魔術師は黒猫がお好き-転生使い魔の異世界日記-

東 万里央(あずま まりお)

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第二話「空と海と嘘とキス」

045.海賊ヴォルフガング(2)

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 心が落ち着いて目が闇に慣れ、あたりがくっきり見える。ここは海賊船のせんそうみたいだ。そんなに広くはないけれども、いろんなものが置かれている。

 私が入れられていた箱は、右側の片隅に積みあげられている。これはガラス細工だって海賊が言っていた。その隣にはふち取りのされた木の箱があって、中から金貨があふれ出している。

 あっ、これは一番高いお金のはずだにゃ。いったい何ゴールドあるんだろう? 

 さらに隣にはやっぱり同じ箱があって、ミルク色に輝く球の首飾りや、赤や青の石のついた指輪や腕輪が入っていた。箱のほかには霊薬になると言われている、ユニコーンの角なんかも何本もある。

 どれも見つめていると目がちかちかするにゃ! それに食べられるものもないみたい。

 食べられるものと考えたとたんに、私のお腹がくぅと小さな音を立てた。

 ああ、やっぱりお腹が空いた。今はヴェンディスに戻るよりも、まずは腹ごしらえをしなくちゃ。

 私はぬき足、さし足、しのび足で、せんそうの扉の前へと近づいた。そっと鼻先で扉を押してみる。カギがかけられているかもしれない――けれどもそんな私の不安は扉が開いたことで、すぐに跳ねあがるほどの喜びに変わった。

 今度は閉じ込められたんじゃないみたい!

 外に一歩足をふみ出すと、つんと潮の香りがした。それから寄せては引く波の音。揺れはそんなに感じないから、どこかに停まっているんだろうか。

 廊下はすすけた木の板でできていて、足あとはあっても人はどこにもいなかった。けれども目を閉じて耳を澄ませてみると、遠くからたくさんの笑い声が聞こえる。

 どこかでえんかいをしているのかにゃ? おいしそうなにおいも漂ってくる。これは鶏肉の丸焼きに違いないにゃ!

 私がにおいにつられて廊下を進んで、角を曲がろうとした時のことだった。向こう側からやって来た海賊と、ぶつかりそうになったんだ。

 私はびっくりしてみゃっと毛を逆立てた。

 だ、誰にゃ!? 海賊でも容赦しにゃいにゃよ!! このツメのエジキにしてやるにゃあ!! フーッ!!
 
 それはクルトと同じくらいの年の、とても背の高い男の人だった。白いシャツに真っ黒な上着をはおって、やっぱり黒いズボンをはいている。

 はだけた胸もとには革ひものチョーカーと、金の大きな輪の鎖をつけていた。耳にも金の輪のピアスがいくつもある。腰の太い革ベルトにはサーベルがさされていた。

 短い髪はいぶしたような銀で、目は金の混じった明るい緑だ。肌は陽に焼けていてあさぐろい。胸もお腹も引きしまってたくましかった。

 けれども何よりも目を引いたのは、右目を斜めに切りさいたような傷だった。ううん、よく見ると顔だけじゃなくて、胸にも腕にも傷あとがある!

 こ、怖いにゃ。なんだかよくわからないけど怖いにゃ!
 
 私がその場にかちんと固まっていると、男の人は「ああ?」と頭を掻いた。その場にしゃがみ込んで私をしげしげと眺める。

「なんでまた船に猫がいるんだ?」
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