4 / 51
第一話「月の光と胸の痛み」
004.モフモフこそ最強説(2)
しおりを挟む
冒険者ギルドとは危険がともなう依頼を預かり、その仕事を冒険者にあっせんする組織だ。仕事の内容はさまざまだけれども、大体がレア素材やアイテムの収集か、人間を脅かす魔物の退治になる。
私たちのいるマーヤは四方に開発中の森や林が多く、そこには肉食の魔物が頻繁に現れ、貴族や村々からの依頼がひきも切らない。そんな理由で手っ取り早く稼ぎたい冒険者たちがやって来る街でもある。
マーヤの冒険者ギルドの施設は中心街に立っていて、建物は隣国の王都で見たお城のように立派だった。薄い茶の石づくりになっていて、五階はあるんじゃないだろうか。アーチ形の広々とした入り口は、どっと人が押し寄せても平気だろう。
『すごいねえ、クルト。お金持ちの街なのね』
「この国ではすべての街がこうらしいぞ。現国王が非常に有能なのだと聞いている。まだ御年二十四なのだそうだ。名君に年齢はまったく関係ないな」
クルトはほんの少し複雑そうな口調になった。うん?どうしたんだろうか? クルトは「行くぞ」と呟き施設の入り口をくぐった。「魔術師の方はこちらへ」と書かれた窓口へと向かう。
私たちのように他国からやってきた冒険者は、まずその国のギルドで登録をしなおさなければならない。それから身分証明書でもあるギルドカードをもらい、ようやく仕事を受けることができるのだ。
隣の戦士の窓口には冒険者がずらりと並び、受付のお姉さんがパニックになっていた。いっぽう魔術師の窓口は運がいいことにガラガラだ。私たちはすぐにギルドカードを作ることができた。
クルトは木のカウンターに愛用の杖を立て掛けると、お姉さんに「ではさっそく」と声を掛ける。
「ソロで三〇ゴールドを稼げる仕事はあるか? 素材採集でも、ダンジョンでも、魔物退治でもいい」
お姉さんは難しい顔になり、「そうですねー」と首を捻った。
「この辺りではソロ可の三〇ゴールド以上の依頼はほとんどがAランクの冒険者からなのです。B以下の方はどうしても三人以上のパーティが条件になることが多いんです」
「そうか……」
クルトはカウンターに置かれたギルドカードを見下ろした。そこにはざっとクルトの身分や立ち位置が説明されている。
名前: クルト・フォン・ハンス(十九歳)
冒険者ランク: B
誕生日: 黒竜の月の第二週
出身地: ルシタニア王国首都
資格: 魔術師(攻撃/補助/回復)
取得地: ガラティア王国シレジア市
特記事項: 依頼により剣の使用も可能。
剣は戦士でのランクC
そう、「カードにある」クルトの冒険者としてのランクはBだった。
私たちのいるマーヤは四方に開発中の森や林が多く、そこには肉食の魔物が頻繁に現れ、貴族や村々からの依頼がひきも切らない。そんな理由で手っ取り早く稼ぎたい冒険者たちがやって来る街でもある。
マーヤの冒険者ギルドの施設は中心街に立っていて、建物は隣国の王都で見たお城のように立派だった。薄い茶の石づくりになっていて、五階はあるんじゃないだろうか。アーチ形の広々とした入り口は、どっと人が押し寄せても平気だろう。
『すごいねえ、クルト。お金持ちの街なのね』
「この国ではすべての街がこうらしいぞ。現国王が非常に有能なのだと聞いている。まだ御年二十四なのだそうだ。名君に年齢はまったく関係ないな」
クルトはほんの少し複雑そうな口調になった。うん?どうしたんだろうか? クルトは「行くぞ」と呟き施設の入り口をくぐった。「魔術師の方はこちらへ」と書かれた窓口へと向かう。
私たちのように他国からやってきた冒険者は、まずその国のギルドで登録をしなおさなければならない。それから身分証明書でもあるギルドカードをもらい、ようやく仕事を受けることができるのだ。
隣の戦士の窓口には冒険者がずらりと並び、受付のお姉さんがパニックになっていた。いっぽう魔術師の窓口は運がいいことにガラガラだ。私たちはすぐにギルドカードを作ることができた。
クルトは木のカウンターに愛用の杖を立て掛けると、お姉さんに「ではさっそく」と声を掛ける。
「ソロで三〇ゴールドを稼げる仕事はあるか? 素材採集でも、ダンジョンでも、魔物退治でもいい」
お姉さんは難しい顔になり、「そうですねー」と首を捻った。
「この辺りではソロ可の三〇ゴールド以上の依頼はほとんどがAランクの冒険者からなのです。B以下の方はどうしても三人以上のパーティが条件になることが多いんです」
「そうか……」
クルトはカウンターに置かれたギルドカードを見下ろした。そこにはざっとクルトの身分や立ち位置が説明されている。
名前: クルト・フォン・ハンス(十九歳)
冒険者ランク: B
誕生日: 黒竜の月の第二週
出身地: ルシタニア王国首都
資格: 魔術師(攻撃/補助/回復)
取得地: ガラティア王国シレジア市
特記事項: 依頼により剣の使用も可能。
剣は戦士でのランクC
そう、「カードにある」クルトの冒険者としてのランクはBだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,459
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる