意しておきますね！」


本当はお姉様方から甘い物はたくさん貰っていて、特に食べたいとは思っていなかったが、添えられた可愛らしいフォークで蒸しケーキとコンポートを一緒に食べれば、それはすごく優しい味で、シバはそんな私の様子をずっと見続けている。


「うん、すごく美味しいよ、ベリーの酸味が疲れを癒やしてくれそうだし、ふわふわの優しい甘さの蒸しケーキとの相性が抜群だな！
ありがとう、シバ！すごく美味しい」


私の言葉にぱぁっと花が開いたように笑顔になって、尻尾も思いっきり振り回す音がする。
幸せそうなシバを見ながら、やはり講習会の内容は正しかったのだな、ためになる！っと心に留めながら、おかわりを注いでくれたハーブティーを飲んでいった。