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第一話「月の光と胸の痛み」
024.クマ男は語る(3)
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自分が伸びずに悩んで時に、カイトがそばにいるのは辛かった。なのに、カイトはやっぱりクマ男が大好きで、離れようとしなかったんだって。クマ男も冷たく突き放すなんてできなくて、「師匠のクエストの補助をしたい」というカイトと、次の月から一緒に仕事をやるようになった。
カイトはやっぱり天才だった。クマ男はこんなところに感心したらしい。
「カイトは相手の弱点を一瞬で見抜く目の持ち主で、戦い方にコツがいる魔物でも、次からは最小限のわざで倒しちまう。きっとひょろい自分の体格をカバーするためだったんだな」
クマ男はカイトがこの調子で進んでいけば、すぐにAランクになるだろうと思った。どうしてこの才能の持ち主が自分じゃなかったのかと、カイトが何も知らずに自分を慕うほど、どす黒いちりが心に積もって行った……。
クマ男はカイが寝た後には酒場へ行って、また一人でお酒を飲むようになった。みじめさも妬ましさも全部お酒で飲み込もうとした。そんな生活が続いて何ヶ月かたったころのことだった。
クマ男その日は朝まで飲んだくれて、まだ日も昇り切らない中を帰った。そして、宿屋の前まで来てはっとなった。カイトが人気のない道端で練習をしていたんだって。カイトは何度も、何度も素振りを繰り返し、ときどき向きを変えては動きやすい体勢を確かめているように見えた。
クマ男は思わず壁の影に隠れた。ところが、練習はいつまでたっても終わらない。終わったのは明るくなって店が開き始めてからだった。カイトはやっと剣をしまうと汗をぬぐって宿屋に戻った。
クマ男はその様子を語り終えると、「参った」とぽつりと呟いた。
「あいつは自分の素質に甘えず、一日も欠かさずそうして練習をしていたんだな。なのに、師匠だなんて呼ばれている俺はどうだ?」
やりきれなさをお酒でごまかして、その間にいったいどれだけのことが、どれだけの練習ができただろうと、苦しくなるくらい後悔したんだそうだ。
あのままじゅけんを続けていれば、十九回落ちても二十回目には受かったかもしれない。受からなくても取り戻せない時を悔やむことはなかったと思った。
「……初めて無駄にした時間の大切さが身に染みて実感できた」
クマ男はその日からカイトの目を見られなくなった。このままでは自分もカイトも憎んでしまいそうだった。カイトこそがなりたかった自分で、自分は一番なりたくなかったはずの、みじめな落ちこぼれだったからだ。心がバラバラになってしまいそうだった。
「だから俺は――あいつからも自分から逃げたんだよ」
カイトが試験を一日で四つこなし一気にBにまで昇格したことは、ギルドでもちょっとした話題になっていたらしい。クマ男は噂を聞き付けギルドにまで足を運んだ。
クマ男が保護者になって世話をしていることは、カイトも試験でちゃんと言っていたみたいだった。すぐにその時の試験官のひとり――ランクSのお爺さんが、待合室にまで出てきた。何の用かと首を傾げて尋ねられ、クマ男はこう申し出た。
「俺に代わってカイの後見人になり、面倒を見てやってくれないだろうか。あんただったらあいつをうまく育てられるだろう?」
その翌朝、クマ男はお金のほとんどと、ぐっすり眠るカイトを宿屋に置いて街を出た。
カイトはやっぱり天才だった。クマ男はこんなところに感心したらしい。
「カイトは相手の弱点を一瞬で見抜く目の持ち主で、戦い方にコツがいる魔物でも、次からは最小限のわざで倒しちまう。きっとひょろい自分の体格をカバーするためだったんだな」
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クマ男その日は朝まで飲んだくれて、まだ日も昇り切らない中を帰った。そして、宿屋の前まで来てはっとなった。カイトが人気のない道端で練習をしていたんだって。カイトは何度も、何度も素振りを繰り返し、ときどき向きを変えては動きやすい体勢を確かめているように見えた。
クマ男は思わず壁の影に隠れた。ところが、練習はいつまでたっても終わらない。終わったのは明るくなって店が開き始めてからだった。カイトはやっと剣をしまうと汗をぬぐって宿屋に戻った。
クマ男はその様子を語り終えると、「参った」とぽつりと呟いた。
「あいつは自分の素質に甘えず、一日も欠かさずそうして練習をしていたんだな。なのに、師匠だなんて呼ばれている俺はどうだ?」
やりきれなさをお酒でごまかして、その間にいったいどれだけのことが、どれだけの練習ができただろうと、苦しくなるくらい後悔したんだそうだ。
あのままじゅけんを続けていれば、十九回落ちても二十回目には受かったかもしれない。受からなくても取り戻せない時を悔やむことはなかったと思った。
「……初めて無駄にした時間の大切さが身に染みて実感できた」
クマ男はその日からカイトの目を見られなくなった。このままでは自分もカイトも憎んでしまいそうだった。カイトこそがなりたかった自分で、自分は一番なりたくなかったはずの、みじめな落ちこぼれだったからだ。心がバラバラになってしまいそうだった。
「だから俺は――あいつからも自分から逃げたんだよ」
カイトが試験を一日で四つこなし一気にBにまで昇格したことは、ギルドでもちょっとした話題になっていたらしい。クマ男は噂を聞き付けギルドにまで足を運んだ。
クマ男が保護者になって世話をしていることは、カイトも試験でちゃんと言っていたみたいだった。すぐにその時の試験官のひとり――ランクSのお爺さんが、待合室にまで出てきた。何の用かと首を傾げて尋ねられ、クマ男はこう申し出た。
「俺に代わってカイの後見人になり、面倒を見てやってくれないだろうか。あんただったらあいつをうまく育てられるだろう?」
その翌朝、クマ男はお金のほとんどと、ぐっすり眠るカイトを宿屋に置いて街を出た。
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