魔術師は黒猫がお好き-転生使い魔の異世界日記-

東 万里央(あずま まりお)

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第一話「月の光と胸の痛み」

022.クマ男は語る(1)

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「別の街でギルドに登録して、ランクEから出発したあの日は、今でもはっきりと覚えている。世界が輝いて見えたよ。後ろを振り返る気もなく、前に見える道だけを見ていた。親が心配しているとか、考えるだけでも面倒だった。ほんと何様だって感じだよなあ」

 クマ男は身体が大きくて力も強くて、弱い魔物ならすぐに倒せたんだそうだ。ランクも一年ちょっとでEからDに上がった。クルトはクマ男の話を頷きながら聞いて、「戦士の冒険者なら早いほうだな」とぽつりと呟いた。クマ男は苦笑いをしながら肩をすくめる。

「まぁ、俺はそれでいい気になってちまったんだ。人間、自分の成果だけは他人より大きく見積もっちまうもんだ」

 クマ男はこの調子ならAも近いと自信まんまんになった。けれども、ランクBまで行ったところで、しょうかくが止まってしまったんだそうだ。Aランクの試験だけには十九さいになっても、二十さいになっても、二十一さいになっても受からなかった。三ヶ月か半年に一度は受けていたから、十回はじゅけんしたんだそうだ。

 私はいつか聞いた話を思い出す。BからAへのランクアップがいちばんむつかしい。クルトはわざと厚くて高い壁にしてあるんだと言っていた。そうしないとA級の冒険者が何人も生まれて、Sから上のランクの価値が落ちてしまうからなんだって。

「俺もわかっていたつもりだったんだけどな。十回も落ちるとすっかり自信をなくしちまって、けど、今更引き返すこともできなくて、ずるずると時間だけが過ぎて行った」

 そんな冒険者は戦士にも、魔術師にも、魔物使いにもいて、だんだんお酒やかけ事におぼれてしまうんだそうだ。

「俺も例にもれず酒にはまっちまってよ。そこから先はあっという間に転がり落ちて行った。けれどもそんなダメ冒険者の俺に、ひとつの出会いがあった。あれは南国の砂漠近くの街だったかなあ。酒場の帰りに道端でガキを拾ったんだ」
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