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第一幕 断罪からの始まり

vs14 午後、二度目の告白

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エレナは小さく頷いて、マリミエドの涙を拭く。
「卒業パーティーで、〝断罪〟されるのですね?」
「ええ……マリアさんが、8人と、王太子様を味方に付けて…あの小説のように。ほら、あの…」
「はい、知っております。私も愛読してますので…〝眠れる姫は溺愛される〟…10人の殿方にいかに溺愛されるかを描く小説ですね」
「ええ…さすがに名前や家柄は違うけれど、あの小説にそっくりで…」
「確かに似ていますね…」
言いながら、エレナは一人足りないと気付く。
〈ギルベルトお坊っちゃまだわ!〉
多分、いや間違いない。
この家の事も書いたのだろうが、ギルベルト自身がマリミエドにべた惚れな為にそうならなかったのだろう。
ギルベルトは、恐らく血さえ繋がっていなければ嫁にしているだろう、という位にマリミエドを好いている。
…キモくて引くくらいの勢いで。
しかし、だからこそ絶対にマリミエドを悲しませる事はしない。
エレナはマリミエドの手を握って言う。
「この事を、小侯爵様にも打ち明けましょう」
「お兄様に? 信じて下さらないわ」
「大丈夫です。共にどうすればいいか、考えてもらいましょう?」
そう自信満々に言うエレナに押されて、午後のティータイムに兄を誘う事にした。


午後の目映い陽射しを受けた木の葉が揺らめく中で、マリミエドはギルベルトに告白した。
「ーーーわたくしは、何故か一年前に戻ってきますの。…信じられませんよね、このような寓話のようなお話…」
マリミエドはそう言い止まる。
ギルベルトがワナワナと震えているからだ。
「お兄様…?」
「リュミ…お前は、2回も同じ目に遭わされたのか…?」
「え? あ、はい…何故か2回共、断罪されてから処刑を…あ! そういえば、一回目はマリアさんの周りの殿方は殿下だけでしたわ!」
「どーでもいい!」
ダン、とギルベルトはテーブルを叩く。
「バカ殿だけだろうが9人いようが10人いようがそんな事はどうでもいい! 問題はそこではなく、お前が牢などに入れられた挙げ句にその美しい髪を切られ、やってもいない罪で斬首された事だ‼」
「お兄様…信じて下さるのですか?」
マリミエドは驚いて両手で口元を覆う。
「当たり前だ。お前が嘘をついた事など一度もあるまい」
その言葉を聞き、マリミエドは溢れ出る涙を堪えきれずハンカチで目元を覆う。
「お嬢様」
「リュミ、安心しなさい。必ずお前を守るから」
そう言いギルベルトはマリミエドの肩を抱いて慰める。
「お兄様…!」
マリミエドは生まれて初めて、嗚咽を漏らして泣いた。
信じてくれた事、そして兄がこんなにも頼もしい存在だと分かった事が嬉しかったのだ。
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