猫に転生(う)まれて愛でられたいっ!~宮廷魔術師はメイドの下僕~ 

東 万里央(あずま まりお)

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本編

猫族にオスがいた!?(4)

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 生まれたままの姿なんて、十二歳を過ぎてからは、弟と妹にしか見せてないのに! よく一緒に近所の銭湯に行っていたから! いくらイケメンだったとしても、見ず知らずの男になんて嫌にゃー!

 慌てて胸を隠そうとしたところでハッとする。

 私の胸ってDカップくらいだと思っていたけど、なんだかFにサイズアップしていない? そ、それだけじゃなくて、二の腕も、お腹も、お尻も前よりむっちりずっしりしているような……。

 カイは私の体をじろじろと眺め、うんうんと腕を組んで頷いた。

「俺はそれくらい肉付きのいい女が好きだ。最近はカレリアもリンナも妙なダイエットブームで、痩せた女ばかりでつまらないからな」

 うわーん、やっぱり太っていた!!

 よく考えなくても当たり前だ。あのお屋敷で二週間食っちゃ寝生活。アトス様に毎日遊んでもらっていたから、運動をしなかったわけではないけれども、それ以上に食べていたから……! だって後ろ足で立ち上がって前足を合わせて、「ちょうだいちょうだい」をすると、執事もメイドも皆ハァハァしながらおやつをくれたから……!!

「ダイエット! 今すぐダイエットしなくちゃ!」

 ムンクになる私に呆れたのか、カイは指先で頭を掻いている。

「だから必要ないって。いや……ダイエットならここですればいいだろ」

 言うが早いか私の腰に手を回してニヤリと笑った。

「え、あの、いや」

「俺はお前を抱けてラッキー。お前は俺との交尾で運動できて痩せる。な、お互い損はないだろ?」

 そうだね。確かにウィンウィンだね……って、ちっともウィンウィンじゃない! 第一交尾って言い方が生々しすぎる!

「お代官様、堪忍してにゃー! ひらに、ひらにご容赦をー!」

 私は悲鳴とともに倉庫の地面に押し倒された。

「いいじゃねえか、いいじゃねえか、減るもんじゃなし。それにね、俺一刻も早くガキ作んなきゃならなくて」

「そ、そんなご無体な!」

「まあ、大事にするからさ。それに、俺これでもリンナじゃ貴族なんだ。食うには困らせないから、バンバン俺の子を孕め。最低十人は欲しいな。猫族は双子もよくあるから楽勝だろ」

「あ~れ~!」

 まさかこんなところでお代官様と町娘プレイ……ではなく、貞操の危機に陥るとは! 

 叫ぼうとした唇を塞がれ目を見開く。

「んぐぐーっ!?」

 これって……キスよね。キスでしょ!? 喪女でもそれくらいは知っている。ということはファーストキス!? 
 
 怖くて目をかたく閉じると、脳裏にアトス様の笑顔が浮かぶ。

 嫌だ。私に触れるのも、キスをするのも、あの人じゃなきゃ嫌!

 私はかっと目を見開きカイの唇を噛んだ。嫌な音がして口の中に血の味が広がる。

「痛っ……」

 カイが顔をしかめて私から離れた。薄い唇から一筋の血が流れている。

「へえ……面白い。俺、気の強い女も好きだぜ」

 私は必死にカイの下から這い出そうとしたけれども、すぐに背から伸し掛かられてお尻の間を触られた!

「ひゃんっ」

 体がびくんと魚のように跳ねる。

 そこは昔から弱いところなのに……! ちょっと何かが触れただけでも、どういうわけかむず痒いような、気持ちいいようなおかしな気分になるのだ。

 おまけに、なんと耳と尻尾がポンと音を立てて飛び出てしまった。

 ええっ、一体どういうことなの!?

 すると、カイが私の首筋に熱い息を吐きかける。

「ふうん、あんた、興奮すると半獣化するのか。……純血種と変わりがないじゃないか」

 その言葉に驚いてカイを振り返ると、なんとカイの頭にも猫耳が……!!

 イケメンに猫耳って格好いいとか可愛いとかよりも、色んな意味でインパクトがでかすぎて、私は「うわあ……」と思いっきりドン引きしてしまった。

 カイは私の態度が気に入らなかったのか、ムッとした顔で私の顎を掴む。

「おい、なんだよ、その顔」

 ああっ! 肝心な時にこうやって本音を出すから、私って二世に渡って出世できないのよ!

「俺は、気の強い女も生意気な女も好きだけど、馬鹿にされるのは嫌いなんだよ。……するのはいいけどな」

 カイは猛獣モードに切り替わったのか、一瞬にして猫から獅子の眼差しになると、私の首筋をがぶりと噛んだ。しかも、血が出るほど強くだ。

「痛っ……!」

 なんでそんなところを噛む必要が!? 私そんな趣味はございませんアルよ!

「気持ちよくしてやるつもりだったけど、止めた。ひいひい泣かせて這いつくばらせてやるよ」

 それって大した違いがないのでは……?と思う間もなく手を回して胸を掴まれた。おまけにやわやわと揉み込まれて、「やんっ!」と悲鳴を上げる。

「おっ、やっぱ結構でかいな。これなら何人産んでも大丈夫だろ」

「ぎにゃー!! えっち! ちかん! やかん! どかん! みかん! いよかん! ぽんかん! あんぽんたんのばかー!!」

 全力でじたばた暴れているうちに、爪がカイの頬を引っ掻いたらしい。

「……っ! おい、お前約束しただろ!? 猫族二言はないんじゃなかったのか!?」

「ちゃんと多分って言ったもん! 契約書は最後までよく読みましょうー!」

 私は大きく息を吸い込み、ぐっと手足に力を込めた。人間に戻る方法が分かった今、猫に変身する方法もわかる。魔力を魂の核にためるイメージで、大きく息を吸い込めばいいのだ。

 みるみる体が小さくなって私は四つ足の獣になる。

「お前……!!」

 私はカイの体の下からウナギのように抜け出して、出口に向かって全速力で駆け出した。
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