魔術師は黒猫がお好き-転生使い魔の異世界日記-

東 万里央(あずま まりお)

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第一話「月の光と胸の痛み」

023.クマ男は語る(2)

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 男の子は黒い髪に黒い目の、うすい顔立ちをしていたんだそうだ。名前はカイトと言って、変わった服を着ていた。酒場の裏に転がっていたんだって。

「親に捨てて行かれたのかなんなのか、ここがどこかわからないみたいだった。まあ、放っておいても後味が悪いから、俺のいた宿屋にまで連れ帰って、飯を食わしておいた」

 クマ男はそれからもなんとなくカイトを置いておいたんだけど、カイトはある日「ただ飯食らいは嫌だ」って訴えて来たんそうた。どうにか生きるすべを身につけて、クマ男に今までの恩返しをしたいと頭を下げたんだって。

 カイトの気持ちはよくわかる。私もクルトのためならなんでもしたいもの。

 クマ男は目を輝かせて聞き耳を立てる私に笑った。

「けど、捨て子ができることなんてタカが知れている。低賃金の下働きに雇われるか、冒険者になるかくらいだ。ったら、カイトは迷わずに冒険者になると答えやがった」

 カイトは剣の使い手になりたいと望んで、クマ男に教えてほしいと頭を下げた。ヒマを持てあましていたクマ男は、いいよと二つ返事で引き受けたんだそうだ。 

「これが……なかなか筋がよかった」

 クマ男はテーブルに腕を置くと、頬杖をついて目を天井に向けた。

「カイトは一度教えるだけですんなり飲み込むガキだった。そうなると教えるこっちも楽しくてなってな。あのころは不思議と充実していた」

 それから三ヶ月が過ぎたころだった。カイトが「ギルドの試験を受けて、カードをもらってくる」と言い出したんだって。クマ男はとうぜんまだ早いと止めたんだそうだ。

 カイトはそれまで剣を持ったことも、魔物と戦ったこともなかった。とても平和なところに住んでいて、勉強ばかりしていたんだそうだ。なのに、カイトは「早く受けて早く欲しい」と聞かなかった。

 結局クマ男は自分の実力を思い知らせるために、冒険者ギルドの試験場へ連れていった。どうせ泣きっ面で帰って来るだろうって思ってたんだそうだ。けれども、カイトは夕方になって嬉しそうな顔で門から出てきた。

「こりゃまぐれでEに受かったかと思ったら、カイは"師匠、カード貰えました! 俺はB級だそうです"って言いやがった。"B級ってどれくらいのレベルですか?"ってな」

 そこまでの話を聞いて、クルトがはっきりと息をのんだ。

「まったくの初心者が三ヶ月でB級だと?」

「ああ、そうだ」

 私がにゃにがすごいのと首をかしげていると、クルトがていねいに説明してくれた。

 最初の試験でランクの飛び級自体は珍しくはない。ただそれをやってのけるのは、親も戦士で小さなころから訓練を受けていたか、もと騎士だったかって人たちなんだそうだ。

 けど、カイはその三ヶ月前までは、剣の握り方すら知らなかった。ふつうなら何年もかかるクラスを、そんな子があっという間に手に入れてしまった。

「そう、天才ってやつだな」

 クマ男はため息を吐いた。

「よりによってその天才が、俺の目の前に現れたんだよ」
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