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第一幕 断罪からの始まり

vs13 告白

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 こんな話、誰も信じない…。
しかし、誰かに話したい。
マリミエドは子供の頃からメイドとして側に居るエレナなら、信じてくれるかもしれないと思った。


エレナがメイドとしてメイナード侯爵家に来たのは、ちょうど王太子妃候補に選ばれた5歳の時だ。
皇后陛下が孤児院から引き取ってきた、子爵家の婚外子だと聞いた。
年は2歳上で金髪、深緑色の瞳が美しい女の子だと思ったのを覚えている。
皇后陛下の推薦でメイドとして来たからか、所作は誰よりも美しい。
マリミエドからすれば、エレナこそが王太子妃に相応しいと思える程に。
マリミエドは姉が出来たようで嬉しくて、すぐに仲良くなった。
実の姉は5歳年上で、隣国の王子妃としての教育で忙しく中々会えないのだ。
エレナは、王太子妃教育を共にして支えてくれて、時に甘えさせてくれた…。

そんなエレナだからこそ、嘘をつきたくはなかった。
マリミエドは思い切って打ち明ける事にした。
「わたくし、卒業パーティーで婚約破棄をされて処刑されるのよ」
何も考えずに話し始めてしまう。
「はい?」
「嘘じゃないわ! これが3回目なんだもの! 冷たくて怖い石牢も覚えているの。く、首を刎ねられたあの恐ろしい感触だってーーー!」
泣きながら一気に喋ると、エレナが蒼白しながらもマリミエドの両腕を掴み、顔を覗き込んで言う。
「お嬢様、私でも分かるようにお話し下さい。突然すぎて分かりません」
「あ…」
マリミエドはハッとして落ち着いて話をする。
覚えている限り、細かく、伝わるように。



話を聞いたエレナは、手を口元に添えながら言う。
「お嬢様は、2回も首を刎ねられたのですか?」
「ええ…もうあんな思いはしたくないの…。わたくしは、最悪でもまた斬首刑にされてもいいわ。でも、わたくしが死んだ後のお母様やお父様、妹達やお兄様はどうなるの⁈ なんだか知らない罪名が沢山付けられたのよ! そんな家族が出た家なら取り潰しになるわ! もしかしたら、皆も処刑ーーーっ」
言葉を詰まらせて泣いてしまう。
「お嬢様、大丈夫です。今は皆様生きていますわ」
エレナはそう慰めてマリミエドの肩を抱く。
涙を拭いて慰めながら、確かにマリミエドがそうなれば、自分達も只では済まないだろう、と思う。
〈でも…ご自身は死んでもいいだなんて…!〉
このお嬢様は、優し過ぎる。
自分なら、本当に回避する為にすぐに婚約解約をして違う爵位の者との婚約をしてもらうだろう。
それをしないのは、立場が解っているからだ。
 〝両陛下〟のお気に入り
 〝優秀な〟王太子妃候補
 〝家の安泰〟を背負う自分
重たい、とてもとても重たい責任を、この小さな肩に背負わされて、良しとしている。
凛としたマリミエドの姿に、これまで何度救われて、そして見惚れてきただろうかーーー。
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